表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
家の火元にご用心
3/64

その2 忘れごと

「ルイ、ルーイー!」

 耳元で大きく放たれる声によって、僕は現実へと引き戻される。

「聞こえてるか、遅刻だぞ!」

「……うぅぅぅ、もう少し、もう少し……」

「ダーメーだ。お前はいっつもいつも」

 体をゆさゆさと揺すられる。余韻に浸れるぐらい、心地良い。

「だって……今日、日曜だよ」

「違うよ月曜だよ。月曜は学校の日だぞ!」

 僕はハッと我に返る。そうだ。日曜は昨日たっぷりと味わったではないか。

 目を開いて、声の主のもとを向く。

そして見えるのは、赤髪で赤目の少女……の面持ちをした、大切な居候。

「お、おはよう」

「『おはよう』じゃないだろ……全く……」

 ジト目だ。

 この赤髪の名前は「ベガ」という。数ヶ月前からこの家に居候をすることになった、ちょっと変わった子だ。変わっているといっても、それは性格のことではない。

「い、今何時?」

「八時半。とっくにホームルームは終わってるぞ」

 ベガが時計を指さす。僕は思わず「うわあ」と声に出してしまう。

「今更急いだって仕方がないし、落ち着いて支度するんだぞ」

「……いつもごめんよ」

 対する返事は「いや、いいんだ」であったが、笑顔でなく、呆れの表情をしている。

「オイラはすぐに行けるからいいよ。でもルイ……お前、これで何回目なんだよ」

 数えたことなんてなかった。仮に数えても多分、十本の指には収まらないだろうけどね。

「起こしたことだし、先に行ってるぞ」

 そう言うとベガは、玄関に向かって行った。

 しばらくして、猛烈な風が、窓ガラスを揺らしていく。

 さて、一方僕はリビングへと向かい、テレビの電源を点ける。

 その時間は朝のニュースをやっているみたいだ。、キャスターとセットで、画面の下部にニュースのトピックが表示されている。

「へえ、『不審者情報、相次ぐ』ね」


 物騒な世の中だなぁ。


 女子学生を狙った悪質な犯罪も多いことだし、気をつけなければならない。

 僕も、ベガ程の少女顔ではないが、発達途上であることや、顔の中性っぷりから、よく女子と間違えられてしまう。そのためか何なのか、父親いわく誘拐されかねないらしい。勘弁してほしい話だけれど、やっぱり外を歩くときは気を配らないとね。

『市内において、不審火も増えているとのことで――』


 ……おっと、急がないとだった。

 とりあえず食事だ。キッチンへ行き、コンロに火をつけ、昨日の余った玉子スープを温める。大好きな味であるため、速く飲みたい衝動に駆られる。

「た~ま~ご~~♪ た~ま~ご~~みんな大好き~♪ アレルギーにはなりたくない~♪」

 早く飲みたい欲求のあまり、気持ちが高ぶってしまったようだ。自然に歌声が室内に広がる。

「た~ま~……あっ」

 ふと、教科書、筆記具等、本日必要な教材の準備ををすっかり忘れていることに気が付く。スープを飲みたいのはやまやまだけれど、遅刻と忘れ物の2コンボはあまりに痛い。

 落ち着いて支度をしろとベガには言われたものの、やはり遅れ過ぎるのは担任にも迷惑をかけてしまうことだろう。できる限りは急がねば。

 スープを飲みたい気持ちをグッと堪えて、僕は支度をするため、階段を上る。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ