《混沌》降臨~ケイオスアーク 4
次元龍の脅威は去った。各々の目視、及びフレームゴーレムのセンサーで確認できる範囲において生存している次元龍はおらず、空裂も収まっているため、戦いは終わったと言っていいだろう。取り逃がしている次元龍も居るかもしれないが、皆、今はそれを考えるほどの余裕が無いのだった。
戦いの終わりと共に、避難し、建物などへ逃げていた人たちが続々と現れ、戦闘の被害の受けた街を見渡し、サクヤ達のフレームゴーレムを見始める。その目は、雰囲気は、街を救ったサクヤ達に感謝をしているという感じではなかった。街の人々が見せている物は、確実に負の感情による物だろう。すると、一人、そしてまた一人と口を開き始める。
「何やってんだお前ら!」
「街がボロボロじゃないか!」
一人が叫び始めると、街の人々は膨張に耐えられなくなり、破裂する風船の様に一気に感情が爆発し始める。そこからはもはや止まる事のない罵声がサクヤ達に浴びせられる。
「お前達魔族が来るからこうなったんだ!」
「あの変な化け物もみんなアンタ達のせいなんでしょ!」
その光景にサクヤ達人間側は唖然とした。サクヤ達は感謝がされたくて戦っていたわけではなく、結果として街に被害が出てしまっているのも事実であるため、民衆の怒りはある程度受け入れるしかない。しかし、今サクヤ達の目の前で起きている光景を引き起こしている感情は、今回の一件だけが起因ではない、もっとドロドロとした物に感じられた。
「ちょっと待てよ!アイツらが来なかったら、俺達だけじゃなくて、アンタらも助かってないかもしれないんだぞ!」
ウェルターが反論するものの、もはや理性の言葉でどうにかなる状況ではなかった。この状況を表面的だけでも終わらせるには、サクヤ達が今すぐにでもこの街から立ち去るしかないだろう。
すると、ディナルド側の全員に、ヴェルドから通信が入る。出された命令は「即時撤退」であった。
「撤退って、僕たちは頑張って助けたのにこんなに言われて逃げるなんて、僕たちが悪者みたいじゃないか!」
「仕方ないでしょ。帰るわよ」
「でも、でもさ!」
「アーノルド!」
アーノルドは、その命令に渋々従う事にした。そして、その撤退命令に従い、多くのフレームゴーレムが撤退し始めるのであった。そして、それと同時に、エスペランザへ通信が入る。その主はラウラであった。
「リーナベル様。戻りたいなら付いてきてもよいと陛下は仰せですが、どうしますか?」
「やめとくわ。もう少し、このままでいたいもの」
「承知しました」
リーナの返答を聞き入れると、ラウラからの通信は切れてしまう。
「いいのか?チャンスだったのに」
「ストルツに対してあそこま拒否したのに、今更そんな帰り方をしてもでしょ」
ディナルドのフレームゴーレム達が撤退し始めた中、一機だけエスペランザの方へと向かってきた。それはイェルクのフェリックスであった。
「サクヤ、例の親子も連れて行くから案内してくれ。さっさと終わらせないと、大変な事になりそうだしな」
「あぁ、分かった」
イェルクがミリアとマルコの親子を回収すると、サクヤ達はすぐに街から離れる事にした。そして、街が見えなくなるほど離れた所で、親子との別れの挨拶を済ませるのであった。そして、その後、ウェルターとムラサメも、サクヤ達と別れてまた旅を始めるのであった。ウェルターは別れ際に「コイツらみたいに額に宝石が付いてて、喋る魔獣が居たらコイツらの仲間だからよろしくな」と伝えるのだった。
そしてその夜、野営をしているサクヤとリーナは、メラとメルとリュードを寝かしつけたのち、二人だけで焚火の前でスープを飲みながら休息を取っていた。日中の騒動がまるで無かったかの様に静かな夜。しかし、その静けさは、余計にあの事を考えてしまう余裕を与えてしまうものでもあった。
「あの街の事でも考えてるの?」
「あぁ。なんか、嫌なモノを見ちゃったなって・・・」
サクヤは一呼吸おいて続けた。
「俺の居た世界にも、そういうのはあったさ。無くならない事も分かってる。でも、でもさ・・・」
「今のデミスと人間に関係を考えたら仕方のない話でしょ。でも、気持ちは分かるわ」
「今の状況が終わったとしても、そういうのはきっと変わらない事だと思う。けどさ、例えそうだとしても、それ以上に、気にせず手を取り合って、お互いを受け入れられる余裕のある世界になったらいいな。綺麗事なのは分かってるけどさ」
「そうね」
リーナは思った。人とデミスが手を取りあうなど難しい話なのかもしれない。しかし、こうして一緒に旅をしている者も居れば、ディナルドに協力しているイェルクも居る。だからこそ、いつかはその希望も叶うだろうと。
2025年最後の更新がこの様な話になってすみません。
来年も、マイペースに更新できればと思うので、温かく見守っていただけたら幸いです。




