表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
家の火元にご用心
9/64

その8 予知夢への反逆

「オイラが上手く速度を緩めればよかったんだ……。ルイ、本当にごめんな」


 嘔吐しました。


 音速に酔ってしまった。帰宅して直ぐにトイレに直行したおかげで、事なきを得たけれど、正直吐くとは思わなかった。

 正直嘔吐したのは初めてだった。

「そこまで気にする必要なんて無いって」

 故意にやったわけでは無いのだから。どちらかというと、僕も一緒に守ってくれたのだからむしろ嬉しい。

「……ありがとう」

 いや、お礼を言うのはこっちだよと僕が言うと、ベガがそれもそうかと笑顔を見せ、思わず僕も笑ってしまう。

「お茶飲む?」

「ああ、あったかいのがいい」

今気づいたが、ベガは飲み物を尋ねると、必ず暖かいものを選ぶ。新しい発見をしたことで、意気揚々となった僕は、はーいと笑顔で返事をし、鍋に湯のみ二つ分の水を入れ、火にかける。

「待ってる間暇だし、テレビでも見よっか」

「そうだな。うーんニュースが見たい」

 僕は了解し、リモコンを手に取る。その時、今朝、本当にボヤ騒ぎにでもなってたら、地方のニュースに流れたのかもなと、ベガが何だか不謹慎なことを言った。それは嫌だなあと僕は笑い、チャンネルを地方ニュースに合わせる。

『速報です』

 アナウンサーがニュースを読み上げようとしていた。僕たちは何事かと思い、テレビを凝視する。

『――町の民家で、住宅二棟を巻き込む火事が続いております』

 映された中継を見て、自然と顔が引きつってしまった。

 映像は、夢の中で見たものと、全てとは言えないが、ほとんど同じように見えた。そして、僕らの家にも若干似ている……。

リポーターが必死に火災の模様を説明しているが、断片的にしか頭に入ってこない。

 ……もし、ベガがガスコンロの火を止めていなかったとしたら、この家が被害に遭っていたのだろうか。本来あるはずの事象を回避したことによって、僕が見たのは『民家の火災をテレビごしに見る夢』となった。そうだとしたら……。

 今、被害に遭っている家庭は、助かるのだろうか。いや、この強さだと、もう倒壊しているか……。


 ……待てよ。


 よくよく考えたら、今のニュースは速報だった。再度目を向けると『屋内からは助けを求める声が聞こえる』、『火が強く、救助が困難』、『巻き込まれている民家のうち、一つの民家の住民は脱出しているが、もう片方の民家の住民は、取り残されている』といった言葉が、リポーターから告げられている。

「……まだ、助けられるはずだ」

 ベガはその言葉を場に置き去り、玄関へ向かって行く。

「……いけるの? 」

「オイラのこの力があれば」

 この言葉に込められた、絶対的な自信と確信、希望。

「……信じてるよ、ベガ」

 強く出られると、信じずにはいられないのだ。ベガならどうにかしてくれる。そんな希望を、抱けるのだ。

「じゃ、行ってくる!」

 お決まりのセリフでドアから出て、風を切る音と共に姿を消す。


 家中の窓という窓が、音を立てて、強く揺れていった。


 僕はしばらく、その場に留まっていた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ