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何を踏んで私は転んだ? バナナの皮じゃあないけれど。  作者: 鯣 肴


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最終話 答え

 すごくあっけなかったが、答えは出た。


 まず、掲示板に張ってあった学年便りが何かの拍子に取れて、そのへんに落ちる。その上を私が走り抜け、まるでバナナの皮でも踏んだかのように、見事に後ろ向きに転んで気絶。


 でもって、あの音の正体は、紙がぐちゃっとなる音+廊下まで運ばれていた小石や砂が、靴や床や紙と擦れる音。それが混ざって、あの謎音が鳴ったのだ。


 ということで、推理終了。証拠もきっちり揃ってたし、そりゃ、あっさり解決するよね。


 そして、私はそれをBちゃんに説明し、お墨付きをもらった。





「あ~すっきりした。」


 私が背伸びする頃、辺りはすっかり夕方になっていた。そして、廊下の方から誰かが近づいてくる音がした。


 母だった。扉を開けた瞬間は、母は心配そうな顔をしていたが、いたって元気そうな私を見て、そんな心配は吹き飛んだらしい。


「ったくもう、あんたって子は。」


 一見厳しそうな言葉を投げかける、仕事から直帰した、スーツ姿のキャリアウーマンな母。けれども、その顔は穏やかだった。


「あ、おばさん。ご無沙汰しています。」


 Bちゃんがかわいらしく挨拶する。そして、母に私の経過を伝え、私に手を振ってそこから出ていった。一緒に帰りたかったのになあ。あ、でももしかして私まだ帰れないのかも。頭打ったわけだし。






「もう大丈夫みたいですね。帰宅します? もし何か異変があれば連絡してください。」


 医者からも帰っていいといわれた。なんか最後ちょっと怖いこと言ってるけど。まあ、お決まり文句だろう。気にしないことにした。


 そして、私は、夕焼けが沈んでいく病院から、退院していった。そして、その帰り道、母に、今日あったことを話した。


 母に自分から話をするのは久々だった。そういった意味では怪我した甲斐があったのかもしれない。


 いつも姉と私を比べてばかりで、私を見てくれていないような気がした母は、ちゃんと私の話を聞いてくれた。そっか、私が考えすぎてただけなんだ。


 心が軽くなった。


 そして、そんな帰り道の途中、ちょっと大きな文具店の前を通る。


 私は母に頼んだ。


「ねえ、お母さん?」


「何かしら?」


「お姉ちゃんにさ、手紙でも書こうと思うんだけど、レターセット買ってくれない?」


「あら、珍しいこと言うわね。あんたお姉ちゃんのこと毛嫌いしてたのに。」


「まあ、今でもあまり好きじゃないかもだけどね。でも、たまには、ね。」


 母はそんな私を見て、やれやれ、と私より先に文具店に入っていく。私はそこで立ち止まって考えた。


 そう。いろいろすっきりした。

 だから、ついで。


 ついで気分で勢いで。

 ついでに手紙書くだけなんだから。

 それにお姉ちゃんどうしてるのかなって、ちょっと気になったから。


「A、どうしたの? 早く来ないと私が決めちゃうわよ。」

「はーい、すぐ行く~!」


 私は小走りで店内へと駆けていく。


 それと同時に夕焼けが沈んだ。


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