第八話 愚かしくてもそれでいいと思った私
そんなことがあったのだ。ちなみに、姉はそれからその年に留年し、本来一緒の学校に通う筈のない私と共に学校へ通った。
姉はやたら嬉しそうに私と一緒に登校した。私はそれに付き合わされた。姉はしょっちゅう途中でいなくなり、チコクの山を築いていたが、私はそんな姉とは違う、と、心に言い聞かせ、チコクはしなかった。
姉が毎朝私を起こしてくれていたから。
そして、姉はギリギリ計算したようにギリギリの出席日数で卒業し、そして、海外へふらりと行って、向こうに住み着いてしまった。
元から奔放なのだから、まあそんなものだろうと、私は思った。まあ、なんか、心に隙間が空いたような気がしたが気のせいだと思いたい。
それから張り合いのなくなった私は、元の私に戻った。チコク魔な私に。
今でも分からない。なぜ姉は留年したのか。姉は私に告げた通り、ちゃんと卒業するだけの出席管理能力があることを示したのだから。
そんな賢い姉が何故、愚かにも留年を選んだのか。
私は姉ではない。だから、姉の考えを知ろうなんて、無理なのだ。それに姉と私は、違う、のだから。
いつまでも引き摺るのはやめよう。そうだ、姉に手紙でも送ってみることにしよう。でも、住所どこだっけ? お母さんたちが病院に来たら聞いてみたらいいか。
姉の回想を終えて、頭の中で考え事トリップして、私は元の場所へ戻ってきた。そして、いつものように待ってくれているBちゃんを見て、心が安らいだ。
これこそが、私の持っているもの。私だけのもの。姉にはないもの。
姉がいなくなって、私は自信と自身を取り戻した。安心してチコク魔に戻れたし、比べられることもなくなった。私自身が姉と自身を比べることも、もうすっかりなくなっていたのに、思い出してしまった……。
私はチコク魔。
でも姉とは違う。
姉とは違ってどうしようもないものなのだ。
睡眠は人の本能。
サボってチコクしてるわけじゃない。
好きでチコクしてるんじゃない。
不真面目だからチコクしているのじゃあ、決してないんだ。
チコクしない能力がない。
それが私なのだから。
そう割り切って、私は姉関係のもやもやを払い、Bちゃんを見た。Bちゃんは、戻ってきた私を見て、かわいらしく、しおらしく微笑むのだった。
ありがとう、私の自慢の、姉にはない、私だけの、親友。