愛をあなたに~梨音~
ああ、なぜだろう。
いつからか私は恋に落ちていた。
恋と言うハートであふれているものに落ちてしまった。
私の親友、亜李空はもちろん、彼も私の支えであった。
小学一年の時に私は両親を亡くし、妹と共に暗い日々を送った。だが、すぐに祖母と祖父が引き取ってくれた。そんな私を勇気づけれくれた、光をくれたのは大雅だった。
「なんで?」
彼の口癖はこれだった。
何でも知ろうとする。そんな彼が好きだった。
小学生の時、六年間ずっと一緒のクラスだったのは奇跡だと、運命だと、神様が本気でルーレットを回してくれた、と心から感謝した。でもなぜ神様は大雅と樹を離れさせたのだろうか。
「『切れぬ虹』、気に入ってるよ!止まらなくてずっと読んでる!」
何か話しかける目的を作りたくて話しかけた。
ただそれだけ。
小六だった時は「愛」の感情はまだ持っていなかった。
けれども嫌いではなかった。
「樹くんと交代したいな」
口を開くと大雅は私の目をじっと見た。
「なんで」
「クラス・・・不公平だよね、だって亜李空と樹は一緒のクラスだよ?亜李空は私の親友、樹くんは大雅の親友なのにさ」
「なんで、そう思う?」
夕日で彼の顔が見えなかった。
「俺は梨音と一緒のクラスでよかった、って思ってるよ」
「うそつき」
「なんでうそつかなきゃなんねぇんだよ。」
うん、確かに。
彼は私をいつも起き上がらせた。
「『切れぬ虹』、お前今どこ?」
こう言う会話はまだ小学生レベルかな?
「今ちょうど55ページいったとこ。大雅は?」
「俺67ぺ―ジ。早く追いつけよ」
え・・・?
なんだか嬉しかった。
それを言った後彼はすぐ教室を出て、樹と校庭へ走った。
「梨音っ」
「亜李空!どうしたの?」
「花に占ってもらおうよ」
「え?」
亜李空は私の手を強く握り、中庭まで引っ張った。
ブチっ
「ちょっと亜李空!そんな事したら怒られちゃうよ。」
彼女は力強く花を引っ張った。
今思えば何にそんな急いでいたんだろうか。
大雅の気持ちを知るのに何をそんなに急いでいたのだろうか。
「好き・・・嫌い・・・好き・・・嫌い・・・
好き」
「出た。好きだって。よかったじゃん」
「こんなのうそに決まってるよ・・・占いとか、お花に占ってもらっても・・・」
「卒業までに告っちゃえば?」
何を言い出すかと思えばすぐこう言う事だ。
私は下を向き、軽く首を振った。
その時の自分は自信がなかった。
はっきり言って、今思えば後悔している。
昼休みが終わると、思いもしなかった事が起きた。
「昼休みに中庭で誰かが花を摘んだ。誰だ
水をあげに行った先生が見つけたそうだ。・・・誰だ。」
まずいっ
もっと奥の花を摘めばよかった。
下を向き、言おうか言わぬか迷っている私だったが、大雅が手を挙げた。
「僕がやりました。」
「優秀な生徒がそんな事やるはずがない。」
はっ?
今あなたはそう言いたいに違いありません。
でもこれが事実です。
「・・・先生、加藤先生。優秀な生徒だからって荒らさないって訳じゃないです。・・・瑠璃垣さんは目撃者です。」
えっ。
「そうなのか、瑠璃垣。」
えっ、えっ?
大雅の方を向くと、「はい、と言え」と言われているような気がした。
「・・・・・・・はい」
「お前って奴は・・・校長室に行け。」
校長室で大雅は何を言われたか分からない。
でも後から聞いた話では、校長は全てを信じてくれたと、私をかばってくれていると言う事を信じてくれたと言った。
また助けられた。
大雅にまた助けられた。
帰り道、亜李空に謝られた。
「ごめん、ホントにごめん」
すぐに昼休み後に起きた事を話すとまた「好きだ」とかそう言う話になった。
でも一番謝りたいのは私の方。
大雅に会って謝りたかった。
だからその日、一人で彼の家に訪れた。
「ごめん。」
「なんで謝るの、いいよ別に」
「ごめんっ。でも・・・ありがとう」
彼はすぐに許してくれた。
けど本当にごめんなさい・・・
小学生の時はこんな馬鹿げた事を何も思わず、先を考えず、すぐにやってしまう。
そんな自分が嫌いだった。