シアター・オブ・レイン
お出かけしない日の雨は好き。
天候に恵まれない休日は
傘の下で肩をちぢこめて歩くのをあきらめて
お部屋で過ごそう
ふだんはしめきってたカーテンをひらけば
ちいさな劇場の幕開け
狭いフレームに嵌めこまれた窓は
雨粒がうちつけるスクリーン
ステレオの円盤が鳴らすメロディをとめて
水滴がはじけるパーカッションに耳を傾けよう
空高くからまっさかさまで
窓ガラスに叩きつけられても
ひしゃげることもなく かたちをたもつ雫が
必死でへばりついてるところに
ほかの雫がにじり寄ってきて
ふたつが よりおおきなひとつの雫へと
溶けあうたび うまれたカタルシスと引き換えに
かかえた自重に耐えきれなくなっては
尾をひきながら窓をすべり落ちていくすがたは
いくら 何度も見ても飽きることのない
モノクロの字幕映画のよう
ポップコーンは置いてないお部屋で
背もたれも肘掛けもないシート
低いベッドに腰掛けたまま
ダンボールで常備してあるペットボトルを一本
そのキャップを こきゅっとねじって
舌を入れないキスをしたら
流しこんだ液体にのどを鳴らして
雨の劇場 水滴のパーカッションと
雫の滑落のダンスを楽しむんだ
傘の下で肩をちぢめて歩くより
私はこんな休日が好きだ
雨の日の電車でも、そんなことしてました。