01:始まりは、唐突に。
ご閲覧、ありがとうございます。処女作故、至らぬ部分多々あるかと存じます。どうか悪しからず、良しなにお願いいたします。
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始まりは、唐突に。
などという文から始まる物語は大抵碌なもんじゃあない。ソースは俺。
「ぁ?は?……は?!」
何かに押しつぶされもみくちゃにされたような感覚の後、いきなり重力に体を引っ張られ、何かと激突する。
受け身をとれるはずもなく、体全体でその衝撃を受け取ってしまった。
「ってぇ……なんだってんだ……?眩しいなちくしょう……」
痛みに呻きながらあたりを確認する。
「レンガ。壁。道。家。空。」
何が何だかわからない。とりあえずは自分の状況を把握しなければ話にならないと思っての行動だったが、無駄に終わったらしい。
何もわからないことが分かった。
「よぉ兄弟、はいつくばってどうしたよ」
一人頭を抱え困惑している俺に頭上から投げられた声。軽薄そうな声に反応すると、同年代ほどの青年が立っていた。
黒髪に黒色の瞳、そして何より理解できる言語。そのすべてが俺に安心をもたらした。
「おぉ……!」
心の底から湧き出た安堵の声。
「目つきわりぃなぁ、どうした二日酔いか?」
「目つきは生まれつきだよ。そんなことより!」
「「ここがどこだか知ってるか!?」」
二人の声が重なった。
「ったはぁ。やっぱりかぁ。」
先に落胆の声を漏らしたのは彼のほうだった。この現状を打開してくれる何かを俺に期待していたのだろう。それは全く俺も同じだったのだが。
「いや、でも言葉の通じるやつがいるだけでありがたい。何もわからなくて混乱してたところだったんだ。俺は東藤、トウドウタマキ。たぶんお前と同郷の一般ぴーぽー。よろしく」
「俺はヒイラギアキラ、お前と同じ理由で絶賛混乱中のしがない成人男性だよ」
軽く自己紹介を終え、俺と彼で持ちうる情報のすべてを交換した。
といっても、ここに至るまでの記憶や、生い立ちなどにさほど変わった点はなく、自称他称ともにいたって普通の日本人だった。強いて相違点をあげるとすれば、東藤はイケメン故異性にモテていたというところぐらいか。
そのため結局何もわからずじまいだったのだが。
だが、この訳の分からない状況を共有できるというだけでも十分すぎる。
「しかしなんだ、ここは一体何なんだ?よしんばお前の意見が正しくて誰かが俺らをよんだとするなら、こんな辺鄙な場所にほっぽりだすか?」
「いや、ちげぇンだよ多分。ここがこの世界における平均。文化レベルが日本と比べて低いってことさ!」
東藤曰く、ここは前までいた日本と違い、別世界……いわゆる転生をしたという。
俺も一応日本人の若者らしくその辺の文化には把握しているが、いざこうして直面してみるとあり得ないという感情が出てきてしまう。
「で!いたって平均的なこの土地から俺らの冒険譚が始まるって寸法よ。異世界あるある(俺調べ)の中でもかなり王道の部類だな!!」
俺調べという言葉の間にわざわざ括弧と言葉で表す必要があったのだろうか、と疑問に思いつつも俺はつたない頭を回す。
彼の言動に突っ込みどころはあれど、いわんとせんとしていることは理解できるし、それを否定できる材料もない。
とにもかくにも情報が足りなさすぎるのだ。
しかし、それを集めようにも寄る辺もなければ近くに人影すら見えない。
強いてあげるとするのならば近くにある民家らしき家だが、俺や彼のような恰好をした人間が友好的に話ができるとは到底思えない。そもそも言葉が通じるかどうかすらも怪しいしな。
「だけど、こうしでうだうだ悩んでても仕方ねえか……」
「そうだぜ兄弟。男が二匹もいるんだ、何とかなるって!異世界あるあるにも転生特典的なものはある場合が多いしよ!」
楽観的過ぎるのは問題ありだが、この場面においては助かる。
困惑している俺の脳ではネガティブなイメージばかりが浮かんできてしまうので、ある程度ブレーキをかけてくれないと延々とぼやいて動くのに相当の時間を費やすことになるだろうから。
さて、動くとしてどこにどう動くか、だ。
「ぃよし!んなら一番槍は俺がいただいた!」
俺が一人悩んでいると、躊躇いなく少し離れた家に向かっていく東藤。
前言撤回。少しは様子を見て動くという重要性を理解してくれないかなこの男は!!
「すんませぇ~~~~ん!!だぁれかいませんかぁ~~~~!!た~~すけ~てくださぁ~~~い!!」
「待て待て、少しは順序を考えろ!いきなりすぎるだろ!」
「えぇ?そうかぁ?単刀直入に言い切ったほうが分かりやすいじゃんよ」
家の目の前でごちゃごちゃと喚く男二人。 傍から見たら近寄りたくない案件なのは間違いないだろう。
もしここにも警察のような仕組みがあるのなら、通報されてないか心配なほどだ。
「やっぱり人、いないみたいだな。ほら観察してたら時間の無駄だったろ?」
「結果論だ。そして居留守の可能性も十二分にある以上、その論理も破綻している。」
「ま、いーじゃねえか。な?結局いるにしろ居ねえにしろさっきので助けてくんねぇのならいくらやったって無駄さ」
「ん、……まぁ、そうか……確かに……」
東藤の言葉も一理ある。
そう思い俺はとりあえずの行動の指針として、彼の意見に従うこととした。
「んじゃあ次だ。右か左、どっちに行くよ?」
東藤が指を振り、俺に問う。
従うことに決めたとたんこちらへ主導権を渡してきおってからに。
成程こいつとは気が合わんと思えてきた。
「右だな。もしここが迷宮だとしても右に進んでいけば何とかなるはずだ。」
「オぉ。俺もそう思ったんだ。お前とは趣味が合うなァ。ぃよしっ!行くぞ!」
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