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ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
38/42

  テイク9  地上最強の獣(2)

 

 ——グ オ ア ア アアアアアアアアアァァァァァ————————ッッッ!!!


 咆哮で答えるティラノサウルス。ハンパないプレッシャーだ。まさに暴君。

 でも勝算がないわけじゃーない。オレの左手での頭なでなで攻撃は、マンモスにも、ケルベロスにも効いた。幽霊でさえ、ちょっと効果があった。


 ——頭さえ、なでられれば! 


 本気になったのか、これまでよりもはるかに早いスピードで襲いかかってくる大アゴ。

「はああッ!」

 右へジャンプしてかわすオレ。すぐに追撃してくるが、次は左へと避ける。その次も、左——


 ——バグンッ、バグンッ、バグンッ、バグンッ!


 空を切る牙。だんだんリズムがつかめてきた。

 オレはタイミングを見計らって、真上へと跳躍する。

 よし、このまま頭上に乗って——


「——!? いねえッ!」


 真下にあるはずの、巨大な頭が、ない。

 ぶうんッ! と、空気が鳴る音。

 高速で横回転している巨躯。空中のオレに迫り来る、極太の尾。

「フェイント!? しまったッ!」


 恐竜図鑑で、読んだ。ティラノサウルスの目は、獲物との距離を正確にはかるため、立体視が可能だったと。

 発達した視覚と、二足歩行。まるで人類のように、知能が進化した可能性は——ある。

 もしかしてコイツ、ただの肉食狂の獣じゃーなく——かなり、賢い——?


 でももう、後の祭り。空中へ跳んじまったオレに、為すすべはない。

 体を丸め、両手で頭をガードし、最強の衝撃インパクトに備える。


 ムーンクロスの防御力の上限は知らねーが……、意識をトバされちまったら、終わりだ——



「————《大満月フルムーン・衝撃波インパクト》————!!!」



 ——ッッッド ッ ゴ オ オオオオオオオオォォォ————————ン!!!


 とてつもない衝撃をくらい、池の中まで吹き飛んだのは——恐竜王のほうだった。


「なんやールルナ。危ないトコやったなー♪」

 聞き覚えのある声に、オレが振り向くと——


「リ、リリオッ!?」


 その姿は——髪は、完全に金色で発光している。両目は、これも満月のように黄金色に輝く。細い三日月だった髪留めも、満月のように丸くなって金に発光。そして全身からも、黄金色の光のオーラがあふれ出している。



「『満月フルムーン・ティアーズ』——さっすが超高効率エナジーの塊やー、こーんなに効きよるとはなー♪ 元気びんびん! エナジー満タン! 『リリオ・ザ・ムーンテイカー』ココに復活ッ!!! あなたのお宝を、テイクしちゃうぞっ♪」



 ……何がびんびんなんだ?

 しかし、超巨大Tレックスを一撃で倒しちまうとは……。強い。強すぎる。

 これが、『リリオ・ザ・ムーンテイカー』本来の姿か。だったら——


「なんでテメーは最初っから助けねーんだよ!?」

「だってルルナ、ヤル気まんまんやったし。……うぷぷ、『人類代表』やって! 『類人猿代表』の間違いやないかうぐぐぐぐぎげ!?」

「ダレがゴリラだゴラァッ! 調教だッ!」

「タップタップ! ……ふぅ、首絞めは反則やで。でもこれで、ティラノサウルスとタイマン張ったって自慢できちゃうやろ!」

「う。そ、ソレは……できるかッ! 頭イカれたと思われるだろッ!」

「あーでもこんなん久しぶりやー♪ 今のびんびん状態なら、あの勝ち逃げ女にも勝てた……ん?」


 ——ガ ア ア アアアアアアアアアァァァァァ————————ッッッ!!!


 池の中で、怒りの咆哮とともに立ち上がる恐竜王。

 さすが地上最強生物。不死身か? 

 しかしダメージはかなりのようで、その足もとはふらついている。


「ち。しゃーないな。本気出してトドメや——《大満月フルムーン・衝撃波インパクト》——最大出力フルブーストッ!!!」


 ——ピイイイイイイイイイィィィ——————ンッ!

 見えないほどの速さでサインコードを切りながら、天空へと突き出されたムーンテイカーの両手の平に——超特大、直径十メートルほどの黄金に輝く光の玉が出現する。

「デカすぎだろッ!? ハラん中のウサギごと殺す気か!? っつーかオマエ、動物は攻撃できねーんじゃなかったのかッ?」

「肉食獣は、適応除外や」

 ……犬だって一応肉食だろ。


「あ!? わかったで! 見せ場をとられてすねとんのやろ? 困ったご先祖やのう。まー、ウチらはチーム——『ムーンテイカーズ』やもんな。……そや! ウチ、アレやりたい! アレ!」


 光の玉を消したリリオは、オレの後ろで震えていた、水色ポニーテールのウサ耳警官のほうをチラ見する。

「アレって……、まさか!?」

「ほな、ウチから行くで! 合わせろやルルナ! と——————うッ!」

 超高速でサインコードを形成しながら天高く跳び、華麗な月面宙返ムーンサルトりをかますムーンテイカー。


「ち! しょ、しょーがねーなぁ! とうッ!」

 オレも、リリオにクロスするように月面宙返ムーンサルトり。実はけっこーノリノリってわけじゃーないからなっ!

 そして、がしっとお互いの両手の平と、ムダにデカい胸どうしを組み合わせ——空中でくるくるとドリルのように回転しだす。


「あ! あれは、ハーレクイーンさまとレッキスのっ!?」


 驚愕の表情で叫ぶウサ耳警官。

「えー感じやルルナ♪ ——行くで! 新・必・殺!」

 技の名は、だいたい想像がつく。コイツはなんでも盗んじまうからな。そう——



「「——《双月デュアルムーン螺旋脚ドライヴァー》————————ッッッ!!!」」



 《マキナ》の力で爆発的に回転を加速。


 先祖のオレと子孫のリリオは——まるでDNAの立体構造のように螺旋状にきりもみしながら、よろよろとこちらへ歩いて来ていたティラノサウルス・レックスへむけて、超長距離回転ドロップキックをブチかました。


 ——グ ゴ ア ア アアアッッッ!?


 みぞおち? あたりにその直撃を喰らった白亜紀の王は、苦しそうな咆哮をあげて、池の中へ仰向けに倒れこむ。

 その拍子に——ぽーんと口から何かを吐き出した。

「なんか出よったで」

 光の翼を出現させて宙に浮いたリリオは、ソレを無造作に岸のほうへと蹴り飛ばす。


「ハ、ハーレクイーンさまっっっ!?」


 両手を広げたレッキスが、大事そうにピンク色の光の繭をキャッチすると、

「う……」

 わずかにうめく、中のピンク髪のウサ耳警察官。直後に、光の繭も消失した。

 長いウサ耳はぐったりとしていて意識はないが、どうやら無事のようだ。

 一方オレは、倒れた暴君の胸あたりに着地すると、間違っても池に落ちないよう気をつけながら、横向きになった頭の上までたどり着き——


「よーし、よし、いー子だ……。今からオマエは、オレの下僕だ——」


 ——グルルルル……


 左手の平で、恐竜王を怪獣、いや懐柔した。……効いちまった……。

「よしリリオ、いーぞ! もとの時代へ帰してやれ! ……間違っても、未来のペットショップに売り飛ばしたりすんなよ?」

「い? いややな〜、そんなわけあるかいな〜」

 ぎくりとした表情で、なぜかサインコードを途中から切り直すムーンテイカー。

 しかし、満月びんびんモードのリリオが切るサインコードは、速すぎて見えない。通常の三倍増しか? そして、あっという間に——



「完成したで。よい子はお家へ帰る時間やな。——《時間タイム跳躍ジャンプ》——」


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