2/64
その1 悪夢
夢と信じたいことってあるよね。
今、僕にはそんなことが目の前で起こっている。気が付いたら、熱気に包まれた空間にいたんだ。
この汗。この紅色。
やがて僕は、それを炎であると感じ取れる。
燃え盛る業火はまるで、火皮を纏った化け物のようだ。
僕は目を凝らして包まれているその火種の正体を掴もうとする。どうにも判断しづらい。
わずかばかり残る影から把握するしかないか。
……え、何これ。
「僕の家だ」
それは紛れもなく、自分の住む家だ。果たして全員が脱出したのだろうか。家族と居候は無事だろうか。多くの心配事が胸を駆け巡り、そして絡みつく。
……とても息苦しい。
中から、異質な笑い声が聞こえてきた。炎で焼き尽くすことを「快」とするような、悪魔のような声だ。
僕は急いで家へと向かおうとした。けれど、金縛りにあったかのように、その場から動くことはできない。
自分はどうするべきなのか、何ができるのか……。
……頭の整理がつかなかいよ。
『……イ……ルイ……』
突然、誰かの声が聞こえた。