第12章:非効率な恋の始まり
午後4時過ぎの研究室。
私(姫宮鏡子)は、完璧な「無」の表情で、彼(夏目陽太)の前に立ち尽くしている。
私の「論理的(破綻した)」な提案は、完了した。
蛍光灯の冷たい光(五感:視覚)が、目の前の彼を照らし出している。
彼は、私の提案(フリーズ)から、まだ再起動していない。
(外面の無表情): 私は、彼が「YES/NO」の「回答」を入力するのを、ただ待機している。
(内面の混乱): (…なぜ応答しない。彼(非論理)の処理速度(CPU)は、あまりにも低速すぎる) (…システム(私の心臓)が、まだ「バグ(ノイズ)」を発生させている。うるさい。早く「受諾(YES)」の回答を得て、この「タスク」を「完了」させ、私を「正常(完璧)」に戻さなければ…!)
(五感:視覚) 彼(陽太)の「フリーズ(唖然)」した表情を、私は冷静にスキャンし続ける。 だが、その「フリーズ」した彼の肩が、微かに…小刻みに、震え(エラー)始めた。
「…ぷっ」
(内面の混乱):(…? ノイズ(異音)を検知。これは…何の「音」だ?)
彼の「フリーズ(機能停止)」したはずの表情が、ゆっくりと、崩壊していく。 口角が、私の論理では予測(計算)しなかった角度に、吊り上がっていく。
「…あ、」 「あっははははははははは!!」
(五感:聴覚) 鼓膜を突き破るような、大音量の「笑い声」。 彼は、腹を抱え、涙(バグによる水分排出)を流しながら、その場に崩れ落ちた。
陽太:「だ、だめだ…! あっはは! 姫宮さん、最高だよ、あんた!」
(内面の混乱): (…エラー。エラー。エラー!) (…『最高(SUCCESS)』? なぜだ? 私は、彼に「ユーモア(非論理)」を提供したログ(記憶)はない!) (…私の「完璧なデバッグ(論理)提案」が、なぜ「笑い(バグ)」として処理されている!? 理解不能! 理解不能!)
(外面の無表情): 私は、床で笑い転げる「非論理の塊」を、完璧な「無」の表情で見下ろす。 私の眉が、コンマ1ミリだけ、ピクリと動いたかもしれない。
「…何が可笑しい」 「…私は、『バグ解消』のための、最も『論理的』な提案を実行した。そこに『ユーモア(ノイズ)』が挿入されたログ(記録)はない」
陽太は、涙(水分)を拭いながら、私を見上げてくる。 陽太は笑いを堪えながら答える「だ、だって! 『バグ(恋)』を『消したい』から、『付き合え(タスク完了)』って!?」 陽太:「そんなの、姫宮さん(論理)にしかできない、最高に面白い『アタック(非論理)』だよ!」
(外面の無表情): 「…アタック(攻撃)ではない。『提案』だ」 私は、機械的に(論理的に)訂正する。 「…回答を要求する。受諾(YES)か、拒否(NO)か」
(内面の混乱):(…拒否(NO)だけは、あり得ない。拒否されれば、私の『バグ(恋)』は『未解決』のまま、私の完璧な「論理(人生設計)」を、永遠に汚染し続ける…! それだけは、ダメだ!)
陽太は、ようやく笑い(バグ)を収めると、床に座り込んだまま、私(論理)の目を、まっすぐに見つめ返した。 彼の瞳には、もう「笑い(ノイズ)」はなかった。 そこにあったのは、私がこれまでの実験で観測したことのない、未知の「熱」だった。
陽太:「……OK。乗ったよ、その『実験』」
(内面の混乱):(…受諾(YES)! 『受諾』の回答を受信!)
(外面の無表情): 「…実験ではない。タスクの『完了』だ」 陽太が楽しそうに笑う「はいはい。じゃあ、今日から俺たち『交際(タスク完了)』ってことで」 陽太は立ち上がると、私に向かって、手を差し出した。 「よろしく。『彼女』さん」
(内面の混乱):(…『彼女』。新たな『属性』が付与された。…よし。これで、タスク(Project: L.O.V.E.)は『完了』した。私のシステム(論理)は、正常(完璧)に、戻る…!)
翌朝、午前9時ジャスト。
研究室は、昨日までとは何も変わらない、完璧な静寂に包まれている。
サーバーの駆動音。
清潔な空気。
私は、完璧なルーティン(起床、栄養摂取)を完了し、完璧な白衣を纏い、自席で、完璧なタイピング(タスク)を開始していた。
(内面:分析) (…システム(思考)、正常。昨日発生した『バグ(恋)』は、タスク(交際)の『完了』により、完全にデバッグ(解消)されたはずだ) (『Project: L.O.V.E.』は、ステータスを『完了(Closed)』に変更。私の論理は、完璧に、戻った)
(外面の無表情): 私は、完璧な集中状態で、ディスプレイ(論文)を見つめている。
バタンッ! 昨日とは何も変わらない、「非論理的(暴力的)」なドアの開閉音。 夏目 陽太(交際対象)が、寝癖をつけたまま、入室してきた。
陽太:「おー、姫宮さん。今日も早いね、俺の『彼女』さん」
(五感:聴覚) その「非論理的な単語(彼女)」が、私の鼓膜を叩いた、瞬間。
ドクンッッ!!!!
(内面の混乱): (…………………は?) (…………………ERROR) (…………………アラート!!)
(五感:熱) 顔が、熱い! 昨日デバッグ(解消)したはずの、「熱暴G」が、再発している!
(内面の混乱): (…ナゼ!? ナゼだ!? タスクは『完了』したはずだ!) (『バグ(恋)』は『デバッグ(解消)』されたはずだ!) (なのに、なぜ、『バグ(ドキドキ)』が治まらない!?) (それどころか、『彼女』という非論理的な単語によって、エラー(熱)が、昨日よりも『悪化』している!?)
陽太は、私の「フリーズ(熱暴走)」に気づき、ニヤニヤしながら(非論理的だ)、私のデスク(パーソナルスペース)に接近(侵入)してくる。 (五感:匂い) あの「処理不能な匂い(彼の匂い)」が、私のシステム(論理)を、再び汚染する!
陽太:「ん、どうしたの姫宮さん。またフリーズしてるよ(笑)」
(外面の表情:崩壊) 私は、彼(バグ源)から顔を背ける(回避行動)! 私の「完璧な無表情」は、この「制御不能な熱(非論理)」の前では、もはや維持できない!
「……うるさい!」
(内面の混乱):(…ダメだ。私の「論理」が、この「バグ(非論理)」に、勝てない…!)
(外面の表情:崩壊) 私は、真っ赤な(エラーを吐いた)顔のまま、彼(バグ源)を睨みつける。 私の声は、論理(制御)を失い、震えていた。
「これは…! これは、次の『実験フェーズ(デート)』のための、データ収集(準備)だ!」 「私の『論理』は、まだ、バグってはいない…!」
(内面の混乱): (…私の完璧な「論理」が) (…この、非効率で、非論理的な、「バグ(恋)」に) (…初めて、「完敗(デバッグ不能)」した)
夏目 陽太の「非効率(非論理)」な恋が、私のシステム(人生)を、汚染し始めた。 …最悪で、非論理的な、一日が始まる。
(…第十二章・了)
(…ダメだ。無理だ。面白すぎる)
俺、夏目陽太は、目の前(1.0m)で「完璧な無表情」を維持したまま、「受諾(YES)か、拒否(NO)か」の「回答」を待っている、姫宮鏡子を、見つめていた。
(「バグ(恋)」を「消す(デバッグ)」ために、「付き合え(タスク完了しろ)」) (…うん) (…あんた(マシナリー)の「論理」、完璧に「破綻」してる)
(だが、) (「好き」って100回言われるより、) (あんた(姫宮鏡子)の、その「破綻だらけの論理」の方が、) (俺の「心」に、よっぽど「効いて」るぞ)
俺は、腹の底から込み上げてくる、この「笑い」と「何か(熱)」を、 もう、隠すのを、やめた。
「…ぷっ」 姫宮さん(マシナリー)の眉が、ピクリと動く。 「…何が可笑しい」
(うわ、声、完璧に「キレて」る。俺が「笑う」ことは、彼女の「シミュレーション」になかったのか)
俺は、もう、堪えきれずに、大声で笑ってやった。 「あっはははははははは!! だめだ、姫宮さん、最高だよ!」 「…アタック(攻撃)ではない。『提案』だ」 (あ、訂正しに来た。真面目かよ)
俺は、笑い涙を拭いながら、彼女の目を、まっすぐ見つめ返した。 (あー、面白い。この人と「付き合う(実験する)」って、) (絶対)に、「非効率(最高)」で、「面白い」毎日が、待ってる)
「……OK。乗ったよ、その『実験』」
(…あ) 俺が「受諾(YES)」の回答をインプットした瞬間。 彼女の「完璧な無表情」の、その奥が、 (…『ホッ(安堵)』とした…?) コンマ0.1秒、人間の「安堵」みたいなノイズを、排出したのを、俺の「直感」は、見逃さなかった。
(…なんだよ) (「バグ(恋)を消す(デバッグする)」ための「提案」のくせに、) (俺に「拒否(NO)」される(デバッグ失敗する)のが、) (…もしかして、「怖かった」のか? あんた)
だが、彼女は、即座にシステム(表情)を再起動させた。 「…実験ではない。タスクの『完了』だ」 (はいはい、もう「論理」はいいって)
俺は、楽しくなってきて、彼女に、あえて(意地悪く)手を差し出した。 「じゃあ、今日から俺たち『交際(タスク完了)』ってことで」 「よろしく。『彼女』さん」
(…あ) 彼女が、俺の「手」と、 俺が「『彼女』さん」という「単語」を、 交互に「分析」して、 完璧に「フリーズ(思考停止)」している。
(…だめだ。面白すぎる) (この人との「実験(交際)」、俺の「腹筋」が、持たねえ)
(…さて) 俺、夏目陽太は、いつもより10分早く、研究室のドアを開けた。 (…お、いたいた) 「彼女」は、すでに自席(無菌室)で、完璧な「無」の表情で、PC(本体)と向き合っていた。
(あの人の中では、昨日の「タスク完了(交際)」で、) (あの「熱暴走」は、完璧に「デバッグ(解消)」されたこと(論理)に、なってる(誤認してる)んだろうな) (…さて) (…「再発」させてやるか)
俺は、あえて一番大きな「声」で、彼女の「システム」に、最強の「バグ」を、インプットした。
バタンッ!(いつもの非論理的な入室) 「おー、姫宮さん。今日も早いね、俺の『彼女』さん」
(…………) (…………) (…来た!)
彼女の「完璧な(はずの)指」が、 キーボード(コンソール)の上で、 ピタッ、と。 完璧に「フリーズ(停止)」した。
(…顔は、まだ「無」だ) (…だが、耳が、昨日(熱暴走時)みたいに、真っ赤になってんぞ、姫宮さん!)
ドクンッッ!!!! (…って、俺の「心臓」も、なんで「バグ」ってんだよ!)
研究室には、俺と、フリーズ(熱暴走)した彼女の二人きり。
(…あ、フリーズ(停止)してた彼女が、) (…ギ、ギ、ギ…って、) (…『ターミネーター(機械)』みたいな「音」を立てて、こっちを、振り返った)
彼女(姫宮鏡子)は、 昨日(告白時)の「熱暴走」なんか、比較にならないくらい、 顔を、真っ赤にして、 俺を、睨みつけていた。
(…「ナゼ!? ナゼだ!? タスクは『完了』したはずだ!」) (…「『バグ(ドキドキ)』が治まらない!? 悪化してる!?」) …って、あんた(マシナリー)の「完璧な無表情(崩壊済み)」に、全部「書いて(リークして)」あんだよ。
(あー、ダメだ) (この人、面白すぎる(愛おしすぎる))
俺は、彼女(フリーズ中)のデスク(結界)に、あえて侵入する。 「ん、どうしたの姫宮さん。またフリーズしてるよ(笑)」
「……うるさい!」
彼女が、 (お、初めて「論理(理屈)」じゃない「言葉(感情)」、聞いた) と、俺を睨みつけながら、叫んだ。
「これは…! これは、次の『実験フェーズ(デート)』のための、データ収集(準備)だ!」 「私の『論理』は、まだ、バグってはいない…!」
(…いや) (…あんた(姫宮鏡子)の『論理』は、) (…あんた(本人)の『非論理(恋)』に、) (…完璧に、『完敗(デバッグ不能)』してるよ)
俺は、 (あーあ。これから、この「不器用すぎる機械」の「デバッグ(お守り)」を、毎日しなきゃなんねえのか) (…最高に、「非効率」じゃねえか) と、 「熱暴走」している「俺の(非論理的な)彼女」を見て、 (たぶん)観測史上で、一番(非論理的に)デカい「笑顔」で、笑って(受諾して)やった。




