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ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
7/42

  テイク1  月の来訪者(6)

 ——かぽーん。


「確かに……そっくりだが……」

「せやろ?」

 オレと、自称七代後の子孫の少女は、狭いバスタブでぎゅうぎゅうになって、差し向かいにお湯に浸かっていた。お、女の子どうしだから問題ない……よなっ?


「あ! コラ、そのムダにデカい胸を湯船にゼンブ浸けるんじゃねえッ! お湯があふれちまうだろ!」

「なはははは! ソレはお互いさまやろ?」


 確かに、コイツの体型はホントにオレとそっくりだ。身長も同じ。

 脱衣所で、試しにオレの下着の上だけコイツに着けさせてみたら、ピッタリだった。

 まさか、スリーサイズも体重も、全部同じなんじゃねーだろーな? 何もそんなトコ、七代も遺伝しなくっても……。

 ちなみにオレはソレを直視できない。オレの清純派の好みとは違うとはいえ……、鼻血でも出たら大変だ。


「ほな、お尻をコッチへ向けろや」

「おう、お尻だな……て!? ななななんだソリャぁ!? ——————あっ」

 動揺していたオレはリリオに捕まり、あっさりと湯船の中で身体の向きを反転させられた。


「この三日月型の蒙古斑! コレが動かぬ証拠やで!」

「み、みみみ見たなあっ!? 星伽にもまだ見せたコトねーのにっ!」


 オレの秘密その二。下着や水着でギリギリ隠れる位置にある、三日月型の蒙古斑。

 知ったなキサマぁ!


「安心せーや、ウチもやで」

 ぷりっと、自分もコッチにソレを向けてオレのと合わせる、自称子孫。

「コレで小さい頃、どんだけイジめられたか……えぐえぐ」

「オレのせいかよッ!? って、オマエがイジめられるよーなタマか?」

「バレたか。ウチをアホにしたヤツらは、全員時空の彼方へ跳ばしたったで」

「やり過ぎだろ!? ……ってオマエ、やっぱタイムスリップとかできちまうのか?」

 未来から来たという少女は、ニンマリとした笑みをその薄桃色の唇に浮かべ、



「できるで。ムッチャ得意や。そもそも、時空を超える《時間タイム跳躍ジャンプ》をはじめとした《マキナ》の基礎原理自体、ウチのじーちゃんが異世界からテイクしてきたモンやからな」



 ……またブッ飛んだ話を聞いちまった。

「ちなみにじーちゃんもルルナの子孫やで♪」

「……ふ、ふーん。それで、《マキ》……何だ?」

「チョイ説明長くなるで。のぼせる前に、身体洗おーや」

「あ、ああ。そーだな」

 そうしてオレとリリオはバスタブから出て、並んでごしごしと身体を洗い始めた


「《マキナ》っつーのはな、この時代風に言うと——ケータイとかのデジタル機器のアプリみたいなモンや。ウチの時代の、超々テクノロジーを利用したな。指でいろんなサインコードを切るコトによって起動するんや。さっき使った《三日月クレッセントバスター》や《エアリアルの◯ウインガ》、《不可視インヴィジブル障壁スクリーン》も、みんな《マキナ》やで」



「ケータイアプリみたいって……、そんなカンタンなモンなのか?」

 リリオは、その抑揚のカタマリのような肢体を泡々にしながら、


「カンタンちゃうな。使える資質のある人間は限られとるし、上級の《マキナ》を使えるヤツはめっちゃ少ないでー。あと、ウチの《三日月クレッセントバスター》みたいな《オリジナル・マキナ》や、非合法の《裏マキナ》なんてレアなモンもあるな」


「非合法って……。そーいや、オマエはあの子ウサギのお巡りさんたちが言ってたとーり、ドロボーなのかよ!? 今までのオマエの行動パターンは、まんまソレだぞ?」

「……ルルナ。チョイ、背中洗ってくれや」

「お、おう」

 うわ。肌、ツルッツル。

「お返しやで」

「おう、サンキュー……うはははは! くすぐった……って!? ドコ使って洗ってんだ……あっ! コ、コラ! ソコは自分で洗うから! ひうぅっ!?」

 もー実況できねえ。放送事故だ! 女の子どうし、女の子どうし……。



「……ウチな、実は——『時空トレジャーハンター』なんや。ドロボーちゃうで」



 ようやくその悪い手を止め、耳もとでささやくリリオ。

「な、なんだそーか。映画みたいでカッコイーな! って、言い方変えただけじゃねーか!」

「えらい違いやで。ウチは主に、持ち主不明、もしくは天然のお宝や、不当な手段で得られた財宝を狙っとるんや。ほんとうの善人や、弱い者からパチったコトはあらへんで!」

「ホントか? じゃー何で警察から追っかけまくられてんだよ?」

「そりゃまー……。不法な時間跳躍をして、悪い金持ちからはさんざんギッたからやな。時代を問わず」

「やっぱドロボーじゃねーかよ……」

「なはははは。まあ、そー言うなや」

 金銀ミックスの宝石のような髪をかきあげる、自称トレジャーハンターの少女。


「あールルナ。もうひとつ。ウチがルルナの子孫だってゆー決定的な証拠があるんやで」

「何だ? ——————あ」

 髪留めを外すムーンテイカー。するとソレは、するすると小さくなり———



「コレは、ウチの《マキナイト・コア》——『ザ・ムーン』や。《マキナ》を行使するための、ハードウェアみたいなモンやな。じーちゃんにそう改造してもらったんやけど、もとはその大きさのタダのペンダントやった。そう——」


「オレの——ママの形見、コレと同じ——————」



 オレは、首からかけたままのペンダントを、リリオのものと照らし合わせる。

 ——全く、同じ——

「あ。あああああああああ…………」

 無意識に、リリオに抱きつく。

「わッ!? 何や、やっとウチを子孫として認知してくれたんか? おーよしよし、カワイイご先祖やのう。って、うわ————ッ!?」


 ——ブバッ!


 ついにオレの鼻腔の粘膜がリミットをむかえ、勢いよく鼻血が吹きだした。

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