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夏とラムネと  作者: 野村勇輔
Day5

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20/33

第3回

   3


 潮見と陽葵、千花の三人と分かれて数分後。


 僕と真帆さんは線路向こうに見える山のふもとへ向かって歩き続けていた。


 内心、陽葵と一緒が良かったのだけれど、潮見が久しぶりに陽葵や千花と話がしたいとか言い出して、結局あの三人で行ってしまったのだ。


 おかげで、僕一人が取り残されたような形になってしまった。


 まぁ、真帆さんと町を巡るのも悪くはないのだけれど、何だか釈然としない思いもある。


 真帆さんは複雑な気持ちで三人を見送る僕に「ぷぷっ」とどこか噴き出すように笑い、「さぁ、私達も行きましょうか」と優しく肩を叩いてくれた。


 高く上った陽の光から逃れるようになるべく影を歩くように努めたけれど、当然のように暑いものはやっぱり暑い。


 真帆さんの魔法?のおかげか、真帆さんの隣を歩いている分には多少は涼しいような気がするが、それでも肌がヒリヒリ痛むほど陽の光は強かった。


 その真帆さんは、時折虹色ラムネを口に運んで魔力を補給しながら歩いている。


 僕も真帆さんに貰ったラムネを一口飲んで、真っ青な空を仰ぎ見た。


 雲ひとつない青はとても綺麗だったけれど、やはり太陽を隠してくれる雲が恋しくて仕方がない。


 辺りから聞こえてくるセミの鳴く声がその暑さをいっそう強く感じさせて、僕は思わず耳をふさいでやりたくなった。


 とはいえ、心なしかその数も減っているような気がしなくもないくらいだったのだけれども。


 もしかしたら、セミも無気力症候群に? 


 そんなことを思っていると、

「ハルトくんは、ヒマリさんとは?」

 唐突に真帆さんに訊ねられて、一瞬、その意味をはかり兼ねる。


「えっと……はい?」


「幼馴染、というのは昨日のお話からわかりました。けれど、それだけではありませんよね?」


「それだけではないって、どういう意味?」


「つまりですね」

 と真帆さんはにやりと笑むように、

「ヒマリさんのこと、好きなんですよね?」


「うっ……」


 そんな直接的に口にされると、果たしてどう答えたら良いのかすっごく悩む。


 確かに陽葵のことは好きだけど、それを口にしてしまうのがあまりにも恥ずかしくて、けれど否定する事も出来なくて、

「ま、まぁ――」

 視線をそらしながら、僕は真帆さんからわずかに離れるように返事した。


 途端に暑さが増して体が熱くなってきたのは、きっとそのせいに違いない。


「いいですねぇ、若いですねぇ」

 アハハッ、と笑う真帆さん。

 それから僕の顔を覗き込むように、

「もしこの件が解決したら、恋に効く魔法を差し上げましょうか?」


「こ、恋っ!」


 はい、と真帆さんは頷くと、

「恋愛に効く魔法は定番中の定番ですからね。私のお店でも色々取り扱ってますよ」


「お店? 魔法の?」


「はい。私、普段はそのお店にいるんです。魔法百貨堂っていうお店なんですけど、結構な老舗なんですよ。建物だけで言えば、もう百年以上の歴史があります。実はうち、代々魔女の家系なんです」


「ま、魔法百貨堂……魔女の家系……?」


 なんか、やたらと古臭い店の名前だと僕は思った。


 それに、百年以上も続いてるって、いったいどんな家なんだろうか。


 建物もやっぱり古い日本家屋だったりするのだろうか。それとも、たまに海外のドラマや映画なんかで観るような、如何にも魔女が住んでいそうな洋館だったりするのだろうか。


 なんだか一度、行ってみたい気もする。


「あいにく今は地に魔力を吸われてまともな魔法が使えませんし、持ってきた魔法道具も軒並みただのガラクタと化してしまっていますけど、この件が片付けばきっとまた魔法が使えるようになると思います。こうして手伝って頂いてますし、何かお礼をしなければなりませんからね」


「いいよ、お礼なんて……」


 首を振る僕に、真帆さんは「いえいえ」と同じく首を横に振って、

「ヒマリさんもハルトくんのことを決して悪くは思っていないでしょうからね。おふたりには、是非幸せになって頂きたいと思ってます」


 余計なお世話、なんてことは口が裂けても言えなかった。


 それはまぁ、陽葵と今以上の関係に、それこそ恋人同士になれたら良いなとは思っていたし、その先の未来を想像しないこともないわけではない。


 むしろこれまでの人生、一緒にいることの方が当たり前だったし、この先も一緒にいたいなって思ってしまうほど陽葵のことを――などと考えると、さらに暑さが増してくるのでそんな感情を振り払うように僕は激しく頭を振って、


「ま、まぁ、それよりも先に、無気力症候群の解決でしょ? 早く魔力の流れてる穴を探して、さっさとミナトの体調を戻してあげないと!」


 そんな僕に、真帆さんは再び「ぷぷっ」と噴き出すように笑ってから、

「はいはい、そうですね!」


「ほ、ほら、早く行きましょう!」


 僕は誤魔化すように、駆け出した。

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