番外編 BがほぼいつもAと共にいる理由 後編
そのときの笑顔がBの頭に焼き付いている。今でも鮮明に思い出せるほど。
後日、Bは尋ねた。彼女もとい、Aに。
「どうして自分をわざわざ助けてくれたの……。」
すると彼女は丁寧に答えてくれた。
「ただむしゃくしゃしてやっただけで、Bを助けるとか別にそんなつもりは本当になかったって。だからそんな感謝とかしなくてもいいよ。私がただそうしたいと思ったから、あれ見て不快に思ってやっただけ。」
「え、でもあんなところまで来てくれるなんて、助けようと思わなかったらムリだよね……。」
ちょっと怖かったが、Bは聞かないわけにはいなかなった。彼女にそれを認めてもらい、ちゃんとお礼を言いたかったのだから。
すると彼女はめんどくさそうに答えた。
「気に入らないものは叩き潰す。潰せるなら。ただそれだけ。」
そして、Aはそのまま立ち去っていった。
嘘を言っていないことはBにもすぐ分かった。
Aはチコクの常連として有名だった。そして、その後の教師への言い訳が物凄く下手なことも。だから、嘘をついたらすぐ分かってしまうのだ。
ちょっと荒れててがさつ。で、怖い。それがこの出来事より前のBがAへ抱くイメージだった。
だが、それは間違っていたのだ。
Aは自分の考えに殉じ、行動できる。それがとても眩しかったのだ。あの場から助けてくれたことなんかよりもはるかにずっと。
そして、自身も彼女を見て、変わりたい、と。
恩返ししたい、と。
それから、BはAの傍にいつもいるようになった。Aがとっても素敵に見えたのだから。あの笑顔を忘れられないのだから。
そして、癒されたのはBだけではなかった。BによってA自身も癒されることとなったのだ。
姉と比べられ、悪いところはいっしょと言われ、やさぐれていた彼女。しかし、自身を認めて、慕ってくれる友達ができたことで、彼女の心は少しずつその傷を癒していった。
そして、高校生になる頃にはすっかり落ち着いていたのだ。姉の一件で再度荒れるが、Bのおかげで、それも比較的マシだった。
ちょっと荒れただけで、中学の頃みたいに暴れることはなかったのだ。そして、姉が海外へ行ったことで、すっかり傷は治り、多くの人がBに寄って来るようになっていた。
そして、A自身も、天然無垢から少し成長し、それなりに他ともうまくやっていけるようになっていたのだ。
そして、今日も明日も明後日も、BはAの傍にいるのである。




