27:呪いといわれる所以
曰く、自身の中にあるエネルギーのマナとそこらへんにある何かしらのエネルギーを混ぜ合わせて技を発動しているという。しかし、呪術を使える人間がこちら側では天城さんしかおらず、当の本人とは犬猿の仲で協力を望める関係にないため解明がかなり難航していることから、これも数ある予測の一つらしいが。
そう考えられている根拠として、ほぼ絶命しかけた怪物が幾度となく技を発動して最後っ屁のように攻撃をしてきたことが挙げられている。魔法と全く同じメカニズムなら、自分の命が尽きようとしているときに、一発だけならともかくとして、何度も攻撃を繰り出せた事の説明がつかない。
「よしんばこの仮説が間違っていたとしても、僕らが扱い、勝手知ったる技術とは違うってことですわ」
魔法なんていう能力がありながら、ここまで人類が追い詰められた理由の一端が分かった気がする。これこそ何でもありのチートじゃないか。呪いと呼称されていることから、そこまで良いイメージを持たなかったが、成程どうして……。その場にいる生命、ありとあらゆるモノからエネルギーを奪い、使う。某ガキ大将もびっくりの横暴さだ。そういったチートは転生特典で人類の特権じゃねえのかよ、ここの神様は実に公平であらせられるらしい。
「とまあ、ある程度呪術の性質を理解していただいたところで、その次のしおりの部分を見たってください」
次の紙には、技の発動の予兆や効果、条件などと題が書かれていた。
「僕やこれまでの記録から割り出した様々な術と、それらに対しての対応策を記してます。よう見てほしいんは上から三つ目、そこを見てください」
蘇芳さんの言葉に従い、俺は神を上から見ていき言われたとおりの項目で目を留める。そこには怪物が突撃してきている絵と共に、三行程の文章が書かれていた。
「東藤クン、恐らく君のやりたかったことがここに書いとります」
「え、俺?」
「はい。先の試験で君がやろうとして失敗したアレ。アレ何で失敗したか言うたら、魔術では実現できやん事を魔術のプロセスでやろうとしたから変な結果になってもうたんやと思います」
はぁ成程。蘇芳さんと俺の位置を入れ替えるっていうことは、術の対象に自分以外の生命を選んでいるわけだから、俺らの知識にある魔法だと成立しない。故にエラー吐いて返ってきたってことか。なんだかプログラミングみたいな仕組みだな。俺はそういった知識を持っていないので適当にそう思ったというだけだが、もしその道に精通した人間を召喚できれば、かなり効率よく魔法を開発、運用できるのではなかろうか。
「かなり無理やりな工程でしたが、おそらくは東藤クン。君の加護が呪術を魔術で何とか再現しようと頑張った結果でしょう。僕や柊木クンがやろと思てもただ不発に終わるだけでしたでしょう」
「へえ、俺の加護ってそんなに頑張り屋さんなのね」
「そうですね、かなり面白い結果ですよ。ヘルトスさんが目ェキラッキラさせて是非解明したい言うてはりましたわ」
研究者気質のヘルトスさんは確かにそういうこと言うだろうなと、俺はうなずいた。
どっちかっていうと俺もそっち側の気質なので、完全同意だ。
「ここに書いてるのは怪物共が徒党を組んで互いに位置を入れ替えながら挟撃をしてきた時の事です。これ、君のやりたかったことでしょう?」
「あぁ、ずばりこんな感じっす。あんときゃ俺と蘇芳さんじゃなくて兄弟と入れ替えるつもりだったけど」
「この時僕ぁ居らんかったので記述だけでしか知りませんが、手も足も出ず蹂躙されて土地を失ったとあります。記述をもとに考えて、転移術の亜種……或は転移がこの術の派生なのかもしれませんね」
明確に区別されているわけではなく、便宜上呼び分けているだけなので大まかなカテゴリーとしては呪術も魔法も一緒の事なのだろう。それゆえに、加護はそれを認識し、出来る形で実現させようとするということか。天城さんが呪術を扱えるっていうのも東藤と同系統の加護を持ち合わせている為……フルオートかセミオートかはさて置いて、生物で言う系統樹が同じならば加護で実現可能なのも納得できる。
「そして次の行には、それに対しての対抗手段を記してます。これは僕が実践で試した結果です。この記述を先に読んで予習できてたので、僕の指示のもと精鋭の部隊で殲滅できました。」
対応策はごく簡単なもので、自分自身に結界を張るというものだった。
成程、あの真っ黒男と戦った時ヘルトスさんはそうしていたのだろう。呪術なんてトンデモ能力があればあの場の全員が死んでてもおかしくなかった。あんな大量の命を捨て駒にできる奴なのだから、それは間違いない。まあ、あの怪物は戦う気がなかったのかもしれないが。
「そこに書いとる通り。結界には呪いによる干渉をある程度レジストする能力がある」
「でもそれだと動けなくならん?」
それもそうだ。周りの空間を固定して防御や捕獲をするのが俺の知る結界。しかしこの紙に書かれている内容を見るに、結界を張りつつ動いている。
「そうか、お前らはまだ基礎しか学んでないもんな。いいか、結界に限らず能力ってのは発展があるんだ。俺の拳を見てみろ」
東藤の問いにキシュアが答え、立ち上がり宙に拳を掲げた。
「ふん!――今、俺の腕から握りこぶしまでを結界で覆っている。見えんだろうがな」
「え。マジ?」
一見、何も変わらないように見えるキシュアの拳。俺が教わった結界だとそこに半透明の箱が出現して、対象を囲うはずだが……?
「シュウイチさん、適当な外法を俺に当ててくれ!」
「んンンン……。気ぃ乗りませんけど、百聞はってやつですかね。ほなら君ら、ちょっと離れてようみとって下さいよ……加減ききませんから、僕のそれ」




