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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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31/51

31:幕間の暇

 昼食を終えた俺たちは、奥のキッチンの人たちにお礼を伝え食堂を後にした。

 和洋折衷という感じでとても美味しい食事だった。


「取りあえずは、手当たり次第に聞いて回るか」

「おう、二手に分かれてやるか?」

「そうだな、単純な力作業とかもあるだろうし、そうした方がいい場合もあるが……セレンさんやほかの人に聞いてみて、その後臨機応変に対応していこうや」

「おっけ、行き当たりばったりね」


 人が言葉を濁していったというのに、隠していた計画性のなさをズバリと露呈しやがる東藤。

 こんにゃろう、好い性格してやがる。


「ん、見慣れない顔だね。どうしたのかな」

「あぁ、俺ら蘇芳さんのツレでさ。俺が東藤、ンでこいつが」


 適当にぶらついていると、妙齢の女性が声をかけてきた。

 ちょうどいいや、この人に何か聞いてみよう。


「柊木。ヒイラギアキラって言います。そいでもって今何か手伝えることないかなって模索中。」

「あらあら、そりゃあ助かるわあ。そしたらそうだねえ……取りあえず力作業やってもらおうかい」

「兄弟の予想通りだな、任せろってなもんでぃ!んで、何をどーやりゃあいいの?」


 こうして、女性の指示に従い隣の部屋にあった書類の束を蘇芳さんの事務室へ運ぶことになった。

 こりゃあいい、運が良ければ蘇芳さんと会えるかもしれないな。


「おっとお、こりゃあかなりの量だあ」

「これはァ……」


 部屋に入った途端、俺は頬を引きつらせ頭をかいた。

 後ろから入ってきた東藤も固まって笑っているようだ。


「見てみて!俺とほぼ同じ高さまで積みあがってる!やっべえ~」


 東藤が自分の額に手を当てて自分の背丈と比べる。

 よくもまあここまで積み上げたもんだ。それに加えてその書類タワーが、複数個建設されているのだから驚きだ。

 

 成程、単純な荷物の運搬だけで手伝いが必要になるのかと少し疑問だったが、合点がいったぞ。

 後回しにしていた案件がどんどん溜まっていって、溜まっていっているから余計に手を付けられずにここまでの量になったということか。これは、若い奴の面目躍如ってわけだ、若さごり押しで運びますか。


「さあて、少しずつでも処理していくか。ほれ環君、いつまでも背ぇ比べしてないで運びますわよ」

「へいへいっと」


 一度に抱えられるギリギリまで書類を持ち、俺たちは蘇芳さんの部屋に向かう。

 しかし、この量はイコール蘇芳さんの作業量になるわけで。それを持っていくということは蘇芳さんに後回しにしていた業務を直視させるわけで。

 すこし、心が痛むな。


「ひぃ~~って顔するのが目に浮かぶな」

「まぁ是非もないさ、俺らが運ぼうが運ぶまいが一緒ぞ」


 *


「ひぃ~~~!」

「ほらやっぱり」


 

 両手をあげて東藤の予想通りの反応を見せる蘇芳さん。

 ここまで想定通りに事が動くと、少しにやけてしまうな。

 抱えられるギリギリまで持って執務室まで運ぶと、蘇芳さんが必死こいて大量の資料に目を通して判を押していたところだった。優に百枚は越しているであろう紙の束が、机の上に雑に積み上げられている。

 

 これはなんとも、こんな量の作業をしているのだから、俺らの育成など手が回るはずもないだろう。過労死待ったなしだぜこんなの。労働基準監督署が助走つけてぶん殴ってくるに違いない。


「君らぁちょっとは堪忍したってくださいよぉ……」

「ンなこと言われても、俺らが持ってこなくてもなくなりゃしないでしょうに。」

「うぎぎ、ぐうの音も出ない正論……」

「あ。後この数倍はあるんで、覚悟の準備はしといてくださいよ~」

「ひぃ~~~」


 短く残酷な現実を告げる東藤に、さっきと同じような悲鳴を上げる蘇芳さん。

 その様子を後目に、東藤は部屋を後にした。


 *


「しかしすごい量だな……運ぶだけで一苦労だぞ」


 再び紙の塔が待つ部屋に戻ってきた俺達。改めて見ると本当にとんでもない量だ、一般成人男性二人がかりで両手に抱えて持って行ったというのに、一割も減っていないのではないか?


「へっへん。兄弟よ、ここは頭を使う時だぜ」

「どうした急に」


 

「これな~んだ」と東藤が見せてきたのは、いつぞや蘇芳さんとのテストの時に使っていた札だった。その得意げな顔を見て、俺はなんとなくだが奴のやりたいことを理解した。


 成程こいつ、汚名返上と行きたいわけだ。


「頭を使うというがお前、出来るのか?そんな問題ではないと思うぞ」

「大事なのは自分を信じることと、イメージだ。何でもできるって全能感を信じるのさ、常に」


 そういって奴は地面に魔法陣を描いていく。

 俺は目を見張った。おぼろげな記憶だが、今コイツが描いている魔法陣の柄は蘇芳さんが俺らをギルドへ迎え入れた時と同じ柄のように思える。つまり、転移!


「入れ替えじゃなかったのか、すごいなお前!訓練の時じゃできてなかったのに!」

「ちょちょいちょいちょい……!集中してンだから、少し静かにしろって……!」


 足元に描かれた魔法陣が薄らぼんやり光りだす。


「行くぜ、見様見真似の転移装置!」


 素人目で見た限りでは蘇芳さんの魔法陣とそん色ない輝き具合だが、どうだ。

 これで成功すればかなぁり楽になるぞ!

 


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