24:新技披露劇
「俺の結界だと、たぶん無理だぜ。ヘルトスさんならいざ知らず俺の形成スピードだと絶対逃げられる」「ンなもんは織り込み済みよ。だからコレ、もっとけ」
東藤が渡してきたのは、小さい紙。なんかのスクロールだろうか。
蘇芳さんやキシュアには見られないように、俺のズボンのポケットに渡してきた紙を忍ばせてきた。なんだ、これは光線の魔法をスクロールで、超至近距離でぶっばなせって事か?
「当たらねえと思うぞ」「何想像してんだ、これは光線じゃねえぞ。そもそも、逃げ回る相手に当てられる攻撃なんてそうあるもんじゃねえ、だからお前だ。」
俺を指さして笑う東藤。怪訝そうな顔を俺がしたのだろう、口角をさらに上げて東藤が作戦を説明する。
「ぶっつけ本番だけどよ、たぶん出来る。光線で俺が蘇芳さんを攻撃出来たら、自分を結界で囲ってくれ」
自信たっぷりの様子に、俺はうなずく。
俺の実力では、逃げ回る蘇芳さんを確実に追い詰めることはできないだろうから、相棒の自身に乗っかるとしよう。
「任せるぞ、タマキ」
「任せとけ、アキラ」
短く言葉を交わし、俺たちはこぶしを合わせた。
*
「ほう?東藤クンが中距離から狙撃、それを避けとる間の隙を柊木クンが絡めとる……と。いいですねえ」
予想通り、俺の結界で蘇芳さんを捕まえることはできない。
俺の技量では、結界を張る空間を指定し、イメージの後展開という段階を踏む必要がある。時間にして数十秒と言ったところだが、それでは動き回る獲物を捕らえることなんてできないだろう。
さて、これからどうするつもりだ。相棒。
「おっとぉ。小癪な」
東藤が出したのは煙玉のような魔法。昨日キシュアが教えていたが、もう実用レベルまでもっていったのか。すごい奴だ。
「はぁっ!」
「エネルギーの揺らぎ、雰囲気で技の発動はなんとなぁく分かります。やけん、目つぶしはそこまでええ手ではないですねえ」
絶好のチャンスだと思い結界を足元から広げるように展開したが、やはりというべきか、躱されてしまう。ま、だめで元々。あいつが好機を見つけるまで何度でもやってやるさ。
「いいぜ兄弟っ!」
東藤も光線を打つ手を止めないでいる。
時間が許す限り、攻撃をやめない。
「あと6分ですよ、気張ってくださいねえ」
手を叩きながら煽るように蘇芳さんが言ってくる。このままいけば何もできずにおわってしまうだろう。東藤の作戦も、正面突破というわけではなく隙をついて搦め手で逆転勝利を狙うやり口のはずだ。なら俺はどうする、何が正解だ?
「オラオラオラァ!まだ体力ァ尽きてねええ!」
「まだ増やせますか、君の加護は強力ですねえ。素晴らしい!」
煙幕の中から大量の光線を四方八方に打ちまくる東藤。
みえみえの時間稼ぎ、その行動にはっと気づく。
東藤が俺に期待しているのは、一瞬の隙。奴の作戦を実行するための下準備。
それを俺に作れということだ。
東藤が作戦を実行する際、目敏い蘇芳さんは必ずそれに反応し、妨害するだろう。そこで俺の出番。蘇芳さんが無視できない行動をして、ヘイトを買う。最初に言われた通り、存分に俺を魅せてやるさ!
「連続……結界……はつどォ――ッ!」
捕まえるよりまず囲うが易し。
蘇芳さんの周りに薄い結界を同時展開する。
複数の結界で囲うってやり方はこれが初めてだったが、上手いこと形になった。
先ずは逃げ場を制限させて、フィールドを狭めるのに成功した。
後はフィジカルのごり押しで、東藤のアシストに徹してアイツが動きやすいようにやってやる。
「ほぉ!こりゃあ凄い、柊木クンの結界のセンスはずば抜けてますねえ。」
「まだまだ行くっスよォ!トラトラトラァ!」
「あぶなっ。それ、使い方間違ってますよ」
勢い任せの突進。まだ加護が発動する時間じゃないので、俺の運動能力は平均を下回る程しかない。だから、あれこれと手をこねくり回すより、下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる戦法とあたって砕けろの精神で吶喊する。これで俺が戦闘不能になったとて、その隙に相棒が仕留めてくれることを信じて。自分自身を結界で囲めるだけの余力を残し、ここで使い切ってやる。
「考えなし――ではないか、よろしい。ほな全力で撃ち落としてやりましょ」
何度も結界と突進を繰り返し、東藤の煙が完全に晴れたころ。
「結局、なんもなかったけど……東藤クン?まだですかね?」
「お察しの通り、もう準備万端ですよ……!」
不敵に笑う東藤。
良かった、あとは俺自身を結界で囲んで……、アドリブで東藤も囲ってやった方がいいだろうか。
「君ら、自爆するつもりちゃいますよね」
いつもより数倍低い蘇芳さんの声。どすの利いた声に少し驚く。
「それをした瞬間、僕は君らの足を即刻切り落とします。洒落でも比喩表現でもなく、腱をスパッとね」
「杞憂、んな自己犠牲持ち合わせてねえの、分かってんじゃないの?」
蘇芳さんの言葉に、東藤が先ほどと同じような煙幕を張りながら答える。
てっきり俺も俺の治癒能力まかせの特攻だとおもったのだが、違うのか。
「おっと、地面が」
蘇芳さんが、東藤の光線をよけた先でよろける。煙幕でよく見えないが、俺の突撃やらなんやらで地面がえぐれていたので、それで足元をすくわれたのだろう。
「!兄弟ッ今だぁ!」
「っ!おう!」
東藤の叫び。すかさず俺自身を結界で囲う。
「柊木クン、何を」
「行くぜェ……!シェイカーァ!」
東藤が勢いよく合掌し、パンッという音が響いた。




