真の《勇気》 1
人々の避難誘導に時間がかかっているため、事実上のシャルとフレームゴーレムの1対1の状態となった。相手には部下のフレームゴーレムも居るが、人間一人にそんな数は使わないだろう。シャルは前にオルタロスの時に使った相手に飛び乗り関節を破壊する戦法を選ぶ。
再び敵のフレームゴーレムが叩き潰そうとした所を避け、その手に飛び乗り、頭部まで駆け上がろうとする。フレームゴーレムは身体を大きく振るなどしてシャルを振り落とそうとするが、シャルは装甲の隙間にしがみつきそれをなんとか耐える。しかし、それも遂に耐えられなくなり、シャルは振り落とされてしまう。鎧もあり、咄嗟に受け身を取ったものの、数メートル上から落ちた衝撃は凄まじいものであった。
「シャル!」
それを見たミリアムはシャルに駆け寄り回復魔法をかける。それを敵は見逃さなかった。
「二人仲良く潰れちゃいな!」
再びフレームゴーレムの手がシャルに向かってくる。その迫りくる手にシャルとミリアムは逃げようにも間に合わない、どうにもならない状態だと確信した。
二人が諦めそうになったその時、シャルの鞄が光輝き、一筋の光が走る。その光が現れたと共に敵のフレームゴーレムは後ろに倒れており、そしてシャル達の目の前には緑色のフレームゴーレムが現れていた。
「これは・・・?」
その姿はサクヤとリーナの乗るエスペランザに似た様な姿であった。しかし、エスペランザとは違い背中に鳥や竜の様な翼があり、そこに片刃の二本の剣が装備されていた。そのフレームゴーレムがシャルの方に振り向くと、胸の水晶玉にシャルとミリアムを取り込むのだった。
シャルとミリアムは水晶玉の中にある複座式のコックピットにそれぞれ座る。するとモニターに、シャル達の言語で構成された文章が流れてくる。
「名前は・・・。そうか、ヴァリエンデか」
敵のフレームゴーレムが起き上がる。
「次から次へと、今度はなんなのよ!」
「ミレーヌ様!我らも!」
「アンタ達はいいわ」
敵の魔族、ミレーヌは部下が出ようとするのを静止する。
「あんな奴からってのは気に食わないけど」
そう言うと、ミレーヌは黒い玉を五つ投げる。するとその黒い玉は黒い巨人へと変化する。シャル達は出会ったことがないが、サクヤ達が戦った事のあるシャドウだ。そのシャドウ達は一斉にヴァリエンデに襲い掛かる。
「シャル、来るよ!」
「武器は、背中か!」
シャルは両腕で背中の剣をそれぞれ持つと、襲い掛かるシャドウを薙ぎ払う様に応戦する。シャルにとっては慣れない二刀流であったが、それでもシャルは順応していく。ヴァリエンデの剣の切れ味は凄まじく、一太刀でシャドウを真っ二つにし、爆散させて.いく。そして、あっという間にシャドウは全滅させられるのだった。
「ストルツの奴!自慢げに渡してきたくせに全然使えないじゃない!」
ミレーヌは壊滅させられたシャドウを見て、次の行動を取ろうとする。それは相手の範囲外からの攻撃だ。幸いにもミレーヌのフレームゴーレム・ホーネットコロニーには切り札と言える遠隔武器もあり、しかも他者の追随を許さないほどのスピードを誇る。そこに勝算を見出し、ミレーヌは空高く飛び立つ。
「ミリアム、奴は追える?」
「うん。このフレームゴーレム、飛べるみたい」
「わかった!」
ヴァリエンデは深く踏み込むと、一気に飛び上がる。
ミレーヌのホーネットコロニーは確かに速い、がしかし、ヴァリエンデはそれに追いつくが如くのスピードで迫る。
「速い!?でも!」
ミレーヌは姿勢を切り替えると、ヴァリエンデの方に尾を向け、そこにあるハニカム状の穴から大量の蜂型兵器を出す。それは大きさ1mあるかないかであり、人が普通の蜂と対峙するのと同じほどの大きさである。その蜂型兵器はヴァリエンデに取りつくと、一気に起爆しヴァリエンデを爆炎へ包み込む。
「やった!」
その爆炎を見たミレーヌは勝ちを確信した。しかし、結果はミレーヌの予想を裏切る事となる。ミレーヌの目に映ったのは無傷のまま迫りくるヴァリエンデの姿であった。
「噓でしょ!?」
「もらったァ!」
シャルは正面からホーネットコロニーに突っ込むと、そのまますれ違い様に尾を斬り落とす。そして通り過ぎたと同時に旋回し、背後からホーネットコロニ―の二つの翼を切り落とすのだった。翼と尾を失ったホーネットコロニーは真っ逆さまに落下していく。シャルはあの状態で戦う事は無理だろうと思い追撃することはなかったのだった。




