《夢》の継ぎ人 3
ウォードがチャーモンドを連れて宿に戻ったのは皆が寝ようと就寝の準備をしていた頃であった。かなりの時間、かなりの量を飲んだからか、チャーモンドは完全に酔いつぶれている様子であった。流石に放置するわけにはいかないが、かと言ってシャル達の部屋に泊まらせるのも不安であると判断されたため、チャーモンドは別室で一人寝る事となった。
明くる日の午前。ウォードは仲間三人と共に話し合いをすることにした。内容は昨日チャーモンドから提示された話だ。彼女の理念の元に持ちかけられた「シャル達を攻撃しない代わりにヴェルドを討つ事を辞め、協力して次元龍を倒す」という話をウォードは皆へ伝えた。ウォードの口から伝えられたその内容に、シャル、ミリアム、トロンは心底驚くのであった。
「俺はこの話に乗ろうと思うが、シャル、お前はどうだ?」
「私は賛成。だけど、正直全てを信じれてるわけじゃないかな」
「私は反対です。敵の誘いに乗って敵の本拠地に招かれるなんて、ただ殺されに行くだけですよ」
「チェ、なんだよ」
「大体、アナタは騙されているんですよ。都合の良すぎる話でしょう?これは罠です」
「でもあの飯の時、アイツは言ってただろう?」
「そんなの、演技でもすればいいだけでしょう。信じられませんよ」
「テメェ、神は信じて他者にも信じろって言ってる癖に、目の前の人一人の話も信じられねえのかよ!」
「えぇ、信じられません。分かってるんですか?魔族とは敵対している、つまり彼女は敵なんです。彼女の夢だか知りませんが、大方、女性に対して弱い性格に付け込まれたんでしょう。しかし、アナタは現実というものを鑑みて冷静になるべきですよ」
「他人の夢を信じてやることの何が悪いんだよ!」
「二人ともやめなよ!」
ウォードとトロンはいつもの様に、いや、いつも以上の喧嘩腰になってしまっている。その様子を見たミリアムは、咄嗟に二人の仲裁をしようとする。
「ミリアム、そう言うお前はどうなんだ?」
「え?」
「チャーモンドの話に乗るのか?乗らないのか?」
「私?私は、シャルがいいなら・・・」
「あのな!いつもシャル、シャルって、少しは自分で決められねえのか?」
「やめなよ、ウォード!」
「そうですよ。八つ当たりなんて、はしたない」
その侮辱とも取れる言葉を、シャルとトロンは咄嗟に庇うように遮った。
「いいの、二人とも。私は、正直その話を信じたい。でも、万が一罠だったらと思うと不安で・・・」
「んだよ。じゃあ俺以外全員反対みてぇなもんじゃねえか」
そう言うと、ウォードはその場から離れ始める。
「どこに行くんです?」
「外の風を吸ってくるだけだよ」
そう言い残すと、ウォードは振り向かずその場を後にした。
「少し言い過ぎましたかね」
「そんなことはないよ。実際、トロンの言い分も必要な物だったし」
「でも、私達も明日までにもう少しちゃんと考えてあげないと、ウォードが可哀想」
そして翌日。その日はチャーモンドの部下と思われるフレームゴレ―ムが街に集結していた。空中用フレームゴーレムのグリフと、地上用フレームゴーレムのルウーボが3機ずつ、奇麗に整列していた。その場にはチャーモンド、そしてシャル達も同席していた。
「紹介するで。こっちの細っこいのがグリフ、そして丸っこいのがルウーボっちゅうフレームゴーレムや」
整列しているフレームゴーレムは圧巻であった。今まで見た事はあるものの交戦した事はないルウーボ、そして初めて見るグリフ。どちらも相手にすることになるとどうなるのか分からないものである。
「チャーモンド様、その方は確か・・・」
本来敵対している存在であるシャル達が同伴している事に部下の一人が疑問を持つ。
「気にせんでええ。それより、今日のアンタらの仕事は分かっとるやろ?エルピロからもろうとる手引書通りちゃんとやるんよ」
「えぇ、分かりました」
その時である。グリフとルウーボのモニターに突如にメッセージが入り、警報音が鳴る。
「上空に巨大な反応・・・?これは!」
「どないした!」
「空裂です!この上空で空裂が発生します!」
「なんやて!?」
ディナルドの王城の一室。そこでは常に世界中のにある塔や、フレームゴーレムの反応を常に監視している。そして、そこの責任者を務めているのもまたエルピロである。そして、エルピロがそこに居るその時、突然警報音が鳴り始める。
「どうしました!?」
「空裂の反応です!それも二カ所!」
「なんですって!?」
その報告に、エルピロは即座にモニターを凝視し、場所を確認する。一つはシャル達の居るルビア、そしてもう一つが別の街の上空へと発生しそうになっているのだ。
「すぐに塔の空間防壁装置を発動させてください。それと陛下に報告を。責任は私が取りますので、すぐにグリフとルウーボを追加で3機ずつルビアへ向かわせてください。私もエイコルノで共にそちらに向かいます」
「しかし、エイコルノはまだ新装備の試運転が・・・」
「そんな事を言っている暇はありません。それと、もう一方にも誰でもいいので、動員できるだけ動員して向かわせてください」
「はい!」




