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あなたへ
地元の古びた図書館は独特な匂いがする。春になると出入り口の自動ドアのセンサーの上にツバメが巣を作る。その下に新聞紙を敷いてフンよけ対策をしている。都会では有り得ないこんな光景を見てなんだか安心する。
私の名前は白本加奈。20になった今でも学校終わりや休日についここに来てしまう。キラキラ女子大生が行くようなカフェよりも古びた本の並ぶ静けさ、この独特な匂いに囲まれるほうが落ち着くのだ。
いつもは大学のレポートを書きにここに来ることが多いのだがその日は特に目的があったわけじゃない。ただなんとなく足が向いただけ。けれど、詩集の本の隅にたまたま目に入った見たことのない一冊があった。思わず私は手に取り誰もいない図書館の机に向かい椅子に座る。
少し破れた生成り色の布の表紙。けれど不思議だ。題名がかかれていない。こんな本初めて見た。だけど、なんでだろう、どこか懐かしく感じる。私は本を開く。
1ページめくると、最初の行にこう書いてあった。
「2023年2月17日 図書館でこの本を読む」
――え?今日?




