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行方不明になった冒険者

掲載日:2026/07/05

街の中心部にある、古くてあまりきれいではない酒場。


その扉を開ける者が一人……。


「らっしゃい」


酒場の主が、顔も向けずに挨拶をする。


「マスター、例のもの、できたか?」


ここでようやく、マスターは客の方を向いた。


「うん? ああ、できてるぞ」


すると、客はとても嬉しそうに笑った。


「ありがとな」


客はそう言って、机の上に代金を置き、マスターと呼ばれるこの酒場の主から、一枚の紙をもらった。


「ところで……」


マスターは、重そうに口を開けた。


「お前、クロゾーン鉱山なんて探索できないだろ」


すると、客……愉快な冒険者は、大きな笑い声をあげた。


「大丈夫大丈夫。俺の力を舐めているのか? 俺はこう見えても、凄腕の冒険書だぞ? それに、クロゾーン鉱山には、金銀財宝の宝の山が眠っているんだ!」


マスターは、本気でため息を吐く。


「お前の力を舐めていないからこそ、心配してるんだ」


しかし、愉快な冒険者は全く言う事をかいせず、ニコニコ笑っている。


「ハハハ。この俺の力では倒せないと言われるダンジョンか? 面白い!」


マスターは、無表情で客を見つめている。


「心配するな、マスター。一様念のため、凄腕の用心棒を一人雇ったんだ。だから問題ないぞ!」


すると、マスターはもう一度深くため息を吐いた後、力なさそうに笑った。


「わかったよ。ただし、何か危ないと思ったすぐに逃げるんだぞ」


「わかってるって。いっぱいお宝を持って返ってくるから、酒の用意をして待ってろよ」


冒険者はすぐに荷物をまとめて酒場をあとにした。


「全く……。血の気の多い若造だな」




「いやー、金銀財宝楽しみだな」


愉快な冒険者は、用心棒と合流し街を出て鉱山に繋がる街道を歩いていた。


「まず何をしようかな? マスターの酒を飲むのもいいし……あっ、気になるあの子に告白するのもいいな!」


すると、ずっと黙っていた用心棒が静かに口を開けた。


「お前、ダンジョンを舐めているだろう」


すると、愉快な冒険者は少し怒った顔をしてみせた。


「そんなわけあるか! 俺は自分の力を信じているだけだ!」


「なるほど、その錆びた剣とボロボロの盾、小さなリュックに入った僅かな食料で、あのクロゾーン鉱山を探索するって言うんだから、自分を過信しなきゃできないよな」


用心棒が静かに笑うと、愉快な冒険者は黙って口の端をピクピクさせた。


「そんな愉快な冒険者にいいことを教えてやろう。あの鉱山では、何者かが秘密工作を行っているらしい」


すると、愉快な冒険者は大きく笑った。


「ハッハッハ! そんな噂誰が信じるか。それにもしそんな奴がいても、俺の華麗な剣のさばきで、あっという間にお陀仏さ」


すると、用心棒はまたしても軽く笑った。


「フッ、だといいがな」




やがて、冒険者と用心棒が目的地であるクロゾーン鉱山に到着した。


「だいぶ中まで入ってきたが、魔物一匹いやしねー。きっと俺の偉大なる力にひれ伏せたのだろう!」


冒険者がそんなことを大声で言ったとき、事件がおきた。


それは、一瞬の出来事だった。


「うっ!」


なんと、用心棒が胸を抑えて倒れ込んでしまったのた。


「お、おい、用心棒! 大丈夫か!?」


冒険者が次に顔を上げて周りを見渡したとき、周りには黒いフードで身をまとい、顔を脳面で隠した大勢の人が冒険者の周りを取り囲んでいた。


「な、なんだお前ら! 一体どこから出てきたんだ!?」


すると、怪しげな雰囲気の大勢の人は、冒険者の方を向いて呪文を唱え始めた。


「◯☓▲?□※……」


「う、うお!? 何だ!? の、脳がや、焼かれる……。やめて、く……れ……」


冒険者は、そのまま意識を失ってしまった。




後日、街のギルドに少し大きめの荷物が届いた。


中を開けると、先日、クロゾーン鉱山に探索に行ったまま帰ってこなかった愉快な冒険者の、ボロボロの剣と盾が入っていた。


ギルドの建物の外では、例の用心棒がニヤリと笑いながらタバコを吸っていた。

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