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点滴穿石ー異世界における生存競争ー  作者: 鯱眼シーデン
巻き込まれ異世界

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18/51

18:狙われて二人

 長身真っ黒男が乗り込んできてから数時間後。

 俺の肩は完全に痛みを忘れ、何事もなかったかのように動かせるようになった。がちがちに拘束されていた東藤も、軽い打ち身ぐらいで特段後に残るような傷はなく、結局は何事もなく終わった。


「何だったんだろうな、あいつ」

「恐らくは怪物共の首魁か、或いは軍を率いる位のものでしょう」


 アイツと直に対面したヘルトスさんが、推論を述べていく。


「私自身亜人とは何度も相対しておりますが、あそこまで流暢に会話を成立させる存在は初めて見ました。加えて、私の結界をああも容易く破るとは」

「そう、そこです。」


 ヘルトスさんと俺たちの証言のもと、蘇芳さんが紙に情報をまとめる。

 先ずは身体的特徴として、青白い肌とかなりの長身。パッと見で俺の頭2個ほどは目線が上だから、2メーターはあるんじゃあないだろうか。

 次に、不可思議な能力。これは言わずもがな、ここにいる全員が理解していたが、共通認識として改めて情報を出し合った。

 

「仮にも結界に関しては一家言ある身ですが、こと結界に関してはアレの足元にも及ばなかった。故にこそ、先述の通りの推測を立てているわけです」


 実力ははっきり言って未知数。ヘルトスさんの感覚曰く自分よりも強いとのこと。

 首魁、つまりはリーダー格のこと。確かにあいつは相当強いんだろう、俺たちが全く及ばなかったヘルトスさんの攻撃を容易くいなして見せたんだから。しかし、俺にはアイツが何かを率いている風にはとても思えなかった。あのふざけた言動のせいだろうか。


「取りあえず、アレがどのような立場にあるのかはどう論を交えても推察の域を出ない。ならば考えるべきは」

「動機と、手法。その2つを特定しやんとまた寝首かかれるかもしらんっちゅう話ですね」と、蘇芳さんがつぶやき、皆がそれに同意した。


「それで、そういうって事はある程度目星がついてるんですか?スオウさん」と書類を纏めながら蘇芳さんに問うセレンさん。


「えぇ。計二回の襲撃を受けて確信に変わりました。あいつ等は東藤クンらをビーコンにしていると思われます。」

「びーこん?」


 聞きなれない言葉に、俺とヘルトスさんが首をかしげる。

 どこかで聞き覚えはあるが、東藤や俺をそれにしているとはどういうことだ?


「じゃあ、やばくないっすか?!逃げ場ねえじゃん!」

「はい。だから、正直バリバリに焦ってます僕。ホンマ、堪忍してくれって感じですわ」


 その言葉の意味を理解している二人は、話を進める。

 置いていかれている俺達三人は、互いに視線を合わせて眉をひそめた。口ぶりからしてこちらにとって痛手であることは間違いないだろうが、どうも意味が思い出せない。何かのゲームで聞いたことのある単語だった気がするんだが……。


「無知を晒すようで恥ずかしいのですが、その『びーこん』とやらは一体何を指す言葉なのでしょう」ヘルトスさんの問いに、蘇芳さんが申し訳なさそうに答えた。

 

「すんません。まずそこから説明しやんとでしたね。ほんなら、順を追って説明しましょ。あいつがどんな手法でここまで来たんか。あぁそれと、一緒に見てほしいモンがあるんで一緒に来てもらえますか?」

 

 そうして俺たちは部屋を後にして、歩きながら蘇芳さんの語るあいつらの手法や目的について聞く。

 

「先ずは手法についてですが、先ほど言うたビーコンちゅうんは、言わば電波の送受信させる道具。かみ砕いていうと、電子版の灯台みたいな感じですかね」

「つまり、俺と兄弟をビーコンにしてるってことは居場所がいつでも筒抜けになっちまってるって事。逃げ場がねえって言ったのそれが理由」


 ビーコンについて歩きながら説明され、俺は息をのんだ。

 のんきに思い出そうとしていたが、東藤の言う通り相当ヤバいじゃないか。


「成程……何とかしなければ。結界でどうにかなるでしょうか」

「いんやぁ、どうでしょねえ。僕ァ望み薄やと思いますよ。当の本人が結界を破ってきたんですから」

「うぅむ。申し開きもない」「あぁいや、ヘルトスさんのこと責めてるわけちゃいますよ。単なる事実確認です」

 

 居場所が割れている以上、いつまたあいつらが来るか分からない。

 そして、その怪物らはこっちの最高戦力で太刀打ちできるかどうか怪しいレベルの強者。もはや打つ手なしに思える。王手ではなく、チェックメイトを決められた気分だ。


「何をどうこねくり回してマーキングしたんか、それはわかりませんけど避難先である此処までこんな短期間で暴かれるはずがない。可能性から言って、居場所を把握したうえで転移か――或いは未知の能力で乗り込んできたと思うた方がええでしょう」


「それは恐ろしい。早急に対応しなければ」とヘルトスさんは顎に手をやって考え込む。

「そうは言っも、すぐどうこうできるもんじゃあねえっしょ?」


 考え込むヘルトスさんとセレンさんに、東藤が言葉を投げる。確かに言う通りだ、今スグあいつをぶった押しに行けて、かつ確実に勝てる見込みがあれば別だが、そんなものはどこにもない。


「ま、その通りです。せやから非難覚悟ではっきり言いますけど、お二方」


 蘇芳さんが低い声色で呟き、俺たちを見つめる。続く言葉は何となく想像できる。

 ここまで追いつめられていて、かつ命の危機が目前まで迫っている状況で、これ以上俺達に割けるリソースはもうないのだろう。


「早急に帰るんは、もう諦めてください」

「――」


 東藤も同じようで、蘇芳さんの言葉に言葉なく答えた。


「いずれは必ず元の世界に帰しましょう、それは約束します。でも、今は諦めてください。天城クンの捜索も続けられませんし、そしてなにより君らの命の保証ができんくなる」と俺達に説明した蘇芳さんは、深々と頭を下げた。


 確かに帰ることを至上の目的としてきたが、現状が判らないほど愚かじゃない。東藤も同じだろう。


「分かりました。取りあえずは蘇芳さんの指示に従うっす」

「助かります、是非恨んだってください」


 

 こうして、俺たちは会話をしながら蘇芳さんの案内する建物にたどり着いた。

 


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