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4-8 夢の時間の終わり


「アニー?!」

『見つかったのか』

 レシーバー越しのエドワードの声にわたしは頷く。

「見つけたわ!」


 指揮者が動きを空中で止め、楽器の音がピタリと止む。

 大広間を揺るがすような拍手が鳴り響いた。



 わたしは優雅に会釈して、歓喜する人々の間をエドワードと一緒に歩いていく。

『俺は俺の標的に避難所の準備を促すよう要請する。おまえも作戦通りに』

「わかった」




 わたしの手が、エドワードの手からそっと離れる。

 夢の時間は、もう終わり。

 任務を開始しなくちゃ!



 胸を襲うちりちりとした痛みを無視して、花のように笑う親友の元へ駆け寄った。


「アニー!」

「やっぱりビビアンだわ!」


 わたしたちは手を取り合って喜び合った。



「ねえビビアン、すごくステキなドレスね! どちらの仕立屋のお品? とてもよく似合っていてよ!」

「えへへ、ありがとう」

「貴女ったらダンスも上手ね! いつの間にあんなに上達したの? それに、エスコートしてくれていた殿方、とても素敵な方だったけれど学園の方じゃないわよね?」



 おとなしいアニーにして珍しく、興奮した様子で矢継ぎ早に質問してくる。



「あ、あはは、まあ……ってそんなことより! 探してたのよアニー!」

「それはうれしいけど、そういえばその……ビビアン、どうしてここに?」


 アニーが気づかわし気に聞く。

 そう、ルシエンヌ様にとってわたしは招かれざる客だ。

 というかそもそも招かれてないし。


「わたしがどうしてここにいるかは後で説明する。とにかくアニー、今は避難するのが先なの。あのマントルピースの前に集まってくれる? 他にも同級生や学園の人たちで一緒に行ける人がいれば連れていってほしい」


 大広間の両サイドにある巨大なマントルピースを指すと、アニーは目を丸くした。


「避難ですって? ビビアン、どうして?」

「この前、図書館の前にレッドキャップが出たでしょう? あれは偶然とか事故じゃなくてロンディニウムには今レッドキャップが徘徊している。このパーティー会場も危険なの」

「そんな!」

「でも大丈夫。何とかするから、その間に避難してほしいの」

「無茶よビビアン! いくらビビアンが強くても一人でなんて」

「一人じゃないから大丈夫よ」


 わたしが片目をつぶると、アニーは少し考えて頷いた。


「わかったわ。私もあの魔物の怖ろしい姿は見たもの、ビビアンの言うことを信じるわ」

「ありがとう。マントルピースへ向かってね」

「ええ。ビビアン、どうか気を付けて!」


 わたしは肩越しに手を振って耳のイヤリングを軽く弾いて魔力を通す。


「エドワード、アニーと接触できたわ。アニーはマントルピースの前に向かった」

『了解。では俺は至急、アルトワ公爵邸内の避難場所と移動地点をつなぐ作業に入る』

「わかったわ。で、その後どうするの?」

『避難誘導は俺の標的に依頼済みだ。俺たちは速やかにパーティー客を移動地点ワープゲートであるマントルピースへ誘導、避難を確認後、レッドキャップの襲来がなければ外へ出て殲滅作戦を展開する』

「わかった」


 わたしがレシーバーを再度弾こうとすると、エドワードの声が続けた。


『ビビアン。あー……なんだ、その、見事だった』

「?」

『おまえのダンスは、超一流と言ってやってもいいレベルだ。間違いなく、おまえが一番美しかった。俺が保証する。自信を持て』



 言われた言葉の意味を理解する前にぶつっ、と通話が切れる。



「今……一番美しかった、って言ったよね???」

 沸騰直前のケトルみたいにカーっと顔が熱くなった時だった。


「ま、まさか……ビビアン・ローレンス?!」


 金切声に振り返ると、ひらひらとした真紅のドレスを纏ったルシエンヌ様といつもの取り巻きたちがいた。

 五人揃って目と口をあんぐり開けてビビアンを見ている。


「このドレス……さっきすごくステキな御方と踊っていた美女だわ!!」

「うそでしょう!?」

「こんなすごいドレス、貧乏令嬢にあつらえるはずないじゃない!」

「他人の空似よ!」



 気まずい沈黙が流れる。やっぱりここは一応、挨拶するべき?

「ははは……どうも、ビビアン・ローレンスです。ごきげんよう」


 わたしの渇いた声が終わる前に。


「なんであんたなんかがここにいるのよっ!!」

 ルシエンヌ様がわたしにつかみかかってきた。



「ちょ落ち着いてルシエンヌ様! ドレスが!」

「あんたみたいな貧乏令嬢を呼んだ覚えないわよっ! 早く出ていってよっ!!」

 ものすごい力でつかみかかられ、わたしはドレスを守ろうとして必死に抵抗する。 

 や、やめて! エマさんがせっかく選んでくれたドレスが……!



「――どうなさったのですか、美しいお嬢さん」

 ふと顔を上げると、いつの間にか人が立っていた。




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