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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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21/51

21:武装強化

 俺は、少し悩んで蘇芳さんの手を取った。確かに怖いが、ぶっちゃけ常に狙われているのであれば、どこにいても同じだし、そもそもなぜ俺が逃げなきゃならないんだという半ば逆切れのような感情もあった。


「柊木クンはともかく、君まで僕の手ェ取ってくれるんは僕としてはとてもうれしいですねえ。東藤クン」

「よく言うぜ、予想的中って言葉が顔面に張り付いてるっスよ」


 俺の手に重なるようにかざされた東藤の手。

 心底驚いた、アイツはずっと帰ることを目的にしていたから自ら危険な選択肢を取るとは思わなかった。


「なんだよ、もう長い付き合いになるのに、俺のことなぁ~んも分かってねぇじゃん。俺はできることなら何でも使って目的を達成する人間だぜ?」

「いやぁ!結構!僕と同じ質ですね、流石同郷!」


 固い握手を交わす俺達。決まったのだ、俺たちの道は。

 なら俺は突き進んでやる。勿論東藤も一緒に。


「おやおや、君達は同じ出身地なのですか」

「そういや初めて会ったときそんなこと言ってたな」


 多分、同じ日本人だってことだと思うけど。それだと、俺は違うみたいに聞こえるな。

 なんか意図があるんだろうか。


「なんとなぁく関西の気配感じたんやけど、ちゃいます?東藤クン」

「まぁ、出身はそうっすけど。こっち来るまでは関東に住んでた」


 まさかの正解。なんだ、関西の気配って。怖いなこの人。

 

「あはぁ、中らずと雖も遠からずと言ったところですかぁ。」

「それでも半分は正解じゃねえっすかすごいっスね」

「ふふん、僕の慧眼舐めてもろたら困りますわぁ」


 自信満々に細い目を親指で見せてくる蘇芳さん。


「ほら見たって、このキラキラしたお目目」

「じゃあ兄弟は?その気配とやらは感じないんすか?」


 蘇芳さんのギャグを華麗にスルーして、俺に話題を振ってくる東藤。

 渾身の出来だったであろうボケを封殺されて、不満を隠しもしない蘇芳さんはこちらをじっと見つめてきた。


「いやぁそれがねえ、分からんのですわぁ。いっつもやったら東藤クンみたくパッと頭ン中にこれかなあ~っちゅうイメージが浮かぶんですけど……柊木クン、君海外とかに居りました?」

「いや、日のもとの国から一歩たりとも出たことねえっす」

「あらホンマですかぁ。何ででしょうねえ……」


 体を左右に揺らしてうんうん唸っている蘇芳さんと俺らの間にセレンさんが割り込んで、話をぶった切る。


「そろそろ寝ないと明日の業務や作業に支障をきたしますよ」

「おや、もうそんな時間ですか。」


 そうか、立て続けにアクシデントが発生したせいで思考の外に追いやっていたが、男が襲来してきた時点で日暮れ間近だったのだから、もう深夜と言える時間帯だ。


「ほんなら、明日のことはまた明日決めましょか。どうぞゆっくり休んだって下さい、警護の体制は万全ですから」


 俺はその言葉を信じ、用意された部屋に戻る。元々は別の部屋だったが、別々に守ることは難しいとのことで、同じ部屋になった。是非もない。


「ここだよな。」

「おう、これまたご丁寧にひらがなで書いてあらぁな」


 恐らく蘇芳さんのお手製であろう掛看板が、扉に吊るしてあった。分かりやすい目印だこと。

 この世界の文字は、基本ローマ字とひらがなを足して二で割ったような文字なので、こうして明らかに読める文字で書かれていると、このように目印になるので助かる。

 読み書きができないのは少々面倒だが、また新たに言語を学ぶってなるといささかこの固い頭が拒否反応を起こしそうになるからなぁ……。


「!」「どうした兄弟」


 部屋に入ると、空気が変わったような感覚を覚える。

 ヘルトスさんの結界とはまた違った、出入りの度に空間がゆがむような感覚を覚えた。恐らく蘇芳さんが言っていた強化した警護ってのはこれのことだろう。

 東藤はそこまで敏感ではないのか、気にしていない様子だ。


「さ、今日は遅いからよ。寝ようぜ。つっかれて泥みてえに寝られそうだわ」

「そうか、じゃあ明かりも消すぞ」


 こうして、とても長い一日の幕が下りた。

 さて、明日からどんな生活になっていくのかねえ。



 *


「おっはようさん!良く寝れたか?」

「起き抜けでも元気だなお前、まだ眠いわ」


 朝の陽ざしを感じながら、喧しい声に目覚める。


「蘇芳さんから言伝の手紙があるぜ」

「言伝?」


 そういって床の黒いシミのようなものを指さす東藤。

 何やら蠢いているそれは、俺が起きているのを確認するやいなや俺に何かを差し出してきた。


「なんじゃこいつ」

「蘇芳さんの使い魔的さむしんぐだろうよ、かっくいいなぁ」


 書かれていた内容は話の続きをするためまた職務室に来てほしいという簡素なものだった。

 その指示をうけて、俺たちは用意されたパンを軽く食したのち昨日の部屋に向かった。


 

 *


 

「おんや、早かったですねえ。」

「ま、早起きは得意中の得意なんでね」


 自慢げに東藤が鼻を鳴らす。


「俺はこいつに起こされただけっす。夜型なもんで」

「そりゃえらいこっちゃ。ほんなら柊木クンの目ェ覚ませられるモン見せたりましょうか」


 そういって、何かを箱を二つ取り出した蘇芳さん。


「かねてより考えてた装備型防御装置の完成形。昨日やっとできたんですわ」


 腕輪型のそれは、今つけている腕輪の代わりになる新しい装備品らしい。

 曰く、緊急時の助けになるとか。


 成程どうして、新しい装備品という概念にワクワクを隠せない。


 

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