その6-B 友達は大切に
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――ルイに連絡が渡る数分前のこと。
「……ふむ」
「んえ、どうしたのですか、朝倉さん?」
「先ほどから資料を確認しなおしているが……やはり間違いは無さそうだ」
「ってことは……文明族は居るのですか!?」
「近頃世界各国で起きている異常気象、そして天変地異を見るに……恐らくね。断言は出来ないが」
「でも……その人たちを見つけたら、一体どうすればいいのでしょう」
「懲らしめる。それしか止める方法は無かろう」
「……かわいそうなのです」
「それにね……アルト、君も文明族の可能性があるんだよ」
「……んえ……え。え、ええええええええええええええ!?」
「そして、ベガ……同じく異星人と言われた彼もまた……」
――さあ、早く連絡だ。解が、見つかるかもしれんのだから……。
「宇宙人だと思ってたのです……これは大発見なのですうううう!!!」
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音速で走るベガの背に乗り数十秒。既に僕らは、ちょっとした丘を登り、朝倉研究所一歩手前、あの身長以上の茂みまでたどり着いていた。「少しだけ疲れた」とベガは言い、僕は了解して、背中から降りる。
ベガはふぅと口に出し、ふと後ろを振り返る。
「酷い雨になりそうだな……」
その言葉に、僕は疑問符が浮かぶ。
「こっちは、こんなに晴れてるのに……?」
「見れば分かるよ、ほら」
ベガに言われるままに、手を伸ばす方向……僕らの家の向きを見る。
「わあすっごい……」
まず真っ先にその言葉が出るほどドス黒い雲が、僕らの町を覆っている。
「アカリたちが帰れなくなると大変だ。今は急ごう」
「うん、いろんな意味で大変だからね」
「……お前は迷惑がるなよ」
「はーい……」
アカリが一日滞在するとなると、我が身がどうなるか分かったものではない。とはいえ今日の様子を見ると、いつもよりかは多少なりとも安全と言えるのかもしれない。でも、そんなことを我が脳内の天秤にかける理由にはなり得ない。トモリが居て、抑止力となったとしてもである。
「毛嫌いしてるのか?」
「いえ、滅相もない」
「大切な友達じゃないか。絶対に離すべきじゃないよ」
「はーい……」
ベガって説教癖があるよなぁと、ふと感じる今日この頃。物凄い正論を放ってくるからか、逆らうことはできないし、かと言って、言葉を選んで返答するのも難しかったりもする。でも、自分を考え直す機会になるから、別に嫌というわけではない。ベガはこれを怒った表情でするでもなく、笑顔でするでもなく、無表情で言うから、何というか……ちょっとこわい。
「ほら、早く行こう」
「あ、ああ。そうだな。話し込みそうになってしまった」
そう言って、ベガはおんぶの体勢になり、僕はその暖かい背中にしがみつく。
「あれ、ルイ。そういえば……」
「どうしたの」
「克服したのか?」
「……何を?」
「音速さ」
「あっ――」
慣れって凄いなと思う中、ベガは再び、音速となっていくのだった。




