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恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
守るための力
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その7-A ココロにトモる夢②

 外に出たときには既に、窓を開けていたときよりも強い雨になっていた。本当に、台風並の雨になるんじゃないかと思えるほどだ。レインコートにボトボトと落ちるその音。うるさいったらありゃしない。これでは先ほどよりも気分が滅入る。

 とはいえ正直に言うのならば、雨や、彼ら彼女らを嫌だと思っているわけではない。ただ、煩いことから解放されたかったという目的が、一切達成できていない。そこに嫌気がさしているのだ。

 ――そんなことを考えている内にも、雨は強くなる。おかしい、これはおかしい。異常気象だ。なのにも関わらず、大雨や高波、そして土砂崩れの警報は一切成されていない。

「なんか変」

 私はボソッと呟く。声のボリュームはいつもと変わらないのに、自分でも聞き取ることが難しい。それだけ雨が強いということだろう。先ほどユメさんが言っていた「雨に串刺し」というのが本当に起きそうなほどに、強力なものになってしまいそうな、そんな気すらしてくる。

 そして、そんな私の言葉に返答するかのような声が、突然脳を介するかのように伝わってくる。それは確かに聞こえてきたものだった。『変にしているんだ』と。

「誰かいるの……!?」

 人通りも見えない路地で、少しだけ大きい声で問う。

『ボクの姿を見たいのかい……?』

 今度はその囁くような声が、脳天から聞こえてくる。私は反射的に上を見そうになったが、この雨だ、見ることもままならない。目を傷めるだけだ。

『フフッ……しょうがない。降りようか』

 まさかとは思うが、この雨を起こしている原因なのではないか。それを直感的に意識してしまう。ヒーロー物ではこんなことがザラにある……ってバカ。これは現実だ。

 そんな自家発電のようなセルフノリツッコミをしている内に、狭い視界にはその姿が目に入る。


 いかにも水の精霊っぽい少年だ……。


 ってか浮いてるし。羨ましい。


 私たちと変わらない年齢なのだろうけれど、顔はとても整っている。髪は水色で、非常に長い。長さをはひざ裏まである……幾らなんでも長すぎではないか。服装は神秘的で、アニメの世界で出てきそうな、幻想的な衣服をしているし、胸の中心には、水色に光る鏡(?)のようなものが付いている。

 総括すると、「この世の存在とは思えない人が、目の前にいる」のである。浮いてるし。

「へぇ。ボクを見ても驚かないんだ」

「姉が既に異常だから、慣れっこよ」

 と私は強気に返答をする。まずは話を合わせ、彼が一体何者なのかを知る必要がある。まぁ……水の精霊だろうけど。そうに違いない。

「突然だが、キミかな。ヘリオクスを拳一つで、しかも音速で仕留めた者は」

 近づいてきたその少年に問われる。音速で仕留めたということは、恐らくベガさんがやったのだろう。私が知る限り、音速と言ったらあの子しか居ない。

「違うよ。そもそもヘリオクスって誰?」

「へえ……知らないのか。キミは、その音速の少女の拠点に、足を踏み入れていた。それで、関係がないとは思えないね。フフッ」

 恐らく、この人は相当頭が良い。何となくだけれど、そんな気がする。彼が話す度に背筋がソワッとする。その吐息のような優しい声を出されると、どうしても、本当のことを言いたくなってしまう。

 魅力的なのか、それとも実は恐怖しているのか……。

「図星だね」

「……あなたは一体何がしたいの? その人を見つけて、どうするつもり?」

 言葉に踊らされないよう、私はまた質問をする。

「簡単なことだよ。ボクも挨拶…し……とお……た…だ…らね……」

 聞きとり辛くなっていく。彼が言葉を放つ間に、更に雨が強くなっているためだ。

 「ごめんなさい!! 聞こえない!!」と私は大きな声で言う。すると、彼は耳が良いのか、理解してくれたようだ。

『人間は耳が良くないのか……勉強になるなぁ』

 その証拠に、また脳内に言葉を送り込むようになっている。だけどこの人(?)、今『人間は』と言った。じゃあ、彼は一体……何者なんだろう……。

『ま、そんなことよりも……ね。もうキミは、ボクがこの雨を作ってることに、気づいてるんじゃないかな?』

 驚いたことに、先ほどの妄想は、事実だった。けれど、こんな酷い雨を降らせて、一体どうするつもりなのだろうか。本当に、謎が多い。

 ……というか、もしかしてこのポジション。もしかして、私はヒーロー?

『ボクはこうして、外に出てくる人を待っていたんだよ。雨が強まって、拠点周辺だけに雨が集中すれば、中はどうなると思う……?』

 自身の妄想を遮られたことに若干苛立ちつつも、教科書で習った程度の知識で答える。

「中は……むし暑くなる……湿度が上がる?」

『フフッ……ザッツライト。文明の利器は壊れ扱えなくなり、外に出て来るだろうと思ったわけだよ……。でも、そんな必要はなかったよ』

「そうね、その拠点に、その子はいないんだものね」

『それもそうだけどね、もっと面白くなる遊びを、思いついたんだよ……フフッ』

 先ほどからこの男、見にくいが不敵な笑みを浮かべている……。一体何をしようというのだろうか……。

 その「何」を考える間もなく、突然、雨が止む。 ……あまりに不気味だ。

 上を見ても、禍々しいほどに黒く染まった雲が、一帯を囲っているだけ。でも、それが逆に恐ろしい。

 正面を見ると男は、片手を大きく上にかざしている……。

「何をするつもりなの……?」

『フフフ……ちょっとした、エサが欲しくなってねぇ……』

 視覚に考える能力すら奪われてしまっている。何故なら、今起きている光景に恐怖しているから。

 大きくかざした片手に……周りの雨雲が……全部集まっていく……。

「ボクは水を操れる。単純に雨雲を集め雨を降らすだけではなく、一点にまとめて、誰かさんを包むことも、可能なんだよ……フフッ」

 まさか、彼がしたいことって……。

「エサって……もしかして……」

「フフッ……もう、遅いよ」

 気付くのが……遅かった……。

「さようなら、かわいいお嬢さん」

 彼の手元から、包むような水が襲い掛かってくる。

 けれど、それを弾き飛ばすことも、どうすることもできやしない。

 私はヒーローなんかではない。誰も助けることはできないし、そして、誰に助けてもらうこともできない。

 所詮私は、弱い女……なのだから――。


 ――私の意識は途絶えた。何もできないその無力な気持ちを残して……。

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