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ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
22/42

  テイク5  雪のウサギ(3)

 背中に四枚の翼を展開させ、宙に浮いているレッキス。素早くサインコードを切り、その広げた両手の中に、巨大な電子網を構成して—— 

 ——がっしり。


「な!? 何するぴょん? エ、エリザヴェータ? ひいいえええぇぇ————っっ!!!」


 ばっしんばっしんばっしん……と、その小さな足首を子マンモスのぶっとい鼻につかまれて、雪原へと叩き付けられる哀れな子ウサギ。

 あ。ウサ耳がくたっとなってきた。気絶したみたいだ。

「ストップ、エリザヴェータ! 調教終了だ。よくやったな、よしよし」

『再び』エリザヴェータの頭をなでなでするオレ。


 そう。オレは雪煙にまぎれて、倒れた子マンモスの頭をすでになでていた。つまり——エリザヴェータはその時点から、オレの下僕。『オレの秘密その五』参照だ。

 

 どんな動物からも好かれるタチだが、まさか三十万年前の絶滅動物を懐柔するコトになるとはなぁ。まあ、レッキスには悪いコトしたが。

 ……さて。リリオは無事か?


「ふっふっふっ! そろそろ年貢の納めどきのようだねっ? 『ザ・ムーンテイカー』っ!」

「フザけんなや。お子さまウサギに納めるモンは、もち米ひと粒さえもあらへんで!」


「——《雷電ライトニンガランサー》っ!」

「——《究極(アルティメット障壁スクリーン)》ッ!」


 親マンモスに乗ったハーレクイーンが突き下ろした、稲妻の長槍。ソレを大きな光の繭で受けるムーンテイカー。

 ——バリバリバリッッ!

 受けきった……かに見えたが、ズブズブとその槍の先が、光の繭にくい込んでいく。

 ハーレクイーンがエカチェリーナに乗ったまま離れないので、意外とお人よしなリリオは派手に攻撃できず、防戦一方になっているようだ。

 しかも上空はブリザードによる暴風で、飛んで逃げるコトも難しいのかも。

「ちッ! オイ、エリザヴェータ! いー考えがある。オマエの鼻で、一気にオレを——」


「はーはっはっはっ! 刺さっちゃうよっ! ……むっ!?」

「喰・ら・い・やがれえぇぇぇ——————————ッッ!」

「甘————いっ! 《雷電ライトニンガブレーダ》っ!」


 ——ばっさり。


「ぎゃ————ッ!?」

「このハーレクイーンさまに不意打ちなんてっ、三十万年早……って! しまった————っっ!? しびれさせるだけのつもりが、つ、つい真っぷたつにっ!?」

 ウサ耳少女(大)が、とっさに空いていたもう片方の手に出現させた、稲妻の長剣。哀れ、ソレに一刀両断された、オレの身体——

「……あれっ?」


 ——と、同じくらいの、大きな雪の玉。


「ひっかかったなこのアホウサギ! 改めて喰らいやがれッ! うおりゃあああああぁぁぁぁぁ————————————————————ッッッ!!!」

「ぷぎゃ————んっ!?」

 炸裂するオレの超長距離ドロップキック。


 そんなコトもあろーかと、エリザヴェータにはその長い鼻で、最初はデカい雪玉をハーレクイーンめがけて投げてもらった。幸いこちらは風上で、狙いはブレず、失速しない。

 そして続けてブン投げてもらったオレのドロップキックが、動揺したウサ耳警官(大)に突き刺さったというワケだ。


 オレの秘密その十。オレだって意外と頭脳派なんだからなッ! ……ダレだ今まで脳筋だろーつってたヤツは?


 イバるほどの頭脳プレイかと言われればソレまでだが、オレの蹴りを喰らったハーレクイーンは、長いウサ耳をなびかせながら、エカチェリーナの上からへろへろと落ちて行く。

 ——ぼすっ。

 雪原にウサギの形でめり込む、白地に黒ブチコスチュームの、ピンクツインテール少女。


「い、痛あああああいっ!? ゆ、許せないわこのエロゴリラっ! このハーレクイーンさまが、たっぷりとお仕置きをしてあげるわっ! 悦びなさいっ!」


「ダレがエロゴリラだ!?」

 エカチェリーナの背中に着地したオレは、言われのない中傷に抗議する。

 オレは、ちょ、ちょっとエ●本を隠し持ってるくらいの……、健全な普通の女の子だ。ふ、普通の女の子だ!


「お仕置きされるのは、オマエのほうや。——《半月ハーフムーンブレーダ》」


 雪原に立ち上がるハーレクイーンに歩み寄った、『ザ・ムーンテイカー』。その左手には——


 ゆうに八メートルを超える、黄金色に輝く半月型の光の刀が握られていた。


 『ザ・ムーン』と名付けられた——もとはオレの首にかかっているペンダントと同じ三日月型だった、リリオの髪留め。今の形は、ヴァイタル・エナジーの残量を示しているようで、ちょーど半月。

 もしかして、リリオの《オリジナル・マキナ》を行使して現れる剣の形も、残りのヴァイタル・エナジー量に比例してんのか? ソレにしても、デカい。


「ひ、ひえ————んっ!? 《究極アルティメット障壁スクリーン》——最大出力フルブーストっ!」


「そりゃあああぁぁッ!」

 ハーレクイーンの、稲妻で構成された防御壁。ソレごと叩き切るかのような勢いで、半月状の光の刀が振り下ろされる。

 ——ヴヴヴヴヴンッッ!!!

「や……、やったね止めたよっ! お次はこっちのば——」


 ばっしーん! という痛々しい衝撃音と共に、派手にブッ飛ぶピンク毛のウサ耳少女。


「エ、エカチェリーナっ!? な、何を——ぴえっ、ぴえっ!」

 巨大な鼻での背後からの一撃に続き、ビビンタ、ビビンタと往復ビンタを喰らう、かわいそうなハーレクイーン。

 コイツらのウサギコスチュームも、ムーンクロスと同じく強化スーツなのだろう。生身だったら一撃で大変なコトになるマンモスの攻撃を、涙目で数発は耐え続けた。しかし、だんだん両耳がぐったりとして……、とうとう落ちたようだ。


「ストップだエカチェリーナ! よしよし。……しかし、コイツら相手の調教は、なんか罪悪感あるなぁ」

 オレがエカチェリーナの上で、その頭を『再び』なでながらそうつぶやくと、半月の刀を消したリリオが、

「何ゆーとんねん? ウチら最初っから悪やで。ドロぼ……いやトレジャーハンターやしな」

「中途半端に開き直ってんじゃねーよ。っと」


 ジャンプして、リリオの側に着地するオレ。

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