Re:6 数か月の世界
研究所で、室内で、言葉を発する者は、朝倉ただ一人だった。
辺りはあまりにも静かで、生きた心地がしないぐらいに、息苦しかったのを良く覚えてる。自分のことに直結する問題だからだろうか。それとも朝倉が心理を操っていたのだろうか。如何にも得意そう。先ほどまで笑っていた自分に、このとき喝を入れた。
「何から話そうか……。そうだな、君たちにも理解がしやすいよう、簡潔かつ具体的に述べようか……」
そう言ってソファーから立ち上がると、コツコツと辺りを歩き回り始める朝倉。その後ろ姿を見るに、余裕そうで、それであって真剣なんだろうと取れる。
……ふうと息を吐き、再び吸ったところで、振り返り、そして、衝撃的なことを述べる。
「我々は、別世界から来た人間だ」
その言葉が、僕らの時を止めた。
彼は何と言っただろう。
……別世界。
別世界といえば、SFやファンタジーでよく見るアレだよね。マンガや小説では、「異世界」なんて呼ばれていることもある。
そんなフィクション染みたことに、憧れることはあっても、現実にあり得るとは思えなかった。
「そ、そんなこと、信じられません!!」
「オイラ達を下手に見ているんじゃないのか?」
僕と、表情をムッとさせたベガがほぼ同時に文句を立てると、それに同情した朝倉が直ぐに返答する。それも、皮肉かのように。
「信じられないのも無理はない。いや、むしろ、信じる必要などないさ。君たちに詳細なことを述べたとしても、混乱するばかりなのだからね」
「納得できないな……」
モヤモヤとした表情を崩さないまま、一方的な会話は続く。
「フムそうか。では、先ほど夜天君も問うてきた、目的ぐらいは述べておこうかな……」
彼は先ほど以上に真面目な顔になり、周りの空気もピリッとしてきていた。何故か、緑髪からもそれを感じ取れた。
「私たちの目的は、この世界の真理を知ることだよ」
世界の真理。それは、世界中のどの学者もが目指しているもの。数学者だろうと、物理学者だろうと、化学者だろうと関係ない。皆が目指し、そしてたどり着いた者はいないとされるその『領域』らしい。
何故だか、僕にはその話が、他人事のようには思えなかった。自分自身も、その『領域』に関わっているような、そんな気持ち。自分自身が最近見るようになった『予知夢』。これは一体なんなのだろうか。ひょっとして、自分の運命を決めているのだろうかって。この話が出てから、ずっと感じてるんだ。
「そんなことよりも。君たちにとってはもっとも大切なことを教えてあげよう」
朝倉は緑髪の少年の目を、笑顔で見つめる。
「アルト、自己紹介をしてごらん」
「はいぃ!!」
弱々しいけれど、強めの姿勢で反応をする緑髪の少年は、改めて見ても、ベガと勝らずとも劣らず、可愛らしい容姿をしていた。エメラルドグリーンに近い髪であり、瞳も同じ色をしていて、とっても綺麗だったと思う。髪質はやや癖っ毛だったかな……結構天候に影響しやすそうな髪をしていた。身長は僕よりも低めで、低身長な朝倉よりもほんの少しだけ高かった。その舌っ足らずなしゃべり方だけでなく、声の質も、僕らよりも幼いように感じる。
ベガが幼い少女のようだとするならば、この子は、幼くひ弱な少年だろうか。
「えっと……」
もじもじと、たどたどしいその仕草は、兄弟面をして愛でたいほどには、可愛いと感じた。
「初めまして、なのです。僕の名前は……」
この出会いは、本当に僕らを引き付けていたもの、もっと言えば、運命だったと感じてる。
「……『朝比奈 星夜』、なのです」




