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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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28:結界のイメージ

 キシュアが蘇芳さんに呪術を自分にぶつけろと言いだし、蘇芳さんはそれを承諾した。

 そもそも蘇芳さんは使えるのか、さっきの話からてっきり使えないと思い込んでいた。乗り気ではないとのことだから、実用レベルではないってことなのかね。


「キシュアクンの腕と、そこにある木片をよぉ~っくみとって下さいねえ……!」


 蘇芳さんはおもむろに屈み、キシュアの隣にそこらへんで拾った木片を置いて、目測で数メートル離れる。どんな呪術を発動するんだろうかと、俺はワクワクして事の顛末を見届ける。


「はぁッ!」

「――――――ッ」


 ぞわり、と背筋を冷たい水がしたたり落ちる様な感覚を覚える。これが呪術を発動するときの感覚か、成程嫌な感じだなぁ。

 


「っくふぅー!シュウイチさん本気出しすぎ、捻じれきれるかと思った!」

「あはぁ、そらすみません。左右で威力を調節するなんて芸当、僕にゃあ到底出来やんので木片を木っ端みじんにできる威力でやらせてもらいました」


 キシュアの右に置かれた木片は原型を残さずに、ぺしゃんこになっていた。対してキシュアの腕は全くの無傷であった。それでいてキシュアは自由に動けている風だったので、東藤が口にした動けなくなるという弱点もないように見える。つまり、部分的に結界を発動させて、機動力は担保しつつ呪術に適応していくってことか。固定観念が崩れていくようだ。俺の中でのイメージではあくまでも囲い、相手を逃げないようにする術だったが、成程どうして汎用性が高い能力だな。メインウェポンとして申し分ないぜ。

 

「呪術に対しての対策は色々ありますが、これが一番簡易です。ですんで、キシュアの指示のもと次に学んでもらう技術は、この結界術の応用!これができるようになれば、晴れてソルジャーの完成ですよ!」「それに加えて外法の種類なんかも覚えて対応出来る様に頑張ってこうな!」

 

「結界術ならまけねえぞ東藤、俺の面目躍如だ!」

「へ、俺だって万能加護さんがついてんだ。今回も俺が一歩先を行ってやるさ」

 


 *



 特訓を始めてから四日目。今日で予定していた日程の最終日。俺たちはかなり焦っていた。

 二日で蘇芳さんからのテストをパスしたまでは良かったが、次の課題はかなり難問で解決の糸口を見つけ出せないでいる。特に東藤はかなり苦戦しているようだった。


「だぁあァー!むっじいなぁこんちっきしょう!」


 疲れた東藤がばたりと倒れて天を仰ぐ。

 

「はっは!そりゃ一朝一夕で出来たら苦労しない!それでもかなり覚えはいいぞ!誇れ!」


 セレンさんの用意してくれた飲み物をがばがばと飲み干しつつ、俺は荒れた息を整える。東藤ほどではないが、苦戦しているのでだいぶんグロッキーだ。


 能力を発動するために必要なのはイメージ。想像だ。

 しかし固定観念がそれを阻害する。結界とは動かないものであるというイメージが効果を低減してしまうのだ。これはただ単にがむしゃらやりまくるよりも、何かアプローチを変えないとなかなか習得には至らないかもしれないな。


「ヘルトスの旦那がいれば、もっと建設的なアドバイスができるんだろうがないものねだりをしても何もならん。俺で我慢してくれ!」

「いや、キシュアの教えがわりぃって話じゃあねえさ。この技術がべらぼうに難しいってだけだよ」


 俺と東藤はキシュアの言葉を否定した。確かに専門家の意見や指導があれば何ができることは増えただろうが、苦労することには変わりない。是非もないことだ。


「それはそうとなんで兄弟はそんなに結界術に長けてんだ?やっぱ才能なのかしら?」

「別にそんな大した話じゃねえよ。誰しも人間なら得手不得手がある。俺の場合、それが結界だったっつーだけだろうさ」

「一理あるが、加護の影響ということもあると俺は思うぞ。何しろアキラの加護はまだまだ分かっていないことが多いからな!」


 確かに、と俺は頷く。

 特定時間だけに発動する身体能力の向上と、ゾンビよろしくの回復能力だけだと思っていたが、まだ未解明のトンデモ異世界チートが俺の中に眠っている可能性もある。


 夢が広がるな。



「ともかく!今は全力で出来ることをやるのみだ!さ、後少しで昼飯だ、頑張ろうな!タマキ!アキラ!」

「おっす」「しゃぁ!今日こそ体得してやんぜ!」


 *


 昼食後、俺は食べながら考えていたことを実践に移す。


 イメージの仕方を変える。午前中は体の一部に結界を張り、そのまま動くようなイメージを持っていたが、そうではなく体全体に薄く幕を張るようなイメージに変えてみる。俺の体自体を結界として認識できれば、何かが変わるのではないだろうか。


 

「包囲。覆え……自分を……。イメージするのは、常に……!」

「ん、お?おぉ!!いいぞアキラ!その調子だ!そのままそれを保て!」


 行けている。いい感じだ、薄いオーラのようなものが体を覆っている感覚をしっかりと知覚できている。

 

「動けるのか兄弟!?」

「多分、いける……!」


 ゆっくりと、組んでいた手を放し歩き出す。

 やっぱりだ、想像通りに自由に動けている。手を閉じたり開いたり、軽く跳ねてみても何ら問題なし。


「おやおやおや、これは……もう第二結界を実現させるとは。私の予測では後二日程かかるとよんでいましたが……、いやはや素晴らしい。えぇ、とても良い結果ですよアキラ君」

「ヘルトスさん!なんか用事あったんじゃ?」

「えぇ、ですがシュウイチ君が言っていたでしょう、君達の援護を最優先にすると。ですので、ひと段落つけてここに馳せ参じた訳です。結界術の事ならば、一家言ありますのでぜひ頼ってください」


 これは何とも心強い助っ人だ。キシュアはそこまで結界に明るくないようだし、東藤も俺もこれ以上進むには何か取っ掛かりをつかまないといけなかったところ。まさに渡りに船だ。


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