30:束の間
蘇芳さんが指定した四日間の特訓期間が終わり、俺たちは部屋で寝っ転がっていた。
ヘルトスさんが合流した後訓練は続き、結界を纏うスピードや強度の強化にいそしんだ。
その頑張りのかいあって、東藤もかなりのスピードで展開できるようになったようだ。勿論俺も。
「明日から、どうなるんだろうな」
「さあなあ。取りあえず今日は休めって事らしいしまだ向こうも決めかねてんじゃあねえの?」
東藤の言う通り、蘇芳さんもみんなも俺たちの育成だけがタスクってわけじゃあない。予想外の出来事に対してそこまで迅速に対応できるというわけでもないだろう。次の指示がだされるまで、せいぜいくつろいでやるとしますかね。
「そういえば兄弟よ、お前夜になるとじゃっかんだけどテンション上がるよな」
「そうかあ?自分では別に意識してないけど」
「ふぅん、単に夜型ってだけなんか」
「ああ~、それはあるな。今思えば、夜型人間だからこんな夜に真価を発揮するような加護がついたんかもしれん」
東藤の指摘にはっとして気づく。
案外、自分の適正というか性質というのは把握しづらいものだ。
「夜型なのもそうだが、ここの世界の夜はさ、やけに明るくないか?おかげでただでさえ悪い寝つきがより悪くてよお」
「んんん?そうかぁ?俺ぁ別に何とも思わんけどな。元の世界でも間接照明とかつけっぱで寝てたし」「マジかよ、それで良く寝れるなお前」
俺が食い気味に驚きの言葉を漏らすと、「兄弟が神経質なだけだ、俺がふつーなの」と返ってきた。普通は真っ暗にして寝るもんだと認識していたが、これがカルチャーショックってやつか。
「ほれほれ、神経質な坊ちゃまはもうねまちょうねえ。」
「ぶん殴られてえなら早く言えよ、日が昇る前の加護が乗った最大威力でやってやるから」
「わぁこわい」
*
翌日、俺たちは変わらず練兵場まで行き、指示が出るまで昨日と同じように結界術の特訓をつづけた。一先ずヘルトスさんから合格はもらったものの、彼に勝てるかと問われれば間違いなく勝てない。なら努力しておいて損はない。他にやることもないし、この時間の練兵場は日陰だから過ごしやすいしな。
「展開!」
「おぉ~」
やはり俺はイメージを具現化するように結界を展開しないとうまく行かない。東藤は加護の助力もあるのか、そうではないらしいが……これが才能の差か。ちくせう。
ともかく、そのイメージを少しでも高めて硬度や展開速度を速めるため技名をつけることにした。
「もっとカッコいい技名ないかね、こう……ウルトラバリヤーみたいなさ」
「あぁ、そりゃあいい技名だ。是非自分で使ってくれ」
「反応わるぅ~。んだよォ、結構良くね?なんちゃらバリヤーって。ウルトラはともかくよぉ」
東藤のネーミングセンスが壊滅的だと分かったところで、来客が訪れた。
書類の束を小脇に抱え、あわただしく練兵場に足を踏み入れた男の人は俺達を見つけて駆け寄ってきた。
「あぁお二方、ここにいた」
「んぉ?蘇芳さんからなんか言伝っすか?」
「察しが良くて助かります、これを渡すようにと団長から」
「団長、へえ。あの人団長って呼ばれてんだ。」
「そらそうだろうよ、この施設は蘇芳さんが作ったんだからよ」
適当に会話を交わし、俺たちは男の人から手紙を受け取る。
「詳細は私も把握してませんが、その紙におよその指示を書いたと聞いてます。それでは、先を急ぎますので私はこれで」
白衣を翻し、早足で練兵場を去っていく男の人。
彼も研究やら襲撃の対応やらで忙しい中手紙を届けてくれたのだろう。感謝しないとな。
「さてさて、なんじゃらほいっと……」
目を走らせて内容を確認してみる。成程、この前説明していた次の目標に向けて、いよいよ本格的に進撃に向けて軍備を進めていくと書かれていた。
怒涛の展開に、俺は息をのむ。
この世界に呼ばれてから約一週間、とんでもない出来事の連続だったが……いよいよラノベよろしくの展開になってきた訳だ。いやはや……すこし、緊張してきたな。
「取りあえずは……、待機ってことらしいな」
「そうだな、練兵場は好きに使っていいみたいだからある程度訓練を続けつつ、準備で手伝えることがあるか聞いて回ろうぜ」
そうして、俺たちは訓練に戻った。腹が減ったら、昼食を食いにギルド本館へ戻って、それから指示を仰ぐとしよう。
*
「ごっそさん」
「お粗末様」
「あ、美味しかったっす。ありがとうございました」
練兵場から歩いて十数分という所に、食堂があった。古き良き雰囲気が醸し出された日本風の作りの食堂は、俺と東藤の心に癒しを齎す。
味もとてもおいしく、素晴らしい昼食だったな。
「さあてえ、行くか。ぶらり手伝いの旅」
「そうだな、手当たり次第に声かけていこう。人手はどこでも足りてねえはずだ」




