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三次元ゲーム  作者: 九ノ尾 イズナ
アマゾンラリー
3/7

幽霊


晃がここに来た経緯も、俺とほぼ同じだった。


晃の場合階段から落ちずに顔を上げたらここにいたらしいが。


「ここに来てから散々だよ。よくわかんない動物に追いかけられるし、蔦に足を取られて何十mも転がるし、虫の大群に襲われるし、泥沼に足突っ込んで動けなくるし…」


「よくそれで生きてたな」


泥塗れだった謎が解けた。


傷がつかなかったのは運が良かったのだろう。


いや、動物に追われて転がって虫に襲われて泥沼に足突っ込んだ時点で運が良いとは言えないか。


傷がつかなかったのは神のご加護だ。


『ああ、こいつ哀れだな…』とか思われたんだろうな。


話を聞き終え、その場から立ち上がる。


360度、大パノラマのような密林がただただ周りに広がっている。


はたしてここに出口はあるのだろうか?


「歩くしか無い…よな。」


「そうだね。でも僕と同じような人に会えて良かったよ。」


服の泥を落としながら晃も立ち上がる。


出口のある迷路だって、歩かなきゃゴールは出来ないんだ。


歩くしか方法は無い。


ったく、こいつはなんでこんなにヘラヘラしてられるんだ?


今も「仲間ができた~」と笑っている。


周りに花が見えるレベルのヘラヘラだ。


周りにある花を全て花占いにでも使ってやろうかと思ったが、前に進む方が何倍も楽なことに気がつく。


進むことにした足を、前に踏み出した。


その時。


目の前を2人組の女子が猛スピードで走り去って行った。


その顔には、焦りと驚きと、恐怖が浮き上がっている。


「どうしたんだろうね、あの子ら」


晃が呟く。


「本当、どうしたんだろうな」と返す。


多分、返したと思う。


けど、途中で途切れた。


芝生の地面に突如として出現した無機質で機械的な穴が、ゆっくりと元の地面に戻っていく。


今この場にあの子達はいない。


その理由を俺は知っている。


確かに俺は見た。


女の子2人が、そこに落ちて行ったのを。


「今のって…」


[脱落者2メイ、参加者2メイ、正常に確認しまシタ]


言いかけた所を、電子音混じりの声が遮る。


高い、歌手の人が出すような、女性の声。


一体どこから…?


「宗太郎君、あれ!あれ!」


晃が今さっき塞がったばかりの穴がある方を指差す。


「幽霊⁉あれ幽霊⁉」


んなわけねえだろ、と内心呆れながらその方を向く。


しかしそこを向いた瞬間、空いた口が塞がらなくなった。


青白い肌、どこを見てるかわからない目、アニメや漫画でもそうそうお目にかかれない電子の服、金髪で跳ねたセミロングの髪。


一見みれば『コスプレか?』という雰囲気の女の子。


だがしかし、その足は途中から綺麗さっぱりなくなっていた。


目を閉じる。


そして目を開く。


足は無い。


頭を叩いてから見る、足は無い。


深呼吸をして軽く笑う。


晃、バカにして悪かった。


今度からお前の言うことはなるべく信じるよ。


「幽霊⁉」


思いっきり叫んだ。


「だよね⁉」


始めてこいつと同意見になった瞬間である。


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