そのG-4 荒くれ者、心開く
『さて、一通り解説は終わったわけだが……そろそろ戻ってくるかい?』
朝倉さんはやりきったような声で仰いました。思えば、僕の操作をしていたのも、解説をしてくださったのも彼なのです。本当にありがとう、なのです。そしてお疲れ様、なのです。
「そうですね。そろそろ元の世界の空気が恋しくなってきました」
草原にはもう、何度目とも分からない日の出が起こっていました。木々や草花は光を求めて身体を一生懸命に伸ばし、生き物たちの生きる糧を放出していました。しかし、その空気の匂いや味、更には重量すら、元の世界とは異なっているように思えたのです。そのため、植物たちには申し訳ないのですが、ちょっとだけ違和感を感じてしまいました。ここで楽しく動物たちと触れ合うのも楽しいのですが、出来れば今は、戻りたいと思いました。僕としては、元の世界の空気が好きでしたので……。
そして朝倉さんが、戻り方の説明をしてくださるという話になりました。
……ですが、残念ながら、急ぎ足の説明となったのです。
『……! アルト、済まない。所内でトラブルが発生したみたいだ。悪いがそちらへ向かいたい。今から戻り方を説明するから、しっかりと聞くように』
僕が分かりましたと申し上げると、朝倉さんは続けました。
『ここから道なりに真っ直ぐ進んでいくと、「オパール村」がある。そこの街に入ったら、宿屋を探すんだ。そこの店主に「朝倉智哉に言われた」と言えば、いつでも無料で泊まれるようになっている。そして、そこの布団で目を瞑ると、「元の世界に戻るか」を問われるから、そこで「はい」を選べば帰って来ることができる……。では、後は任せた』
そして朝倉さんの声は聞こえなくなりました。理由が何なのか、とても気になるところではありますが……それは戻ってから聞くことにしましょう。それより何より、何故朝倉さんの名前一つで無料宿泊ができるのかという所に、世の不思議を少しだけ感じました。これも後ほど聞いてみましょう。
さて、そうと決まれば、出発です。僕はミュリンを肩に乗せてモフモフとしながら、一歩一歩、足を進めていきました。
道中ではまた、様々な動物と触れ合うことができました。最後に出会った炎を吐いてくる、赤っぽい黄色のたてがみに大きな身体をした、茶色の毛並みの鳥の子には正直驚きました。僕の身長よりも大きいのです。けれど、炎を吐いた隙を見つけて喉の辺りをなでなでとしてみると、それまでの荒さは一転し、心の扉を少しだけ開いてくれたのです。
その後にミュリンが(多分)言葉巧みに交渉をしてくれたのでしょう。鳥さんは、嘴で僕とミュリンを優しく咥えて、そして彼自身の背に乗せてくれたのです。そして僕は、直ぐに意図を理解して、鳥さんに身を委ねました。
「君のこと、フレバードって呼ぶのです」
フレイムを放つ鳥ということで、「フレバード」というちょっとありがちなネーミングだったと、今は思います。しかしそれでも鳥さんはカッコいい笑顔を見せて、そして頷いてくれました。
フレバードの羽毛は、少々硬い質ではあるものの、僕を優しく暖めてくれました。
鳥さんって、こんなに暖かいんだ。柔らかいんだ。なんて考えていたでしょうか。とても心が落ち着くフライトを、十二分に楽しむことができたのです。
数分間の飛行の後に、フレバードは地上へ降り立ちました。そこは目的地である「オパール村」の門の前でした。
「ありがとうなのです、フレバード」
対してまたまたクールなスマイルを見せる彼。僕はその表情が、なんだか好きになった気がしました。
「ね、これからも一緒について来てほしいのです。僕、君のことも気に入ったのです!」
「みゅ~!」
ミュリンも同じ気持ちだったようです。やっぱりこの子とは気が合うのです。
対してフレバードは、今度は自分から、喉元を撫でるように促してきたのです。彼なりの感謝の気持ちを表しているんだと思っています。
ミュリンの時もそうだったのですが、この時も、とっても嬉しかったのです。正直このまま「プイッ」とそっぽを向かれて飛び立って行ってしまうのではないかって、とても不安になったのです。でもそんな中で、一緒に来てくれるという意思を示してくれたのですから、これ以上に喜ばしいことはありません。
僕は優しく喉元を撫でて、「ありがとう、なのです」と言いました。
その後僕たちは、更に門の近くへと行くと、門番のような人がいらっしゃいました。
「旅人かい?」
僕が、はいそうですと申し上げると、門番の方は笑顔で続けました。
「この街はペットの動物であれば、入れてもいいことになっているんだ。だから君たち二匹も、安心して入ってね」
「そうなんですか、素敵な街なのですね!!」
実は朝倉さん以外の人間と話すのは初めてな僕でしたが、門番さんがフレンドリーなお方だったので、簡単に乗っかることができました。よかったのです。
ミュリンとフレバードを見ると、どちらも喜んでいるように見えました。しかし、フレバードがちょっとだけ、複雑な表情をしていたのを僕は見逃しませんでした。この表情を言葉で表すなら、「ペットと呼ばれるのはあまり好きではないが、一緒に入れるのならやぶさかではない」といったところでしょうか。なんだか、かっこかわいい子だなぁ……なんて思いました。
「じゃあ、門を開けるぞ!」
大きな木の扉で出来た門を、門番さんが開きました。
「ようこそ、オパール村へ!! お三方とも、ゆっくりしていってくれよ!!」
僕たちは、街の景色や賑わいを楽しみに、門を潜りました。




