モノローグ➀
今でも意識のどこかであの景色、空気を追っている。
俺は確かに否定しているんだ。
何度も呪い悔やんだ、あの戻らない時間を。
それなのに、そんなものを心のどこかでよりどころにしている自分がいる。
わかっている。今でも、あのまぶしい日々の輝きに俺は毒されている。
――わかっているのに。
俺は、世界一の愚者だ。
それでもやらなければならないことがある。だから生きている。
それはまるで機械人形のようで。
ただ一つの目的に向かって日々をやり過ごす俺は、機械仕掛けで動く空虚な人形のように灰色の世界に生きてきた。
しかし、変化というのはある日突然やってくるもので。
変化の一つは、今回の事件だ。
あの最凶の太古魔を再びこの手で封印する。
そしてガドゥを再封印するとき、《《あの男はきっと、再び俺の前に立つ》》。
あの男にもう一度会うこと――この五年間、それを願わなかった日はない。
この依頼は、その願いに必ずたどり着く。
闇に堕ちたあの男に、今さら俺にできることはない。
ただ聞いてみたかった。
なぜあのとき、突然、姿を消してしまったのか。
それを聞くために、俺はあの男の足跡を追っている。
もう一つの変化は、あの少女だ。
俺の静かな生活と目的にいきなり放り込まれた子犬――きゃんきゃんうるさい――いや、馬か? 正直あの足の速さには驚かされた。俺の足についてこられるとは。あの小さな身体のどこにそんなパワーがあるのだろうか。
おかげで今夜涌いた分のレッドキャップをおびき寄せ、一網打尽にできたのだが。
確かに戦闘能力は高そうだった。本人にも自覚があるようだ。
動きを見ていればわかる。優れた身体能力に加え、動体視力の良さ、勘の良さは特に剣術が得手だと予想がつく。
――が。
そういうのが、いちばん危ない。
若さは無邪気に罪を犯す。
己の能力への過信。
それは周囲を巻きこみ、己を内側から滅ぼす。
俺やあの男がそうだったように。
俺は教育者や育成者では決してないが、あの少女を管理する以上、年長者として助言するべきだろう。
決して、己を過信するなと。
――が、言って聞くような性格ではなさそうだった。
とんだじゃじゃ馬、ぜったいこちらの助言など聞きそうにない。
無事に指輪を回収できるまで頭痛が続きそうだ。厄介事を押し付けられたようで気分が悪い。
――ただし『クランプワッフル』を愛用していることは、評価してもいい。




