22:テストと前準備
今までつけていた腕輪と新しく渡されたモノを付け替える。
新しい方も、最初の奴と同じくがしゃがしゃと音を立てて俺の腕にジャストフィットするように形を変えた。一体どうなシステムで動いているのか理解できないが、格好いいので良しとしよう。
「どうです?腕、変な感じはありますか?」
「いんや、丁度いいっす。重くもない」
「良かった。ほんならそれ基本ずっとつけたって下さい。ギルドにつけているような遠距離防御のバリヤーが自動で展開されるんでね」
防御機構とはそれのことか、すごいな。俺が感心してまじまじと腕輪を見つめていると、蘇芳さんは話を続けていく。
「朝も早うから呼び出してすみませんね。一刻も早くこれを渡したかったもんで」
見ると、蘇芳さん自身も同じようなものを装着している。実用可能と同時に、量産もできるようになったのだろうか。さすがにそんなに早くはできないだろうと思うが、俺の想像する蘇芳さんだと「できましたぁ~」って笑いながら大量に取り出してきても不思議じゃないんだよな。
「コレについては、そこまで気にしやんでええです。君らの身ィ守る盾なんやなぁ程度に認識したって下さい。」
「じゃあ、本題に移りますか」
東藤が蘇芳さんをおいて、先に腰かけた。こいつ怖いモンなしか。
「そうですね、立ち話もなんですから腰据えてしっかり話し合いましょ」
これからの事について、蘇芳さんは書類を取り出した。それを俺たちに見えるように板にはりつけて説明をしだす。プレゼンみたいだなぁ……。
「ほんなら、まずはこれを見たって下さい」
一枚目の紙に書かれた内容をつらつらと説明していく蘇芳さん。
そこには昨日までの一連の流れが書かれてあった。俺らと蘇芳さんたちの認識に、齟齬が無い様にすり合わせをしているのだろう。
「そして、これからの事が……横の紙ですね。その後ろにある絵ぇは僕が描いた件の彼女、天城クンです。一応彼女を知る人からはめちゃ似とるって言われてるんで、参考までにこの容姿を覚えといてください」
これから俺達が探すことになる女性が描かれた肖像画。長い黒髪をリボンで束ねた凛とした大人の女性という雰囲気を醸し出している。きれいな方なんだなという所感だが、似ているならこれをコピーしてばらまけばかなり効率的に探せるのではないだろうか。
いや、そんな探し方をしては探される側としてはいい気分ではないだろう。良好な関係を築いていくにあたって、それは悪手だ。止めた方がいいな。
「一先ずの大目標は彼女を取りこむこと。その為には領地を取り戻していって情報を集めがてら、基盤を堅牢に固めていく必要があります」
「ゲームの盤面見たいに考えたらわかりやすいかね」
東藤の言葉はかなりわかりやすく感じた。確かに戦略シミュレーションゲームと捉えれば、かなり動きをイメージしやすくなりそうだ。
「お、東藤クンはその手のゲーム好きやったんですか?良いですね、その感覚でやっていければ君らの能力で大方なんとかなるはずですよ……と!いうことで!」
手を勢い良く叩き、蘇芳さんは板を指さした。
「今から四日間!圧縮訓練を受けてもらいます!」
「圧縮ぅ?」
紙をめくって、今後のスケジュールについて説明を始める蘇芳さん。
みると、四日間の訓練の後に何やらテストと書かれている。
「一刻の猶予もないこんな状況ですが、全力で君らを育て上げます。僕の命にかけてそれまでは何があろうと守り切って見せますんで、安心して育ってください」
ということで、俺達はあれよあれよと言う間に練兵場へ向かうことになった。
蘇芳さんの言う通りに時間的余裕もないし、早く動けば動くほど俺たちが元の世界に帰るのも早くなるから断る理由もない。
「おう!来たなァ、シュウイチさんとお連れ共!」
「相変わらず元気ですねぇ~、ケインクンは。」
昨日襲撃を受けた場所とはまた違った場所にある練兵場は、平野に掘っ立て小屋と長椅子が並べられた簡素なものだった。てっきりコロシアム的なものを想像していたが、案外そんなもんじゃないのかもしれない。
「ようこそ俺の庭へ。剣に魔、色々な術を学ぶならここは持ってこいだ!」
前まで俺達を扱いてくれていたヘルトスさんはまた別の急ぎの仕事ができたとのことで、研究室に籠ることになったらしい。そのため、俺らの訓練相手および指南役として抜擢されたのがこのキシュアだ。彼は傭兵部隊の指揮を執る立場にあるらしく、育成にも向いているだろうということでの起用らしい。第一印象では明るい青年という感じだったのだが、案外すごい奴だったのか。
「コレからここでみっちしびっかし立派な傭兵に仕立て上げてやる!楽しんでいこうぜ!」
「というわけです。ここから先、僕も精一杯フォローするんで何でも言ったってください」
方針を変更した結果、全ての業務より俺らの育成が重要と定められ、その結果この場所におけるリソースがほぼ俺達に注がれるようこととなった。有難いことなのだが、期待に押しつぶされそうだ。




