表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ザ・ムーンテイカー!  作者: ひろつー。
21/42

  テイク5  雪のウサギ(2)

「何で……うわッ!?」


 ばっしーん! と、親(?)マンモスの毛むくじゃらの鼻が、オレめがけて振り落とされた。何とかジャンプして避けたが……、オレのいた場所は、大きく雪がえぐられている。し、死んじゃうだろ!

「……あちゃー、現れおったで。『お子さまウサちゃんズ☆』」

「『お子さま』ってゆーな——っ! エカチェリーナ、やっておしまいっ!」


 パオーンと返事したエカチェリーナ。つーかこの親マンモス、名前カワイイな! 

 そして今度はリリオめがけて牙を向け突進する。

「そーか。ウチがお子さまたちを跳ばしたときにできた『クロノス・ルート』に沿って、ウチらも同じ三十万年前へ強制跳躍させられたワケやな」

「? どーゆーコトだ? ってリリオ、アブねえッ!」

 ——ひらり。

 華麗に月面宙返ムーンサルトりをキメて、エカチェリーナの突進をかわすムーンテイカー。


「つまりやな。まっさらな新雪の上より、ダレかが歩いた跡のほうが通りやすいやろ? ランダムで時間跳躍を行った場合、最も近くて新しい時空間中の道——『クロノス・ルート』に引き寄せられてまう場合が多いんや」


「そーゆーことねっ! おかげでそっちの時代にまた跳躍する手間が省けたわっ! 飛んで火に入る——いや、雪に入る冬の虫ねっ!」

「ゴロ悪ッ! しかも冬は虫おらへんし。あいかわらずセンスあらへんお子さまやな」

 オマエは人のコト言えるのか?

「うるちゃいうるちゃいっ! エカチェリーナっ!」

 今度は長い鼻での横薙ぎの攻撃。再びジャンプしてかわすムーンテイカーに対し、


「かかったねっ♪ ——《雷電ライトニンガボルタ》っ!」


 素早くサインコードを切ったハーレクイーンの両手から、数発の稲妻の弾が打ち出される。


「ぬるいで。——《エアリアルの◯ウインガ》……がッ!?」


 八枚の光の翼を展開し、飛んで稲妻の弾をかわしたムーンテイカー。しかしその直後——横方向から上方へと軌道が変化したマンモスの鼻が、その身体を直撃した。

「リリオッ!?」

「ぐ……うッ!?」

 弾き飛ばされた上空で、なんとか姿勢を立て直そうとするが、吹きすさぶブリザードにあおられて、へろへろと遠くに不時着するリリオ。

「ナイスっ、エカチェリーナっ! よしよしっ♪」

 マンモスの上にまたがったまま、その背中をなでるハーレクイーン。



「ふっふっふっ! 『動物を傷つけられない』って弱点はそのまんまだねっ? 『ザ・ムーンテイカー』っ!」



「てッ、テメー、汚ねえ……ッ! 動物を盾にしやがって!」

 白いのに黒い! さすがは敵の幹部だ。でも、ソレでいーのか月の警察官?

「ふふんっ! バナナをあげたらなついてくれたんだからっ、しょーがないでしょっ? バナナ最高っ♪」


 うん。ソレは賛成だ。バナナ最高。食用な。


 すると、長いウサ耳をぴこぴこと動かしていたハーレクイーンが、

「『鋼鉄の瑠琉南』さんっ! アナタはあとでたっぷりとカワイがってあげるからっ! それっ、エカチェリーナっ! ムーンテイカーに一気にとどめを刺すよっ!」

「待ちやがれ……ん!?」


 ——ばしゅうぅぅっ!


 本能的に危険を察知したオレが飛び退いたあとに、電気で構成されたかのような光る網が覆い被さった。

 続いて子マンモスのほうが、ものすごい勢いで突進して来る。冷静なオレは横に跳んでかわすが——

「うがッ!?」

 身軽に方向転換した子マンモスに吹っ飛ばされ、ごろごろと雪の上を転がる。

 マジか? イノシシと違って、意外と小回りが効くのか? 子供だから牙が短くて助かったが、それでもムーンクロスなしの生身だったら、かなりの重傷間違いなしだ。

 しかしオレは素早く起き上がり、


 ——ばすばすばすっ!

 バック宙二連発で、飛んで来た稲妻の弾をかわす。


「……ぺッ。やるな子象こぞう!」


 口の中を切ったようで、血を吐き捨てるオレ。あ、子マンモスと子ウサギか。

「これ以上『ザ・ムーンテイカー』に加担すると、あなたはもう民間人扱いじゃなく、共犯者になるぴょんっ! レッキスがお相手するから、おとなしく逮捕されて記憶を消されるっぴょん!」

 そんな、子マンモスの背に乗ったウサ耳警察官(小)の脅しに対し、オレは——



「——フザけんな。オマエら調教してやんよ! かかって来い!」



 もちろん純教育的な意味な。オレの方針は超スパルタだ。ゆとりゼロ教育。

右拳を前に出し、左拳を引いて、雪上でファイティングポーズをとるオレ。

 遠くのほうでは、何とか体勢を持ち直したリリオが、ハーレクイーン&エカチェリーナの攻撃を防いでいるのが見える。


「ちょ、調教っ!? け、けけけ結構ですぴょんっ! エリザヴェータ、攻撃だぴょん!」

 子マンモスの名はエリザヴェータ。

 パオンと返事したエリザヴェータの長い鼻が、うなりをあげて頭上からオレに襲いかかる。だが、


 ——がしいいいいぃぃぃっっ!


 オレは両手で、その太い鼻を掴んだ。

「なっ!? す、素手だぴょん!?」

 子マンモスの上で、驚愕の表情を浮かべるレッキス。


 オレの秘密その九。オレは素手で軽くリンゴを握り潰せる。


 ダレだ今、ゴリラつったの!? 今までそのセリフを吐いたヤツは、全員もれなく泣かして土下座させてきた。……あ、そーいやハーレクイーンにも言われたなぁ。あとで泣かす。 

 まあ、今はムーンクロスによって、力が何倍に増幅されてるかは知らねーが。そして、


「うおおりゃあああぁぁッッ!」

 女の子としてはちょっぴりたくましすぎる咆哮と共に、子マンモスを背負い投げのようにブン投げるオレ。

「うひゃあああぁぁっ!?」

 上に乗っていたレッキスも、一緒になってブッ飛んでいく。そして、針葉樹が埋もれているかのような、小高い雪の丘に派手に激突する。


 もうもうと上がる雪煙。

 素手でマンモス倒しちまった。マンモスつえーなオレ。

 しかし。徐々に視界が晴れると、そこには——


「もう怒ったぴょん……。捕獲して逆調教だぴょんっ! 《雷電ライトニンガネッタ》——最大出力!」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ