表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
孤独の科学者
19/64

その3 説明口調である

 夜が明けて、陽は昇っていく。そして徐々に沈みゆく茜色を見ながら、一日を終える。更に言えば、夜が明け、そして陽が昇ることで我々は目覚める。これは世界、そして人類に存在する一種のルールだ。

 しかし残念ながら、私はこのルールを守れてはいない。何故なら研究に没頭するあまり、「時」という概念を忘れて過ごすためである。昼に寝て、夜に研究をすること。それは最近では、至極当たり前の行いとなっていた。

 だが、今日はこれとは少し違う「規則破り」をしている。一見同じ「没頭」であるが、研究とは少し違う。

 現在時刻は昼を回った辺りか。

 隣の空き部屋に用意された解剖用のベッド-別に解剖を行う気は更々無いが-に気絶し眠る、私より少し背の高い緑髪の少年。気を失っていようと分かるその優しそうな顔立ちに、私は魅了された。彼は本当に異星人なのだろうか。発光物体の正体なのか。などと想像が膨らむ。

 そして同時に、彼の生い立ちに興味を持った。生命に興味を持った。更には性格にすら興味を持った。


 その興味が私の気持ちを高ぶらせ、緊張させ、興奮させた。


 この「没頭」により、私は眠ることなど出来なくなった。

 今の今まで何をすることなく、ただひたすらに所内をグルグルと歩き回っているのであった。

「早く目覚めないだろうか……」

 思いが漏れ出してしまう。彼は恐らく、いやほぼ確実に異星人であろう。ゆえに回復力も何もかもが、この星の民とは異なっているはずなのだ。その速度の差異など、私には分からない。だが、いち早く彼が目覚め、そして話を聞ける日が来ることを、心から祈っていた。


 ……考えてばかりでは仕方がない。そう割り切るのには、長い時間を要した。結局、私は研究者である。いつまでも眠る姿を見ている訳にはいかないのだ。自身の研究を進める時間を確保しなくてはならない。そんな義務感が肥大するのを、待つしかなかった。



 すぅ……と深呼吸をし、複雑な気持ちを抑える……。

 これを繰り返し、気分と落ち着きを、少しだけ取り戻した。

 その後、ゲームセンターにあるアーケードゲームぐらいだろうか、私のような高身長(抱きやすい135センチ)をも軽く凌駕する、ビッグな機械(170センチ)とにらみ合う。外面や設計はガタガタであるが、しっかりと起動し、画面も映る。これは、私が初めて開発した、完全にオリジナルの波長計だ。

 波長計、というと想像がし辛いだろうか。

 イメージとしては、病院で使われる「心電図モニター」のそれに近いだろうか。

 ……あくまで反応すればの話であるが。

 この機械は、一般的には、反応を示すことはない。

 反応に至るのは、「この世界が何か重大な方向へ向かっている時」だと考えて、一切の差し支えはない。その変化が大ければ大きいほど、波の触れ幅も大きくなる。

 付けても無反応しか出たことのないこの機械であるが、今日は何か胸騒ぎがしていた。いや、そんなまさか。彼が来たことによって、しかもそれだけで、触れ幅が振れるなんてことは流石に無いだろう。

 考えを巡らせながら、恐る恐ると電源を入れた。


「…………」


 ……無反応だった。


 何だか安心したような、残念なような。

「重大な局面とは、いつになったら来るのだろう。仮に、来たのが今だったとしたら?」


 反応がない事に、少々拍子が抜けてしまった。だが、今何かが起きたとしても、対応ができなかっただろう……と、私は癖の強く、長い髪を優しく掻いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ