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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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38/51

36:準備万端とは言い難い

 昼。

 アイツが目を覚ましてから数時間が経ち、俺達にかけられていた待機命令が解除された。


 あの凄惨な事件から一週間ほどだろうか、中枢をこれでもかと破壊されたというのに、これほどまでに早く対応を完了させるとは。蘇芳さんはじめ、ここの人の物理的な苦労や、心労察するに余りある。

 

 ともかく、これでようやく俺達が帰る道筋の第一歩が踏み出せるのだ。実に喜ばしい。


「目標は、先の土地の奪還。あそこを取り戻さん限り攻めに転じられません。理由は何時ぞやはなした通り。全てを、ここから始めましょう。」



 ギルドの人たちに向けて演説をする蘇芳さん。拡声器のような器具は用いず広場に集まった全員声へを届けている。何かの魔法だろう。


 代表たる彼の一挙手一投足は、現地で戦う兵士さんたちのモチベーションに直結する。彼が及び腰の言動をとれば、勝てる戦もとたんに負け戦になってしまうことを理解しているからこそ、たとえそれが虚勢であっても弱腰になるわけにはいかないのだろう。


 蘇芳さんの演説の結果は上々といえる結果に着地した。


 この場に集まる兵士さん達の戦意は最高潮に達していると言えるだろう。

 これはもしかして、もしかするかもしれない。


「かもしれないじゃなく、実現させるンだよ。その為に俺が最前線で指揮を執る。」

「キシュア。なんか久しぶりだな」

「あぁ、日数にしたらそれほどでもないんだろうが、中々に濃密な日々だったからな。そう思うのも無理はない」


 一緒に鍛錬していた時とは違い、立派な鎧を装着したキシュアが立っていた。


「馬子にもってのはほんとなんだなァ隊長がここまで立派に見えンだからぁよ」

「ははっ、ちげえねえや」

「おうおうおう、随分と言ってくれるなあ。これはお前らの武勇がこのギルドに轟く日も遠くねえな」


 軽口を言い合っている様子を見るに、かなり人望もあるのだろう。ヘルトスさんが言っていたように彼は前線で指揮を執ることに向いているんだなと改めて感じた。


「この戦いでキーマンとなるのはほかでもない、僕が巻き込んだ君ら二人です。東藤クン、柊木クン」


 演説が終わり、がやがやとする広場が一気に静まり返る。

 成程、ここで俺達のお披露目ってわけか。


 しかしキーマンとは、たいそうな役割だな。正直言って力不足も甚だしいぞ、こんな一般人に毛が生えた程度の男に何を期待しているのだろうか。いつぞや蘇芳さんに言われたことだが、彼こそ加護を万能と認識しすぎているのではないか。

 

「加護持ちであることはもちろん、彼らは奴さん側にとって何かしら地雷になっている可能性が高いんです。それで君らをあえて戦地へ投入する、無論最前線で敵をなぎ倒せっちゅう訳とちゃいます。君らが居ることで、奴らの戦術をかき乱してやれへんかなっちゅう希望的観測です」


「乱れが見られればそれでよし。そうでなくても別にってことだ。」

「なぁんか舐められてる気がするけど、実際雑魚なんでお口チャックしとこうぜ、兄弟。」


 「ははっ、そう僻むな!悪いことじゃない!何処にいても危険なことには変わりないんだ、俺達最高戦力と一緒にいる方が幾分か安全ってもんだ!」


 こうして、俺たちは遠征の準備を整え奪還作戦へと向かった。

 ここで、これでこの世界の命運が決まると言ってもいい。


 鼓動が早くなる。どこまでも別世界、ここの住民ではない俺にとっては絵空事に等しいもの。しかしこうして戦意が沸き上がっているのを見るとその雰囲気に吞まれたのか興奮が抑えきれない。



 *



 道中。

 肥沃な土地と聞いていたため草原やら森が生い茂っているのを想像したのだが、その想像とは正反対の景色が広がっていた。


「ひどいな」

「えぇ、この有様こそ、今回僕らがこんなに急いで遠征に打って出た理由。所々大穴開いてますでしょ、そこには近づいたらいけませんよ。」



 枯れたような荒地にボコボコと開いている穴。巨大なモグラでもいるのだろうか、怪物共の先兵か?


「柊木クン、君の予想は当たってますよ。亜人共の放った獣がこの土地をからしたんです」


 馬車に揺られながら、枯れてしまった土地の経緯を聞く。


 刹那、話題になっている獣が姿を見せた。


「んなっ、奴さん目覚めがええ様ですね……!」


 赤黒い体表、大きく開かれた牙だらけの口。

 蚯蚓の特徴はそのままに大きさだけファンタジーに振り切った化け物が地中から現れた。とんでもない大きさ。目測で数十メートルはあるであろう怪物を目の前に、俺はただただ口を開いて固まっていた。


「大分早い登場ですが、切り札その1。各々衝撃に備えてください!」


 蘇芳さんが声を張り、馬車を飛び出した。

 何やら胸元から紙を一枚取り出していたようだが、何かのスクロールだろうか。


「ーーーーーーっ!!」


 文字通り地の底から響く唸り声は、俺の体を貫く。

 カタカタと情けなく震える俺にキシュアやほかの傭兵さんたちが慰めてくる。


「元々ここを通る予定だったんだ。アイツと接敵することは織り込み済み、大将に任せたらいい。」


 蘇芳さんを信頼するキシュアの言葉。

 切り札とは、この怪物を難なく撃破できるほどのものなのか。


「ようし、ええとこにいますね君。えらいですよお。そのまんまでいてくださいねえ」


  

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