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3-4 レッドキャップ殲滅作戦②



 ビビアンはアッパーウェストをひた走る。


 見慣れた商店街は一変していた。

 ショーウィンドウが割れ、中の商品はめちゃくちゃだ。

 通りには怪我をした人々が救急隊や聖騎士団の手当や保護を受けていた。


 レッドキャップは下等な魔物なのでヒトを喰うことはないが、集団で動いて悪さをするので通った後は惨憺たる有様になる。


「ひどい」

 ビビアンは唇をかむ。早く。早くレッドキャップを一匹でも多く殲滅しなくては。  

 耳に装着した白いレシーバーからエドワードの声が届いた。



『聞こえるか。どこにいる』

「アッパーウェスト通りよ。12番地あたりね。今のところ新たな個体には遭遇してない」

『了解。15番地の白いビルの前に向かえ。合流する。途中、レッドキャップに遭遇したら――』

「わかってる。迷わず殲滅する!」

『了解』


 エドワードの声が切れた。


「エドワード、たまには良いことするわよね! ほんと便利だわ、これ」

 ビビアンの耳にかかる白い貝殻のような物。

 これは魔道具『レシーバー』で、魔法収納マジカルストレージからエドワードが出してきた逸品だ。



 魔法収納マジカルストレージは武器や魔道具、薬草など、ありとあらゆる物を収納しておける文字通り「魔法のような収納場所」。

 魔法なので、魔力の高さによって収納できる量が決まる。



 エドワードはありとあらゆる魔道具や備品を持っていた。魔道具じゃなくてもすべての荷物が余裕で入るほどの収納力があるらしいのはエドワードの魔力の高さを物語っている。

 どうりで、いつもスマートなスーツ姿でいられるわけだ。



 ちなみにわたしは今まで、魔法収納が使えなかった。

 ところがなんと――使えるようになっていたのだ!

『指輪をすることで魔力が上がっているはずだから試してみろ』とエドワードが言ったのでダメ元で魔法収納発動呪文を詠唱したら、なんと魔法収納マジカルストレージが現れた!



「この指輪の効力が凄すぎる!」

 さっきの戦闘を思い出す。剣技も、魔力増加で明らかに技も速度も冴えていた。

 わたしの愛剣は細剣なので、威力は普通のソードと比べると弱い。その分、素早く敵の急所を突くことでクリティカルヒットを生み出して敵を殲滅する。


 つまり速度がわたしの攻撃の強み。

 それが魔力増加によって補強され、かなりの威力を発揮していた。



《ぐぎぎぎぎぎいぎぎぎぎ!》


 醜悪な擦過音と気配が襲ったのは同時。

 刹那、わたしは振り向きざま細剣をスイングする。


 細剣とレッドキャップの凶爪が火花を散らしたのは一瞬、わたしの思考速度を追い越した剣筋が襲い来る赤い集団の上で舞う。



「うそ……わたし凄くない?!」

 自分でも信じられない動き。

 剣と一体になっている、という感覚。

 それは初めての経験。身体中を痺れで貫く快感。



 視界に標的ターゲットが入った瞬間すでに剣先が標的に届き光芒を散らしている。細剣の切っ先は敵の急所を精確に突き、魔物は黒い砂となり霧散する。



 合流地点に達したとき、わたしはすでにかなりのレッドキャップを葬っていた。

 でも、まったく疲れを感じない。

 むしろ……気持ちいい!



「アッパーウェスト通りは殲滅できたと思うわ! 怪我人の介抱や収容は聖騎士団がやっているのも確認できた」

「了解。こっちも済んだ。ったく、こんな状況で聖騎士団を一貴族のパーティーなんぞの警備に充てるとか信じられん」

「本当ですよね……」


 街は惨憺たる有様なのに、パーティーなんて。

 明日も学校があればルシエンヌ様に直接抗議するけど、あいにく明日以降はレッドキャップを鎮圧するまで休校措置が取られることになった。

 まあわたしが抗議したところで、ルシエンヌ様が大人しく聞き入れるとも思えないけどね。



「おい、大丈夫か?」

 急にエドワードが覗きこんできたのでどきりとする。

 いつも無表情な美貌に少し憂いが差していた。

 え、これって、わたしのこと心配してくれてる?


「エドワードもやっぱり、魔王じゃなくて血の通った人間だったんですね!」

 なんだかうれしくて思わず口走ると、エドワードはさらに憂いげに眉をひそめた。

「謎の妄言を吐くとはますます大丈夫か? おまえには明日も馬車馬のように働いてもらわねば困るのだが」

「馬車馬って……あんなに反対してたのにコキ使う気まんまんじゃないですか」

「非常事態だ。使えるものは使う」


 エドワードはなぜか視線を逸らしたかと思うと、いきなりわたしの額に手を当て、その手が首筋に移動した。

「ちょ?! なにするんですか!!」

「熱い」

「へ?」


 そりゃ熱くもなりますよ!

 いきなり額とか首筋とか触られたら!


「まったく、初心者はこれだからな……やはり戦闘熱にやられたな」

「え? 戦闘熱???」


 戦闘熱は一種のステータス異常だ。

 初めての実戦や大きな戦闘などで魔法士、とくに騎士ナイトが陥りやすい。

 身体機能や思考回路がオーバーヒートを起こして、寝込んでしまう者もいる、と教科書テキストに書いてあったっけ。

 座学が苦手なわたしだけど、聖騎士としての実戦に役立つ知識はよく覚えている。

 


「仕方ない、いったん事務所に退避だ。戦闘熱を冷ますぞ」

「戦闘熱を冷ます……」



 確かに、熱に浮かされているような感覚はある。

 でも、戦闘熱を冷ますって……いったいどうやって?

 



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