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人生ゲーム  作者: NAOX
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初めて君を~大雅~

今、私達が歩んでいる世界は、人生のゲームである。

プレイヤーは神様だ。

私達は彼の手によって動かされる。

ルーレットを回せば、あの人にこの人に別々の試練を与える。

進むのは自由である。スピードも下げていい。

だけど、彼は立ち止まる事だけは絶対に許さない。

そんな人生だけど、きっときっといつかはゴールが来るであろう。この短い人生を楽しまないで、どうするんだ。親友や、恋人や、家族があなたの、私の近くに・・・


幼馴染ってすごいって改めて思った。

あいつと最近はもう会っていない。


でも出会いは出会い。


全ては幼稚園の頃だった。


「ねえ、大雅たいがくん」

名前を呼ばれ、俺は振り向いた。

「なに?」

「一緒に遊ぼうよ。」

どっちかと言ったら俺は影の薄い存在であった。それに俺の名前を知っている人は先生や本当に仲が良かったいつきくらいだ。

その日はたまたま樹が風邪を引いたとの事で幼稚園には来なかった。


ったく、一人の時間を過ごしてたってのにこいつは・・・瑠璃垣るりがき梨音りおんは・・・


それよりなぜだ。なぜ俺の名を知っているのだろうか。先生にも名前を呼ばれたことない俺の名を、なぜ知っている?


「一緒に遊ぼうよ。・・・ねえ」

「なんで?」

「なんで?ってなんで?」

「・・・」

「サッカーボール持って来たんだ、きっと好きだろうと思って!」

なんて美しい眩しい笑顔なんだ。

俺はあの時、彼女ではなくて彼女の笑顔に惚れてしまった。

それに、俺が今一番したかった事、特技をなぜ知っている?

「サッカーチームに入ってるんでしょ?」

まただ、なぜ知っている・・・

「うん。なんで知ってるの」

「この前さ、お母さんがお迎えにいらしてたでしょ?その時、話してたでしょ?・・・それで大雅くんのお名前知ったの!」

なんて言葉づかいが丁寧な子なんだろうか。

瑠璃垣梨音はどんな環境で、どんな生活をして過ごしているのだろうか。

なんだか興味をもった。



小学校が始まった。何組か知りたくて自分の名前を探していると、瑠璃垣梨音と言う名前を見つけた。またこいつと一緒か・・・六年間違うクラスになった事はなかった。杉山すぎやま大雅と言う名、自分の名を探した後に必ず他の奴らの名前も一緒に見るのが毎年の楽しみであったが、今年もまたかがやき樹と言うたった二文字の名を探しだす事ができながった。


宿題やら塾やらで、忙しい毎日が続く中、母さんが口を開いた。

「中学、受験するの?母さんは受験してほしいけど・・・」

「う~ん、今迷ってる。だけど、姉貴にいいとこ見せたいし。受けるわ。」

「そうね、お姉ちゃん受けてないものね。」

俺はとにかく姉貴が大好きだった。

親父は俺が三歳の時に事故でこの世を去った。



この時の俺はまだ小六だ、「愛」と言う一生大切にすべきものをよく理解していなかった。

金、土、日とできるだけの勉強を始めた。

教科書も全部読んだ。まだろくに授業も始まっていないというのに・・・



次の日学校に行けばまたあいつがいる。

「大雅ー」

そう。呼び捨て。

三年くらいから「友達」という名の不思議な糸で結ばれた。

「今日ちょっと本屋付き合って。」

「何買うんだよ」

「小説。」

「へぇ」

「ねっ、行こっ!」

「いいけど・・・」

嫌いじゃないんだ、梨音の事。

だからと言って恋人にできるほどの愛はまだ生じていなかった。

だが、クラスの奴らはこう言う。

「付き合ってんの?」「両想い?」

ふざけんな。

ただその一言。

共通点が多いからってそれだけの話だった。

家も近い、話が合う、ごく普通の友達なのにクラスの奴らは何をそんなに・・・



「どれがオススメ?」

「うーん。俺が今読んでるのは・・・」

梨音の腕をつかみ、そこまで連れて行った。

もう一度言う。俺は六年だ。

「これ。」

「・・・切れぬ虹?」

「うん、いいタイトルでしょ?」

梨音は最初の2ページほど読んだ。

「気に入った!買ってくるね。先出てていいよ。」

春なのに暖房の効いた本屋を出れば冷たい風が俺の頬をなでたのを覚えてる。

六年だった俺は、震えながらまた本屋の中へ戻った。

「じゃあ俺こっちだから。塾だし。」

「付き合わせちゃってごめんね。でもありがとう。塾頑張って」

梨音は大きく手を振った。もちろんあの美しい笑みも。

俺は小さく手を振り、小走りで塾へと向かった。




学校で梨音は『切れぬ虹』を読んでいた。

結構人気者だった彼女の周りには必ず人が何人かいた。

もしかすると、俺が影の濃い存在になれたのは梨音のおかげかもしれない。

クラスメイトが俺の名前を知っていたのも梨音のおかげであった。



「大雅」「大雅」と呼ばれるのが俺にとってのちょっとしたゼイタクだった。

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