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ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
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  テイク1  月の来訪者(7)

「オヤジさんは帰ってけーへんのか?」

「ああ。長期出張中だから、しばらくいねーよ」

「じゃー、遠慮なくお泊まりさせてもらうで♪」


 オレとリリオは、狭い布団に身を寄せあって、眠りにつこうとしていた。

 会話だけだと女の子どうしに聞こえないが、何の問題もない……はずなのに、


「……何でオマエはマッパなんだよ!?」


 ちなみにオレは、下着だけちゃんと着けて寝る派だ。

「別にえーやんか。ちゃんとお布団で眠れるときぐらい、そーさせてやー。ウチの場合、裸で寝るのが一番『ヴァイタル・エナジー』が回復するんやで?」

「ヴァイタル・……エナジー? たしか、ハーレクイーンとやらも同じコト言ってたな?」

 するとリリオは、布団の中で得意げな顔をし、



「『ヴァイタル・エナジー』とは——つまり生命力のコトや。ほぼ全ての《マキナ》のパワーソースで、人間が自前で生成できる。そんで、休憩したり、食事したり、入浴したり、眠ったりすると回復する、究極のクリーンエネルギーや。……あ、ちなみに——『えっちぃコト』すると、男は著しく消耗するけど、女は回復するらしーで? 何でやろな?」



「何その最後のギリギリすぎる設定!? って、生命力!? 使いすぎたら死んじまうんじゃねーか?」

「ダイジョーブやって。正規モノの《マキナ》は、デフォルトでリミッター付きやし、ウチの《オリジナル・マキナ》にも設定済みや!」

 ぱちっと、小さくウインクするリリオ。……メッチャカワイイ……いやいや、オレには星伽が、ってソレも違う!

「ん!? 何やルルナ? 何赤くなっとんねん? ホラホラ」

「コ、コラ! 抱きつくな、胸をくっつけるな、脚を絡めるなあああ! また鼻血が……」

 敵の波状攻撃は凄まじい。

「どーして女の子相手なのに、鼻血が出るんやー? まさかとは思うけどルルナ——」


 マズい! オレの秘密その三、『女の子が◯◯』がバレる! 子孫にそんなコトを知られるなんて、まさしく末代までの恥だ! ココは意地でもシラを切り通して——


「こーんなカンジでー! 女の子が好きなんか————————ッッッ!?」


 ——ばさばさばさっ。

 敵のトレジャーハンターの手にはすでに、厳重に隠されていたはずのオレのお宝——『百合百合ぱらだいす』ほか数冊の大人の教科書(内容は全て百合モノ)と、おまけに写真部を制圧して没収した星伽のちょっとだけセクシーなプリントアウト写真(水着その他)——が渡っていた。

 まあ、落ち着け。


 オレの秘密その四。オレは中身が男だし、し、思春期だからしょーがないよなっ♪ これくらい、ふ、フツーだろ……、って、


「うわ————————————————————ッッッ!? テ、テメーいつの間にオレのお宝を!? か、かかか返しやがれッ!」


「紙媒体かいな……。まあ、一番確実な保存方法やな」

「し、仕方ねーだろ? オレは今どきパソコンもケータイも持ってねえ……ん?」

「電子データは消えてまうときは一瞬やからな。光子データも結局そうやった」

「何の話だ? あ、オレのお宝、返してもらうぞ」

 どーやら話がそれそうでラッキーだ。今のうちに、回収回収。

 リリオはお宝そっちのけで、オレのとなりで珍しくシリアスな表情を作り、



「『大消去ザ・デリート』。二度にわたるX線等級X150超えの超巨大太陽フレアが引き起こした破壊的な磁気嵐によって、全人類が保管セーブしていた電子・光子データの98パーセントは、失われたんや」



「……何だって?」

「その後——残ったわずかなデータと無傷の紙媒体をもとに、必死の情報復旧作業が行われたらしーんやけど、取り戻せたのは30パーセントにも満たなかったそーや。そのしばらくのち、《マキナ》の普及によって時空の超越が可能になったんやけど……、過去の情報を未来へ持ち帰るコトは、歴史を狂わす恐れがあるとして原則禁止になった」

 オレはまるで、SF映画のシナリオでも聞かされているかのような気になり、布団の中でかたずを飲んだ。すると、


「せやからな。残念ながらウチは、ルルナ以外の遠いご先祖さまたちのコトは、ほとんど知らへん。だからルルナが将来結ばれるはずの、『おムコはん』のコトも——」


「そーか。——ひぇっ!?」

 思わず声が裏返った。


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