その7 帰宅道中怪しみて
授業が終わり、僕はベガとの帰宅の道中、ん~~~~~~っと伸びをする。太陽はサンサンと照っていて、いつも以上に熱い。
「解放された。僕は今、自由を手に入れた!」
「オーバーだなぁ」
実際オーバーなのかもしれない。だけど、僕にとっては、嫌なことが一つ潰れたのだ。この上ない幸せだ。そんなことを言いつつも、歩み続けるその足は、何だか軽いような、重たいような。さっきまで倒れていたとは思えないほどだ。
この気持ち、ベガには解らないか。この子学校大好きだし。
あれ、ベガの顔……。
「ねえベガ。さっきから表情が重たいよ。どうしたの」
「……誰かに見られている気がするんだ。それも、今に始まったことじゃなくて、学校に居るときから、うっすらと。どんどん近づいてきているように感じるんだ」
「え、何かが近くにいるってこ!?」
「そうかもしれない……」
不審者がすぐ後ろに居ると言われたら、恐ろしくて、考える暇もなく逃げようとするだろう。それと似たような境遇にあることは、言わずもがなだろう。違うのは、ここまでベガの勘にすぎないということなのだが。
しかし今日は暑い。季節はもう秋ごろだというのにこの猛暑。夏本番の頃よりも酷いような気がする。
いや、断言できる。おかしい。
今こうしている間にも更に気温が上がった。肌から噴き出る汗の量で、それがよく分かる。
「あ、あつい……」
異常気象でも発生しているのだろうか。時刻は四時前後。ここで気温がグッと上がるなんてことは、異常な何かが起こらない限りはあり得ないことだろう。
「幾らなんでも、暑すぎるな……」
ベガは下を向くと、何も言葉を発さなくなってしまった。勿論、僕も言葉を発している余裕なんて、無くなってきている。
これは早く家に帰らないと……まずい……。不審者みたいなのも近くにいるらしいし、このままでは状況は悪くなる一方だ……。
「まてよ……。近づく何かと……温度上昇……」
ベガが何かに閃いたように、ついに言葉を発す。そして同時に、ベガはしゃがみこみ、僕を負ぶる体勢になっていた。
「乗ってくれルイ、急いで!」
「え、それって」
「いいから早く!」
「はいぃっ」
ああ、ベガ。僕をまた(・・)、あの時のように運ぶんだね。
「いくぞっ、しっかりつかまってろぉおおおおおお!」
「ぴゃあああああああああああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ――」
ベガの持つ力「音速移動」によって、僕らはそこに居た誰にも見えない所まで、消えていった。
★☆★
「ちぇ~。逃げられちゃった」
ベガとルイは気づくことはなかったが、二人の居たすぐ近くに、紅黄色の髪をした少年もいたのだった。家屋の屋根にいたために、非常に気付かれにくかったのだろう。
「ん~……楽しんでもらえたかなぁ」
少年は不気味にも、にっこりと笑う。
彼こそが、ベガの感じた怪しい気配であり、そして二人を気温で苦しめた犯人である。が、姿は見えない。
「……後は、かる~くあの子がやってくるようなエサでも撒いておこうかなぁ」