獣となりて
あらすじの通り初めて短編書きました。
いままでほのぼのものばっかり投稿してましたが、この短編はほのぼの要素欠片も無いです。
俺は依頼を受けとある森に魔物退治に来ていた。
魔物を倒しつつ森の奥に進む。
すると森の奥で小屋を見つけた。
何故こんな魔物の多い森の中に小屋なんてと、怪しみながらも好奇心から小屋に近づいたその時、後頭部に衝撃を受けた。
……目が覚めた。
「グルルルル」
痛いと声を出したはずなのに聞こえたのは魔物の声。
周りを見ようとして違和感に気付き自分の体を見るとところどころ血のような赤黒い毛先の青黒い毛に覆われた犬型の魔物の身体になっていた。
どうしてこんな事にと慌てていると突如話しかけられた。
「おやおや、もう目が覚めましたか」
声の方に向くと魔術師の格好をした男がいた。
直感でこいつが俺に何かしたと思った。
怒ると自然に口から魔物の威嚇声が出てくる。
「おおっと、念話で話せるようにするのを忘れていました。……はい、これで会話できますよ」
頭に知らない文字が流れ込んできたと思ったら念話での話し方が分かった。
なんだか知らんが思いっきり怒りを込める。
『何故俺の体を魔物の体に変えた!』
「そうですね……貴方がとても興味深い人だったからと言っておきましょう」
興味深い?そんな理由で俺は魔物にされたのか!
「ん?僕を殺す気ですか?後悔の無い様に言っておきますが、僕を殺したら二度と人間に戻れませんよ」
『何だと!?』
「だって、変身魔法なんて聞いたこと無いでしょう?とても変わった魔術で使い手なんて僕以外今はもういないと思いますよ」
目一杯の殺意を抱えながら殺せない。
『何が目的だ。どうすれば俺を元に戻す』
「んー、そうですねー。僕と旅でもしませんか?」
本当に何がしたいんだこいつは……
いやー、ここにいるのも飽きたしそろそろ旅にでようと思っていたんですよ。と奴は言っている。
「あ、ちなみに念話は僕としかできません。他の人と話すのは無理ですので、他の魔術師に魔法を解いてもらうのは無理だと思います。後、僕は一人でも旅に出るつもりなので僕が準備を整えるまでについて来るか決めてくださいね」
そう言って男は別の部屋に行ってしまった。
元に戻るためにはついて行くしか選択肢が無いじゃないか……
ふつふつと湧き出る怒りを抑えて奴を待った。
それから俺は奴と旅に出た。
「あ、魔物なんで生肉も食べられます。好きに狩って来て下さい」
食料は自分で調達。
初めて生肉を食った。とても美味かった。
その一方で、人として何かを失った気がした。
数ヵ月後。
「いやー、結構強いですね。もう体に慣れたんですか?」
『……慣れないと死ぬ』
「そうですか」
他の人と喋れず、話し掛けて来る奴と仕方なく話す事が少し増えた。
数日後。
何故か一部の魔物が気になるようになってきた。
魔物は種類が同じでも二種類の匂いがあるのだ。どうなっているかは分からない。
奴に聞いたら。
「それは……ふむふむ。なるほど……大丈夫ですよ。すぐに分かります」
何だ?少し嫌な感じがする。
数日後。
前に気になっていた匂いが分かった。
性別だ。
魔物は雄と雌で匂いが違うのだ。
これは人もそうなのだが……
最近人の女に何も感じなくなってきた。
その代わり魔物の雌が気になるようになってきた。
これは、急いで戻らないとやばいのではと焦燥感が募る。
「大丈夫、大丈夫」
そんな事を奴は言う。
何が大丈夫なのか。
4~5年後。
最近、食べる肉とかの事しか考えられなくなってきた。
魔物に近い思考になっているんだろうか?
「最近、口数減っていませんか?」
『減ッテナイ』
「そうですか」
数ヵ月後。
最近の悩みは好みの雌が見つからない事。
人間の女には完全に興味が失せた。
それと自分の体は大きくなり旅をすると目立つようにもなってきた。
今じゃ人を何人か乗せられるほどだ。
「だいぶ大きくなりましたね。これはどこか貴方の棲みたい所を見つけないといけませんね」
『ソウダナ』
数ヵ月後。
僕たちはその日、竜が棲むという山にやってきました。
そこで真っ白な雌の竜と出会ったのです。
長年旅を続けてもはや相棒となっていた魔物がその竜を見た途端固まりました。
そして相棒は動き出したと思ったら最大音量で遠吠えをしたのです。
それはいつもとは違う遠吠えで、どこまでも響くかのような美しくも猛々しいものでした。
竜はそれに鳴き声で答えました。
相棒は走り出し、竜の所に行ってしまいました。
長年の付き合いからああ、なるほどと理解する。
二匹は互いに擦り寄りとてもいい雰囲気。
まあ、長年付き添った相棒との別れは寂しいですが邪魔者は退散するとしましょう。
「いままでありがとうございました。貴方はとても興味深い研究対象であり相棒でしたよ」
旅のきっかけは彼の行動や少しずつ変わっていく心の観察をするためだったけれど、楽しい旅でしたよ。
きっと最後の方は彼も薄々気付いていたのでしょう。
去って行く僕に気付いて感謝の気持ちを伝える遠吠えが聞こえます。
僕は確かに変身魔法を使えますが、彼には使っていないと。
僕はただ、彼の魔法を解いただけだと。
彼は人間になる魔法をかけられていた魔物だったのですから。
どこかで見た事ある感じとかテンプレとか思われるかも?
今日の思いつきで書きました。
感想とかくれると嬉しいです。