転生…がしかし
トラックと衝突する際に子猫をかばうようにトラックに背を向ける。その体勢をとった直後に全身に衝撃が走る。
(っっ!!)
今までに味わったことのない痛みが全身を走り、あまりの痛みに呼吸ができなくなり意識が薄れていく。
(…あーもっと動物と触れ合いたかったなあ)
アドレナリンのおかげで痛みがマヒしている中でそんなのんきなことを考えながら瞼を閉じた。
寝起きのように瞼をあける…どうやらかなりリアルな夢をみていたようだ。そして今もその夢の続きのようだ。なぜなら…
「目を覚ますと知らない天井、ってのは小説でよく見るが知らないおっさんの場合はどうリアクションをとっていいやら」
瞼をひらくと30㎝ほどしか離れていない距離からおっさんがのぞき込んでいる。
ちなみにおっさんの特徴は
身長:2m
体格:筋骨隆々
見た目:白髪・白髭
まあこれを見たら他の人もなんとなく察するだろう。このおっさんは恐らく”神”なのだろうと。
続けて思考する、゛なぜ、ここに、自分は連れてこられたのかと゛
…こんな具堕落な自分なんかよりも他に優れた人など沢山いるだろうに。
そして、悟ったかのように
「なあ、なんで俺は死んだんだ?」
と問う。その後に゛神の手違いで…゛や゛死ぬべきでない存在だから゛など特別な理由なんだろうと仮定して。
しかし神(仮)から返ってきた答えは
「お主が死んだ理由か?それは猫を庇ってトラックに轢かれたからじゃ」
「なぜって子猫かばってトラックに轢かれて死んだんじゃ」
…まあ、そうだよな。
普通に考えて死ぬのになんでも糞もあるか。小説の読みすぎで頭までファンタジーになってしまったようだ。
「ああ、そうか。なら早く地獄にでも連れて行ってくれ、こちとら現世に未練などないからな」
そしてここは天国行きと地獄行きを判別するところと仮定してそう返答する。
自分は天国に行くような資格がないことぐらい自覚している。
「おや?自分から地獄行きを確信しとるとは珍しい小僧…じゃが、お主の行き先は地獄ではないぞ?ちなみに言うとくが天国でもないぞ」
…そもそもの仮定が間違っていたようだ。
だとするとここはどこなのだろうか、誤って神の場所に迷い込んだとでもいうのか。
「だとするとなんで俺はここにいるんだ?」
「それはお主が創造神だからだ。」
…とにかくだ、
1、俺は何かの手違いなのではなくただ死んだこと
2、本来は来ないこの場所に来ているのは創造神だからということ
「なあ俺が創造神ってのはわかった。俺が神なら異世界に転生するのは可能か?」
「無論、可能じゃよ」
一つ思いついたことがある、どうやら俺は創造神とやらのおかげでここにこれたらしい、自覚はないが。
そして、もしできるのなら人生をやり直してみたいと思う。
俺だって他人の役に立ちたいと思っていた時期もあるのだ。
しかし、物事はそう思うようには進まない。
結局俺はディーラーになり人をだまし、具堕落な人生を送っていたわけだ。
「それは無理じゃ」
現実はそうは甘くない。
しかし、次の神(仮)の言葉によって救われる。
「とはいっても今すぐに、の話じゃ。今は創造神の能力が覚醒していないから無理…というわけじゃ。あと5年もすれば能力も覚醒して異世界転生など問題ないじゃろ」