親友と言う存在を~樹~
君と長年歩んだね。
ずっと一緒だった。
俺達の友情は、もう普通の「友情」を超えた。
いつのまにか、一生大切にできるものとなっていた。
最近あいつの目は梨音を見てる、としか思えなかった。
ちょっとは気があったんだろう。
お互い嫌っていなかったと言う事は心から、本当に分かってた。
でも梨音にやきもちを焼く事が多かった。
「樹っ」
大雅に名を呼ばれるのがとにかく好きだった。
「何?」
「今日俺のクラス、テストだったよ」
ああ、そう言えば、前日そんな事を言ってたな。
「どうだったの?」
「俺には簡単すぎたよ」
笑いながら言う大雅からの笑みが俺にもうつった。
それから俺達はグラウンドへと向かった。
「今日一緒に帰れる?」
大雅に聞くと、
「いいよ。梨音は亜李空ん家行くみたいだから。」
また梨音かよ。
俺はどんな存在なんだ。
どんどん分からなくなっていく。
あの二人を見てると、「ああ、死にたい」と思う時もあった。
俺なんかいなきゃいい、と。
そこに亜李空が現れた。
まあ、俺の恩人って言ってもいいのかな。
「死にたい・・・」
教室の窓から見えた体育をしている大雅と梨音のクラスを見ながらつぶやいた。
「どうしたの?」
最初は亜李空なんかに分かるもんか、と思い、
「いや、なんでもない」
と会話を終わらせた。
「やっぱり、何か考えてる・・・」
亜李空は俺の心が見えたのだろうか。
「さっきから、ずっとぼーっとしてるよ」
「そう?」
「・・・うん」
俺の顔を覗き込んだ。
好きでもないのに、俺の体の体温が熱くなるのを感じた。
俺は決心して全てを話した。
亜李空に。
口が軽いとは聞いた事があった。
でも彼女の目を見てると、もうどうでもよく思えた。
知られてもいい、と本気でそう思った。
「今日は視力検査です」
ああ、そう言えばそうだ。昨日も言われたな。
最近視力落ちてるからな・・・
やっぱり。
視力を測れば、結果は思った通り。
両目、どっちも悪かった。
寝る前に『切れぬ虹』でも読んでるのが悪いんだなぁ、なんて思いながら、眼鏡の横にチェックがされてる紙を受け取った。
家に持って帰ると、母と父に笑われたのを覚えてる。
「週末にでも眼鏡を作りに行こう。
・・・樹っ、両目とも・・・」
と言って笑う父に、俺は苦笑いするしかなかった。
眼科から出ると、空もうは暗くなっていた。
雲と雲の隙間から満月が顔を出していた。
ああ、そう言えば、カレンダーに書いてあったけな。
目が悪いせいか、満月が何個も何個も見えた。目をこすっても同じだった。
かなり悪いな。と思いながらいたが、その後にすぐ気付いた。
目が悪いせいじゃない。
・・・これは・・・涙だ。