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《夢》の継ぎ人 2

街の小路を進んで行くと見えてくる路地裏の酒場はチャーモンドのお気に入りの店である。店内は騒ぐ客はおらずとても静かであり、酒とそこの雰囲気に合わせた曲をただ楽しめる場所となっている。多種多様な酒が取り揃えられており、一見高そうに見えるものの、かなり手頃な値段で飲めるというのもチャーモンドとしてはお気に入りの理由であった。

「アンタ、ホンマに酒強いな」

「まあな。俺の種族はどうにも酒に強い様でな、そんなに酷く酔う事はねえんだ」

「羨ましい話やわ」

まだ、時間も早いためか店内の人は少なく、事実上のウォードとチャーモンドの貸し切り状態であった。店主もチャーモンドの事は知っているため、何が起きるわけでもない平和な状態である。

「しかし、アンタらって不思議な組み合わせで旅をしとるな」

「そうか?」

「せやろ?アンタは多分ドワーフやし、トロンは神父やろ?それにシャルロットとミリアムなんてよう分からん嬢ちゃんやし」

「言われてみればそうかもな」

チャーモンドにそう言われ、ウォードはシャル達と初めて出会った日の事を思い出し、話始めた。それはディナルドが人間の国を支配し始めた頃である。ただの村娘だったシャル、鍛冶屋で働いていたウォード、教会で務めていたトロンは城へと招集された。魔力の量が多く、軍属ではない、戦える人材を探した結果集められ、ディナルドへ向かう事を命じられた、それが始まりだったのだ。

「ちょい待ち。今の話だとミリアムが出てきとらんけど何者なんや?」

「奴はシャルの幼馴染でな、シャルが心配だからって強引について来たんだ」

「献身な子やなぁ」

しかし、チャーモンドは更なる疑問が生まれたT。

「なあ、ウチが言うのもなんやねど、なんで勇者なん?昔この世界を災厄から救ったっちゅう勇者の昔話があるのは知っとる。でもそれはお話の存在や。ディナルドと戦うならそんな虚構に縋るより、それぞれの国の軍隊でも集結させて、力を合わせればええやん?」

「そりゃそうだ。でもな、それぞれの国のお偉いさんや政治屋はそういう時でも誰が責任を持つのかを押し付け合いながら自分達がどれだけ損をせずに利益を得られるかを考えちまうらしい。全員が全員じゃないがな。それだけじゃなく、歴史的に仲の悪い国同士だから協力出来ないって所もあるしな。それに加えて敵がフレームゴーレムなんて太刀打ち出来ない存在を使ってくるなら大人しく流されるだけの所も出るだろうよ」

「バカバカしい話やな。要は、勇者って肩書きを与える代わりに、ただの一般人に責任と無理難題を押し付けとるだけやないか。大体、現実は敵の大将の首を取ったらそれでどうにかなるなんて簡単なモンやないやろ」

「あぁ、バカみたいな話さ。でも、そのバカみたいな話に乗って大真面目にやってる俺達だってバカみたいなモンだよ」

たった数人で敵国まで乗り込んで大将の首を取る。それはどう考えても無謀な話であり、それは恐らく誰もが理解をしていただろう。しかし、藁にも縋る思いで発案されたかもしれないその命令を、シャル達は今更無下にすることも出来ないのである。

「なあ。ウチの夢はまたデミスと人間が手を取りあえる世界にする事や」

「言ってたな」

「今な、それを実現出来るかもしれん方法を一つ思いついたんや」

そう言うと、チャーモンドは真剣な眼差しでウォードを見つめる。

「ウチと一緒にディナルドに来てくれんか」

「はあ?」

その突拍子のない願いに、ウォードは目を丸くした。

「シャルロット達と一緒にディナルドに来るんや。そしてウチらと一緒に次元龍を倒して、次元龍の被害をなんとかする。そしたらきっと陛下も人間との共存も考え直してくれるはずや」

「その前に俺達が魔王の首を取ったらどうすんだ。大体、敵の根城に行って寝首を搔かれるかもしれないしよ」

「だからウチからの頼みとしては陛下の命を狙わんでほしい。ウチからはちゃんと説得してアンタらの安全は保障したる」

「んな事言ったってよ」

「今ここでアンタに決めろとは言わん。宿に戻って、ウチの部下が塔の整備に来る明後日までにシャルロット達と話しおうて答えをくれればそれで構わん」

ウォードは正直その話に乗る気は一切無かった。しかし、チャーモンドの目は真剣な物であり、自分達を騙そうとしているとは到底思えない物でもあった。だからこそ、ウォードは迷ったのだ。

「分かったよ。シャル達にも話してみるさ」

「ホンマ!?あんがと!」

チャーモンドが抱き着き、頬ずりをしてくる。それはチャーモンドとしては普通のスキンシップだったのかもしれないが、ウォードにとっては少々刺激的であった。

「しゃっ!ここはウチの奢りや、好きなだけ飲み!」

そして、その酒場での交流は夜まで続くのであった。


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