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恒星未来伝―Protect Your Eterein―  作者: くろめ
家の火元にご用心
10/64

その9-A 救出大作戦

    ★☆★


 触れ行く風が、心地いい。どうしてだろう。いつも不思議なのだけれど、何故だか、寒いとも、痛いとも思わない。自分の、オイラ自身の、髪や肌に強く撃たるわけでもなく、撫でるように過ぎ去っていく。自分自身の方が速いからなのか、むしろ自分自身が作り出した風の方が、遥かに大きいような気がしないでもない。

 これから助けるべき住宅の場所位置は、大まかながらテレビの中で取り上げられていた。それで十分だ。町まで把握できているのだから、かかっても一、二分だろう。

 視覚による情報は、音速だろうとしっかりと取り入れられる。「朝倉研」のカメラにある超連写機能みたいな雰囲気で、全て脳に送り込まれているようだ。だから、たとえ数メートル先に人間が居ようと、軽々と避けることができる。そんな自分を見て、皆驚愕とした表情でこちらを見てくるらしいけどな(ルイ談)。オイラは後ろに目があるわけじゃないし、そんなことは分からない。

 数十秒だ。家屋の一つや二つに住む住人なら、それだけの時間があれば、助け出すことができる。ルイは、オイラを信頼して、出ていくことを許してくれた。だからこそ、その期待には応えねば。助け出すだけじゃない。その火元の根本理由まで見つけ出して、もし仮に、それが放火だったとするなら、二度とそんな悪さをしないように、後悔させてやろう。

 ――と。そろそろ到着か。止まる余裕なんてないから、このまま一気にいくぞ……!

 沢山の人が近くにいるけれど、スキマがある。あそこをどうにか……。

 ……よし、何とか抜けた。

 熱気が凄まじいな。炎ってこんなに熱かったかな。

 外がこんなのだから、室内はもっと酷いはずだ、心して入らないと。

 周りの消防隊やら警官は何を思うんだろうな。後は、テレビ局の人たち。

 あまり時間はかけたくないし、考えるのはやめよう。

 突入だ。もう後戻りはできない。絶対に全員を助け出すんだ。とにかく時間だ。時間がない。とにかく色んな場所を探すんだ。


 そうして、一人、二人と逃げ遅れた人を見つけ、助け出していく。

「あんた、一体何者……?」

「天使様だ……」

 逃げ遅れた老夫婦に言われるけれど、こちらには名乗るつもりはないから、「絶対に外に連れていきます」とだけ言って、あとは特に何も言わないでおこう。

 よし、二人とも外に出したぞ。

「この中にまだ残っている人はいますか」

「こっちにはいません。助けてくれてありがとうございます」

「いえいえ。では、あと二つ残っていますので」

 あと二つの民家も、決して犠牲は出さない。助け出す。


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