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恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
家の火元にご用心
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その6 ベガとの出会い(簡略版)

 炎の中、奴は笑っている。

 そいつは「楽しかった」と言い放ち、その場から跡形もなく消え去った。

 ベガはもう、この世界には居ないというのか。

 僕の抱える悲しみは、この宇宙よりも広いことだろう。


  ★☆★


 ベガとは、僕が中学へ入学し、少しの時が経過した頃に出会った。「運命」と言っても過言ではないような、そんな出会いをした。

 その日、僕は「星屑(ほしくず()おか)」と呼ばれる秘境で、天体観測をしていた。星が良く見える日だった。そんな日に、ベガと出会った。その出会いには、運命を感じている。

 観測の最中、望遠鏡越しに、優しい光を放つ星を見つけた。その時は単純に、ただただ面白いという感情のみだった。けれどしばらく観察しているうちに、どうもおかしいぞと感じる。明らかに、こちらに近づいてきていたんだ。不審に思いつつも、気のせいだろうと考えた僕は、そのまま観測を続けたんだ。流れ星だったとしても、こちらに落ちることはないだろうと、気を抜いていたんだ。

 それはフラグだった。


 ……迫ってくる。

 肉眼で見えるほどに。

 ……考えられない。

 一寸先すら。

 ……真っ白だ。

 恐怖が、身をたくしあげる。


 地表への到達まであとわずか数十秒といったところで、とっさに望遠鏡を掴み抱え、近場にあった大岩まで全力で走って逃げた。

 隕石の落下した先は僕が居た場所の間近だった。ワンテンポでも遅れていたら、自分と衝突していたかもしれない。

その後、落下した隕石がどうも気になって仕方がなかった。恐怖心は残るものの、好奇心が上回り、落下地点を調べることに。

 そこには、一人の少女……のように見える赤髪の子が、傷だらけで倒れていた。その赤髪こそが、後のベガである。赤髪には記憶が無かった。自分に関する一切を、虫に食われたかのごとく、ぽっかりと忘却していた。

その後、僕は赤髪を、ベガと名付けた。名前の由来は、望遠鏡で覗いていたのが、恒星ベガの付近だったから。

ベガ自身、その名前を気に入ってくれたようで、名付けた僕としても、とても満足ができた。

 そして、しばらくしたある時のこと。ふと思い返してみると、ベガが落下してきた時のシチュエーションが、その前日に見た夢と、ピタリと一致していることに気がついた。 先ほど、僕は夢が現実になることを恐れていたが、その理由を端的に述べると、今まで夢で見てきた出来事の多くが、実際に発生している。もしくはそれに近しいことが起こっているからなのだ。もちろん外れることはあるけれど。

 このようなことがあったために、運命の二文字を感じたのだ。

 出会ってからの半年で、僕たちは様々な人々と出会い、苦難や問題を乗り越えてきた。これは、ベガの記憶を取り戻すためだ。

先述の通り、ベガは記憶を失っている。その記憶を取り戻すために、様々な場所を渡り歩いたり、書物を読み漁ったりなどを行ってきたが、この半年だけでは、何一つとして成果はなかった。記憶喪失と言えば、何かのスイッチを作用させる。つまりは同じような状況に遭遇したり、関わりのあった人物にコンタクトをとることで刺激を与えるのが良いとされているらしいが、何せ宇宙人だ。会うのもままならない。

僕らは未だに他の異星人を、恐らく見てすらいないことだろう。だから、望み薄だろうと思う。あくまで推察であるが。

 助けた後に問題になったのが、生活だ。この星にいる間は、ここの人間として生きる必要がある。そのため日常生活の中に身を溶け込ませ、最悪の場合、記憶が取り戻せないようであれば、この星の住人になってしまえばよいという父親が提案してくれた。これのお蔭でどうにかなったし、そしてそれをベガも承知した。

最初こそおぼつかない様子で過ごしていたベガだったけど、最近はもう慣れてしまったようで、毎日を楽しそうに過ごしている。そんな平和な日常の中起きた、今日の小さな騒動は、僕とベガの力によって未然に防ぐことができた。

先ほどは皮肉なことに、その力によって気絶し、保健室にいた訳だけれど……。

 どうやら行きの突風には耐えられたが、帰りは衝突したこと、そして、行きには無かった強い風の影響を、直接受けてしまったことによって吹っ飛んで、気を失ってしまったようだった。よく気絶で済んだよ……。

 幸い、廊下で行動を起こしたため、他のクラスメートへの被害はなく、ベガが突風を起こしたと気づいた者もなかった。ただし、夢空姉妹を除いてだが。

 丁度昼休みごろだったので、迎えに来てくれたベガと共に、教室へと戻ることに。


「ところで、今日の給食何だった?」

「卵焼き」

「はうっ……」


 好きなものを二連続で逃した悲しみで、再び眠りにつきたくなったのだった。


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