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30センチに流るるを

作者: 葉崎あすか

 天井を見上げると、そこには何もなかった。

 屋根はあった。でもずっと天井にあったはずのものがなかった。

 確かに、昨日まではあったはずだった。それだけは確かだ。

 私は立ち上げると、天井に手を伸ばした。身長が低いので届かない。前にもこんなことがあったなという既視感。違う色を違う色で消していく。また、同じ色で消していく。

 何があったかも忘れてしまった。そんな昼下がり。


 私は、幽霊を見た。

 「犯人は、山口だ」と言うセリフを口にした後だった。山口は驚いている。

 もはや山口は人間ではない。

 山口は、ただの県名だ。関口は県名ではない。

 山口が何かをしたわけではなかった。ただ私が言ってみたかっただけなのだ。山口は幽霊ではない。関口も同様だ。まあ、山西は同様ではなかったが。

 山西は幽霊に程近いものだった。ユーレイとでも呼ぼう。

 カタカナにすると優しい印象になる。と、昨日、関口が言ったか言わなかったか。山口だったかもしれない。そう、犯人は山口なのだ。

 もう幽霊はどこかに行ってしまった。山西もどこかに行ってしまった。そんな昼下がり。


 ただ単に変な言葉を羅列したところで、何も化学反応は起きなかった。と、国語教師と科学教師が会話をしている廊下を通って、私は体育館へと急いだ。

 何故、体育館に行かねばならないのか。考えても答えは出ないことは分かっていた。

 ただ、私を動かす何かが、そうさせていた。

 体育館に着いた。だから何だというのだ。どうして「みぎとひだり」と言ったり書いたりするのに、右は左に位置しているのか。「ひだりとみぎ」ではいけないのか。どうして右を左側に書かなくてはいけないのか。そんな疑問は体育館では解けない。

 体育館に入る。

 天井を見上げると、そこには何もなかった。

 屋根はあった。でもずっと天井にあったはずのものがなかった。

 確かに、昨日まではあったはずだった。それだけは確かだ。

 私は立ち上げると、天井に手を伸ばした。身長が低いので届かない。前にもこんなことがあったなという既視感。違う色を違う色で消していく。また、同じ色で消していく。

 何があったかも忘れてしまった。そんな昼下がり。


 私は、幽霊を見た。

 「犯人は、山口だ」と言うセリフを口にした後だった。山口は驚いている。

 もはや山口は人間ではない。

 山口は、ただの県名だ。関口は県名ではない。

 山口が何かをしたわけではなかった。ただ私が言ってみたかっただけなのだ。山口は幽霊ではない。関口も同様だ。まあ、山西は同様ではなかったが。

 山西は幽霊に程近いものだった。ユーレイとでも呼ぼう。

 カタカナにすると優しい印象になる。と、昨日、関口が言ったか言わなかったか。山口だったかもしれない。そう、犯人は山口なのだ。

 もう幽霊はどこかに行ってしまった。山西もどこかに行ってしまった。そんな昼下がり。


 ただ単に変な言葉を羅列したところで、何も化学反応は起きなかった。と、国語教師と科学教師が会話をしている廊下を通って、私は体育館へと急いだ。

 何故、体育館に行かねばならないのか。考えても答えは出ないことは分かっていた。

 ただ、私を動かす何かが、そうさせていた。

 体育館に着いた。だから何だというのだ。どうして「みぎとひだり」と言ったり書いたりするのに、右は左に位置しているのか。「ひだりとみぎ」ではいけないのか。どうして右を左側に書かなくてはいけないのか。そんな疑問は体育館では解けない。

 体育館に入る。

 天井を見上げると、そこには何もなかった。


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