表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
28/42

  テイク7  千年の星姫(2)

 

 星伽とリリオ。究極の美少女対決——いや。


 無二の親友と、子孫の対決。

 オレはいったい、どっちを応援したらいーんだ?

 これ以上、争わずにすむ方法はねーのか?


「止めんなやルルナ! 行くでッ! ——『湖月こげつ』×式!」


 両手に出現させた黄金色にかがやく大剣から、上下二対の光の斬撃が打ちはなたれる。

 確かあれは、湖面に映った月のように虚像の斬撃で、実体は反対側にあるというトリックだ。

 でも、ソレがふたつというコトは——

「ひねりましたね。でも——愚かです」

 冷静に、そのまま上下ふたつの斬撃を、双方の薙刀で迎えうつ星伽。

 そーだろう。結局、それぞれの実体が反対側にあったら——


「もーチョイひねるわ。——『かい』!」


 不敵に笑うムーンテイカーの声と、剣をにぎったまま動かした指ともに、ぎゅるんッ! と標的の直前で左右に九十度回転する斬撃。

「!」

 微妙に表情をこわばらせた星伽は——反応できない!

「星伽ッ!」

 思わず叫ぶオレ。そして——


 ——ぴき——————ん…………っ。


「!?」

 そのまま『上下』の光の薙刀で受け止められた斬撃は、塵のように霧散する。

「同じ流派のわたくしを、逆手にとったおつもりでしょうが。実体を反対側ではなく、もともと九十度ずらしていたのでしょう? わたくしも同じ手はかつて、——っ!?」


「おおおりゃあああああぁぁッ!!!」


 余裕の表情で解説を始めた星伽の胸めがけ、すでに間合いに踏み込んでいたムーンテイカーの突きが襲いかかる。

 危うしオレのヨメ! ——だが、

「見えてますよ?」

 ぐりんと、下にあった薙刀の柄を高速回転させ、その突きを《三日月クレッセントバスター》ごと弾き飛ばして消滅させる星伽。


「もーいっちょやッ!」

 残った左手の《三日月クレッセントバスター》で、今度は顔面を突きにかかるリリオ。

「同じです!」

 上にある光の薙刀の柄で、迎撃体勢をとる星伽だが——


「——っ!? 曲がっ」

「『回』やあッ!」


 三日月型にかがやく剣が、ぐるっと九十度ほど回転し、突きの軌道がわずかに変わる。

 黄金のかがやきが、白い光の脇をすり抜ける。

 ——マズいッ! 星伽が——死んじまうッ!


「星伽ああああああぁぁぁ——————ッ!」


 しかし。十条家次期当主である少女は、驚異的反応速度で上体を横へとそらす。

 かわした!? のか……?

 即座に、白い薙刀の柄でムーンテイカーの伸びた左手を打つ。

「ぐあッ!?」

 痛みに顔をしかめるリリオ。その手の《三日月クレッセントバスター》も消失。しかし——


「まだ、やああぁ————ッ!!!」


 突きの勢いのまま、星伽の顔面めがけ、頭突きを敢行する『ザ・ムーンテイカー』。

 意表をついた、原始的攻撃。これは決まった——だが。

 信じられないコトが、起きた。


「なッ!? す、透け——ぐはぁッ!」


 リリオの頭突きが、星伽を透過した。

 間髪いれず、反撃の薙刀の柄ふたつがみぞおちへとめり込み、後方へとよろめくムーンテイカー。

「お返しです——『湖月こげつ』」

 至近距離ではなたれる白い斬撃。

「リリオッ!」

「く……《究極アルティメット障壁スクリーン》……ッ」

 もうろうとしながらも、すでに防御用の《マキナ》のサインコードを切っていたリリオ。しかしその障壁は未完成のまま、『湖月こげつ』の直撃をくらう。

 再び壁際まで吹っ飛ばされる、銀髪の少女。

 ……ん? 銀、髪?


「とどめですよ——《白氷ホワイトグレイシャー》」


「!?」

 背後から聞こえる鈴の音のような声。

 使ったのか? 星伽が——《マキナ》を!

 これまでは、如月さんのような『天条双月流』の技だと言えたかもしれないが——

 氷河のような白い氷の粒が、リリオの——直前までいた場所に、炸裂した。


 間一髪。倒れたムーンテイカーを抱いて、ソレをかわしたオレ。

「ルル、ナ……」

「リリオ! オマエ、髪がほとんど銀色になっちまってるじゃねーか! ソレに髪留めも、やせ細った三日月に……」


「どうやら、『ヴァイタル・エナジー』が残り少ないようですね」


「——ッ!」

 星伽の指摘。

 その言葉と意味を知り、《マキナ》を自在に操る。星伽もやはり、未来から来たのか?

 ダレかに教わっただけ、とは考えにくい。……ソレと、

「すまねえ、リリオ。あのクッキーは——オマエの最後の回復アイテムだったんだな。全部、ケルベロスにやっちまったな」

「……ははは。そやな。酷い仕打ちやで……」

 オレの腕に抱かれ、力なく笑うムーンテイカー。だが、


「こーなったら……ルルナと『えっちぃコト』して、回復するしかないで」


「…………………………は?」

 こここコイツは、この非常時に、なな何をフザけたコトをっ!

「アホか! そんなコトしてる間に攻撃されたら終わりだろ! っつーか、星伽の前でそんなんできるかあッ! そもそも、オマエとはしねえ、ゼッタイにしねえッ!」

 激怒するオレ。当然だ! オレはそんなコト人前でするような、ふしだらな女じゃねえ!


 ●ロ本は隠し持ってるけどな!


「わははははは! なにまっ赤になってんねん! 照れんでもえーで? ウチら、もうお互いの全てを知りつくした仲……」

 両手の指を、わきわきとうごめかせるリリオ。その魔手が、オレのムダにデカい胸へと迫る。

 あきれ顔で、目をそらしている星伽。

 両腕を開き、垂直にリリオを地面へ落とすオレ。


「あいだぁッ!?」

「せ、星伽。オレはそんな浮気、もとい、変態行為はしてねーから、な?」

「あの子——『星影ほしかげ』は、どこへ送ったのですか?」

 うわ。見事にスルーされた。ソレはソレでちょっと悲しい……。


「あのわんわん怪獣か? やっぱオマエがご主人さまやったんやな」

 こくりとうなずく星伽。

「——うわははははは! 丁重に、知り合いの裏ペットショップへ売り飛ばしてやったで! 高ーく売れそうやな! うわははははははははははのは——————————ッ!」

 お尻をさすりながら、高笑いする『ザ・ムーンテイカー』。最悪だ!

「コラァ——ッ!? 挑発するようなコト言ってんじゃーねえええぇ——ッ!」


「——《雷電ライトニンガボルタ》」


 ドッガアアァ——ン! 

 炸裂する、星伽の怒りの電撃。

 かろうじてかわす、オレとリリオ。

「ここ、このバカ! 怒らせてどーすんだよ! オマエもう限界だろ? 謝っちまえ! ソレで話し合いで……」

 するとリリオは、左手の人差し指をぴんと立て、


「えーかルルナ。『ごめん』ですむならドロボーはいらんで。そんなんでお宝テイクできよるなら、時空トレジャーハンターなんて存在せーへん。この塔が、お宝守護のために建てられたんやったら——少なくとも数百年、ダレも奪えへんかったちゅーコトや」

「う……。まー、そりゃそーだけどよ」

 できるなら、オレはオマエらふたりに戦ってほしくねえ。すると、


「ソレにウチには——ゼッタイに、引けへん理由があるんやああああぁぁッ!!! ——《三日月クレッセントバスター》!」


 再びその両手に出現する、金色にかがやく光の剣。

「おい! ムチャすんな!」

「ダイジョーッブや。ルルナのお姫さまだっこで、ちっと回復したで」

「なに!? そ、ソレは『えっちぃコト』に含まれるのか? 奥が深いな、大人の世界は……」

「だって……。ルルナの胸とウチの胸、くっついとったし♪」

「浅ッ!」

「心配すんなや——これでケリやッ!」

 サインコードを切りながら、駆け出すムーンテイカー。


「や、やめ……!」

「いいでしょう。最後の一撃、受けて立ちましょう!」

 仁王立ちのままサインコードを形成し、迎えうつ宝玉の最終守護者。

 間合いが詰まる。互いの双腕が、円月を描く。

 最強の両者、必殺の《マキナ》は——


「——《拾弐じゅうに神月しんげつ》!!!」

「——《拾弐じゅうに神月しんげつ》!!!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ