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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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23/51

23:異世界訓練

 息を吐き、木刀を振るう。それと同時に魔術を展開し、木刀を強化。

 でかい木をそれで叩き、きれるまでそれを繰り返す。

 

「ふっ……!ふんっ……!ふっん……!ふぅ……ー」


 ヘルトスさんとの修行は単純なタスクをこなすだけだったのでまだ楽だったと思わされる。

 二人してかなり扱かれて、一日目はへっとへとになって泥のように眠った。


 

「いい調子だタマキィ!ここいらで出力を上げていけ!」

「了解っ……はぁぁっ!!」


 東藤は俺と違い、ヘルトスさんがあの怪物に対してはなったような光線みたいな魔法を教えられている。


 判るのだ。理解はできるのだが!

 俺も東藤のようにこう……技名をばぁーっと叫びながら繰り出す必殺技みたいな魔法を使いたいという少年心に嘘はつけないのだ。


 

「くそったれぇぇい!!!」


 やるせない気持ちを上乗せし、八つ当たりとして木を思いっきり叩く。

 初日は何度も木刀側が折れたものだが、一日で結構上達するもので、半日経つというのにまだ折れていない。強化と結界魔法は原理が単純で俺にあっているらしく、ヘルトスさんとキシュアの教えが分かりやすいことも相まってかなり成長していると自負している。


 モノを指定してもやもやとしたオーラみたいなので囲い、それを固めるようにイメージする感じだ。日本で育った身である俺は、漫画等でそういったオーラやら気やらについて造詣が深いので、ここの世界の人より成長が早いのかもしれない。

 

「アキラも調子よさそうだな!いいぞぉ!このままいければ、今日にでも初級訓練を終了できるかも知らん!すごいぞお前ら!」

「まじか、やる気……出てきたぁ!」


 ヘルトスさんもそうだが、キシュアはそれに輪をかけて人をその気にさせるのがうまい。

 もともと運動不足の一般成人男性二人がここまで頑張れているのはひとえに彼らの鼓舞によるところが大きいだろう。


「おう!昼飯前にはシュウイチさんも交えて審査してみよう、きっと次に進めるぞ!」

「呼びました?」

 

 名前を口にしたとたん、背後から現れた蘇芳さん。

 一体いつから俺達をのぞき見していたのか、或いは盗聴でもしてたのか。いずれにせよ、いい性格してるなぁ。そんな蘇芳さんに対し、慣れた態度で先ほどのことを説明するキシュア。


「実に好ましい。素晴らしい進捗ですよ君ら、僕の想像を優に越している。あいつ等が君らを恐れてここに来たのは、この成長速度を見抜いとったんかもしれませんね」


 ほめ倒されて、まんざらでもない様子の東藤。かくいう俺もついつい頬がゆるんでしまう。


「ほんなら早速、この僕の目ェに魅せてくれますか。君らの能力を」


 両手を広げて、俺たち二人の目の前に立つ蘇芳さん。

 ヘルトスさんがやったように、彼自身が次のステップへ行くための障害であり、審査官ということか。なら、容赦しない。前のヘルトスさんの時は舐めてかかって呆気なく敗北を喫したが、今度はそう簡単に負けやしない。


 俺の結界とキシュアの指導のもと学んだ強化術、東藤の中距離の光線等の魔法。勝ち筋はある。


「作戦タイムはありますかぁ~?」

「ふん、まぁいいでしょ。二分間の休憩を挟んだ後に開始としましょ」


 東藤の機転で、時間稼ぎに成功する。

 蘇芳さんに聞こえないように、しゃがんでこそこそと話し合う。


 *


「よぅし。なら始めますよ。ヘルトスさんと違て僕はちょこまか動くんで、せいぜい頑張ってください。判定は僕です、僕視点でどれだけやれるかを測るテストやってことを、念頭にね」

 

 開始の合図をキシュアが放ち、俺たちは散開する。

 基本的にはヘルトスさんの時と同じ戦法を取って、東藤が蘇芳さんを追い詰めて俺が結界で囲む。しかし今度は油断しない、よく観察して俺たちの行動に対し、どんな反応を見せてくるのかを見てからそれを封殺してみせる。


「ふむふむ。初手は様子見ですか、ええですね。慎重。君ら位の歳やと勢い任せの攻めをよくしがちですからねっっと」


 簡易的な魔法で至近距離を瞬間移動していく蘇芳さん。こちらの様子をよく見ているので下手に攻勢に出れば、激烈なカウンターを食らうこと請け合いだ。


「さてさて、どう出ます?僕ァいつでもいいですよ。因みに、時間制限あと9分なんでお忘れなく」

 

 後付けで伝えられた時間制限。なんてこった、じっくりとっくり攻め方を吟味していくつもりだったが、そうはいかなくなったぞ……。散開したせいで話し合うこともできない状況で、この城を崩す突破口は……。


「兄弟ーッ!」


 東藤の叫び声で、ハッとする。

 そうだ、時間制限があろうとなかろうと関係ない。俺が取れる手札で、一番と思える手札を切るだけだ。


「行くぜタマキィ!」

「おうともさアキラァ!」


 手のひらを合わせ、結界を張る。


「おっと、単純。やけンなったわけとちゃいますよねぇ?」

 

 よけられる。当然。

 次の結界を張る。


「おっと。今のはいい狙いですね、その調子」


 行けるかと思ったが、瞬間移動で回避された。想定内。

 また次の結界だ。


「ふぅん?それは無駄やと思いますよォ?」

「スタミナ勝負ってわけじゃねえっすよ!」


 次よ次よと結界を張っては、よけられてを繰り返す。

 いいぞ、ここまでは俺と東藤の想定通り。


「後7分、さてさて。こっからどうせめてくるんですかねえ」


 楽しそうにあごに手をやって笑う蘇芳さん。


「今に度肝抜いてやるっすよ」

「早うしてもらわんと、僕お爺ちゃんになってまいそうですわ」


 

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